上野 貴之 院長の独自取材記事
上野歯科医院
(北九州市八幡西区/黒崎駅)
最終更新日:2026/07/16
JR鹿児島本線・黒崎駅から車で3分、閑静な住宅街の一角にある「上野歯科医院」。祖父が開業し、父が受け継ぎ、現在は3代目の上野貴之院長がこの地の歯科医療を守っている。福岡歯科大学で学んだ後に家業を継ぎ、院長就任後に院内をリニューアル。白を基調に温かな木目を配した明るい空間は、大きな窓から光が差し込み開放感がある。「患者さんが望むことと私が正しいと思っていることは必ずしも一致しない」と穏やかに語る上野院長の診療は、複数の選択肢を示し患者と一緒に方針を決めていくスタイルだ。特別なことはしていないと控えめに話すが、患者の小さな不便に気づく観察眼と、スタッフへの深い信頼が、地域に親しまれる歯科医院の土台をつくっている。その診療姿勢やスタッフへの思いを聞いた。
(取材日2026年6月18日)
3代にわたり地域の歯を守り続けて
まずは先生が歯科医師を志された経緯を教えてください。

うちは祖父、父と代々歯科医師の家系でして、物心ついた頃からごく自然に自分もこの道に進むのだろうと思っていました。子どもの頃の記憶でよく覚えているのは、祖父が患者さんに対して厳しかったこと。もう40年以上前ですから時代もあったのでしょうが、子ども心に強く残っています。一方、父はとても人が良く、患者さんへの当たりもやわらかかったので、その姿勢は自分も見習いたいと思っています。福岡歯科大学では虫歯や歯周病を扱う保存科で学び、約3年在籍しました。祖父の時代は今の歯科医院の隣にあった小さな建物で診療していて、父の代で現在の場所に建て替えています。私はそこに戻り、2018年に院長を引き継ぎました。
院内はとても明るく、居心地の良い空間ですね。
院長就任後に内装をリニューアルしました。こだわったのは「飽きのこないこと」で、ずっと長く使えるよう、あまり派手にせずシンプルなデザインにしています。もう一つ大きく変えたのが土足対応です。ちょうど新型コロナウイルスが流行した影響でスリッパの消毒が大変になったのがきっかけでしたが、実はそれ以前から、女性がブーツを脱いでスリッパに履き替える姿を見て大変そうだなとずっと思っていたんです。結果として車いすやベビーカーを利用されている方もそのまま診療室に入れるようになり、昔からの患者さんにも好評をいただいています。院内を新しくしてからは40代、50代の新規の患者さんも増え、以前はご高齢の方が大半でしたが、今は幅広い世代の方に足を運んでいただけるようになりました。
こちらではどのような診療を行っていますか?

当院は本当に「ザ・一般歯科」でして、虫歯の治療を中心に幅広く対応しています。矯正は行っておらず、インプラント治療が必要な場合は専門の歯科医師に紹介し、親知らずの抜歯も近隣の病院にご紹介するなど、連携の体制をしっかり整えています。だからこそ、お口のことで何か気になったら、まず相談に来ていただける窓口のような存在でありたいと思っています。最近は「歯石を取ってほしい」という予防意識の高い方も増えてきました。診療時間は平日が19時まで、土曜が16時までです。平日の夕方17時以降はお仕事帰りの方で特に混み合う時間帯なので、平日の昼間であれば、なかなか来られない方にも通っていただきやすい環境ではないかと思っています。
患者と「2人で決める」、押しつけない診療のかたち
診療において大切にされていることを教えてください。

