澤井是周院長の独自取材記事

沢井歯科医院

(北九州市八幡西区／萩原駅)

最終更新日：2022/06/23

筑豊電気鉄道線・萩原駅から徒歩2分の場所にある「沢井歯科医院」は1979年開業。天井が高く開放的な診察室からは、隣にある穴生公園が一望できる。院内は木をふんだんに使用した温かみのある空気が漂い、待合はアロマが香るリラックスできる空間になっている。2015年から院長を務めている澤井是周（さわい・これちか）先生は、「食べられるものではなく、食べたいものを食べられるお口づくりのためには、ご自身の生まれ持った歯を維持していくことが大切」と、小児の矯正から歯周病治療や根管治療まで、自分の歯を残すことを目的とした治療を実践。診療では原因からしっかり考え、再発を防ぐことも重視する。そんな同院が行う診療の詳しい内容のほか、診察時に気をつけている点について、澤井院長に話を聞いた。

（取材日2022年4月4日）

歯並びの乱れを整えるため小児矯正に注力
できるだけ歯を抜かず自分の歯を長く使える口腔環境へ
原因を見極め、患者一人ひとりに適した治療を行う

歯並びの乱れを整えるため小児矯正に注力

この歯科医院は先生のお父さまが開業されたそうですね。長年診療を続けていると患者さんの層も広いのでは？

父がここを開業した1979年は、私が生まれた年でもあるので、クリニックと私は同い年でもあるんです。父の頃から通ってくださる方もまだおられますし、そのお子さんやお孫さん、ご家族が来てくださることも多いですね。クリニックを引き継いだのは2015年のこと。その後クリニックを大幅にリニューアルしました。3台だったユニットも5台になり、さらに滅菌機器を置くスペースを広げ、高い天井、窓よりも換気が十分に行える換気システムも採用しました。診察室の窓からは、四季の花が咲く隣の公園が一望できるので、患者さんもリラックスして治療を受けてくださっているのではと思います。また院内の清掃は業者さんにお任せしています。やはりプロの技術が一番ですからね。

こちらのクリニックでは、歯並びに着目した診療を行っているとか。

歯並びが乱れている、下の顎が上の顎よりも前に出ている反対咬合は親御さんも気づきやすいのですが、反対咬合になるかならないかのギリギリの方も多いんです。しかし咬合の乱れにはもう一つ、注意したい症状があります。下顎が上顎より後方に下がっている状態です。先ほどの反対咬合の逆で、仰向けでは気道の確保がしづらいために眠る時に横を向いている、猫背になるといった体への影響が出てきます。飲み込みにくいという症状や呼吸の苦しさは、毎日のこととなるとその状況に慣れてしまって自分から訴えられません。そのため、親御さんもお子さん本人もなかなか気づきにくいんです。おおよそ歯科検診でしか発見できません。

小児矯正の診療内容について詳しく教えてください。

まずはセファロでのエックス線検査と模型診断を行います。通常、歯科のエックス線は口腔内の全体像までを撮影しますが、セファロでは頸部から頭部までを撮影します。こうすることで頭の位置と顎の相関を確認できるのです。そこで矯正が必要だと診断がつけば、マウスピース型の取り外し可能な装置で矯正を行います。当院では自宅で装着をするものと、24時間つけっ放しのもの、2つを採用しています。装着するのは小学校1年生から6年生の間。この期間が特に成長が著しく、かつ柔軟性も備えています。お子さんの“成長する力”をうまく活用しながら、効率的に行っていくことが重要なのです。例えば未就学児の頃に矯正の必要がわかったとしても、実際に矯正を行うのは小学校に入ってからになります。

できるだけ歯を抜かず自分の歯を長く使える口腔環境へ

親御さんと連携を取りながら、矯正を進めていくのですね。

小児矯正は、お口とその周辺の筋肉を正常な状態にし、呼吸と嚥下機能を整えていくことが目的で、数年単位で考える必要があります。また行う時期としては、歯が乳歯から永久歯に生え替わる時期でもあるため、それらにも配慮する必要がありますね。矯正というと見た目を連想する方も多いかもしれませんが、機能と形態は表裏一体。機能が正しくなれば、形態も正しくなると考えられます。特に顎が下がっている場合は、親御さんもお子さん自身も気づかないことが多いです。嚥下障害にもつながることがあるため、食べ物を飲み込みづらく、給食を食べるのが遅いというお子さんもいます。いずれにせよ正しい時期に正しい対応を行えば、その後抜歯をするほどの矯正を受けるリスクを軽減できる可能性が高くなります。

矯正でも通常の歯科治療でも、非抜歯をめざしておられるとか。

これは大人の方も含まれますが、永久歯が生えそろった後の矯正では、当院ではワイヤーを使ったブラケット矯正を採用しています。患者さんもですが、私たちもできる限り歯を抜きたくない、残したいと思うものなのです。いくらインプラントや入れ歯という代替になるものがあっても、いずれも天然歯にかなうものではありません。小児の矯正は、これらの大きな矯正やそれに伴う抜歯を避けるためのものでもあります。お子さんの頃から歯並びや噛み合わせに気をつけていれば、最期までご自分の歯で食事を楽しむことも期待できるとお考えください。

その方の生まれ持った歯を大切にしていくのですね。

神経や血管などが通っている歯の内部、「根管」の治療にも力を入れています。虫歯菌が歯髄まで入り込むと、歯がひどく痛み出したり、顔が腫れたりすることもあります。自然に治癒することはありません。放っておくと歯の内部だけではなく、骨まで溶けてしまうことも。そうならないように根管に入り込んだ細菌を取り除き、痛みや腫れを抑え、歯を残していけるようにするのが根管治療です。

原因を見極め、患