自分が正しいと思っていること、いわば診療の「完成形」のようなものは当然あるのですが、それを患者さんに押しつけないようにしています。患者さんが望むことと、私が正しいと思っていることは必ずしも一致しません。今すぐこの痛みだけ取ってほしいという方もいれば、じっくり時間をかけて全体を治したいという方もいらっしゃいます。ですから、まずは治療の方針をいくつかご提案して、患者さんの顔色を見ながら一緒に決めていくというスタンスを大切にしています。一方的に決めるのではなく「2人で決めていきましょう」という感覚ですね。一人ひとりの思いは違って当たり前ですので、その都度しっかりお話しして、納得のいくかたちで進められるよう心がけています。
長く通われている患者さんも多いのでしょうか。
祖父、父、私と3代続けてこの場所で診療していますので、昔から通ってくださっている方はとても多いですね。祖父の時代を知っている患者さんが「あの頃はこうだった」と昔話をしてくださることもしょっちゅうです。世間話を楽しみに足を運んでくださる方もいらっしゃって、正直なところ、口の中のお手入れよりもおしゃべりが目的なのかなと感じることもあります。でもそうやって気負わずに来てもらえること自体がうれしいですし、ちょっと気になることがあるけど大ごとにしたくないという方にも、構えずに来ていただけたらと思います。ちょっと診てみて特に問題がなければ、そのまま帰っていただくこともありますから。
予防やメンテナンスについてはいかがでしょうか。

当院では予防やメンテナンスは歯科衛生士が対応し、私は虫歯の治療に集中するというかたちで役割を分けています。歯周病のケアやクリーニングを担う歯科衛生士がいてくれることで、一人ひとりの患者さんにより丁寧に時間をかけられるようになるんです。定期的なメンテナンスを希望される方には歯科衛生士がじっくり向き合いますので、お口の状態を継続的に見守っていく体制が取れています。それぞれの得意を生かした体制ですので、治療も予防もバランス良くお手伝いできると思っています。ちなみに私自身のケアは、毎日の歯磨きとフロスが基本です。歯科医師だからといって特別なことはしていませんが、日々の基本を続けることが一番大事ではないかと思っています。
スタッフが楽しく働けるから、患者にも笑顔が届く
スタッフの皆さんとの関わりで大切にしていることはありますか?

スタッフには「時間があれば患者さんと好きなだけおしゃべりしていいよ」と伝えています。治療やお口の清掃だけではなく、会話そのものを楽しみに通ってくださる方がいるとわかっているからです。私自身はあまり話すほうではないので、患者さんとのコミュニケーションという面では自分に足りない部分をスタッフに補ってもらっていて、いつもとても助かっています。スタッフに求めるのは、とにかく楽しくやってくれること。患者さんと楽しくしゃべってくれるだけで十分ありがたいんです。歯科衛生士は全員がベテランですので、専門的な業務については細かく口出しする必要もありません。少人数ならではの和気あいあいとした雰囲気の中で、それぞれの持ち場を安心して任せています。
働きやすい環境づくりで心がけていることはありますか?
子育て中のスタッフもいますので、お子さんが急に熱を出したようなときはみんなで助け合っています。「子どもの運動会があります」といった場合も「どうぞ休んでね」という感じです。チーム全員でフォローし合う風土があるので、患者さんもスタッフも安心できる環境だと思います。心にゆとりを持って働けることは、患者さんへの笑顔や丁寧な対応につながると考えています。教育面では、ベテランの歯科衛生士が現場で新しく入ったスタッフに教えるかたちを取っています。私があれこれ細かく指示するよりも、同じ立場の先輩から学ぶほうが自然ですし、実際にそのほうがうまく回っていますね。人数が多いとどうしてもギスギスしがちな場面も出てきますが、少人数だからこそお互いの顔が見えて、フォローし合いやすい環境が保てているのだと感じます。
最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

患者さんに向けてお伝えしたいのは、お口のことで少しでも気になることがあれば、気楽に足を運んでいただきたいということです。相談だけで終わることもありますし、まずは話を聞かせてくださいという気持ちでいます。そして、患者さんだけでなく歯科衛生士をはじめスタッフとして働くことに関心のある方にも広く門戸を開いていますので、どなたからのご相談も受けつけています。今後の目標としては、まずは目の前の患者さん一人ひとりにしっかり向き合うこと。その先に「あの歯科医院に行くのが楽しみだ」と感じてもらえる歯科医院にしていければいいなと考えています。

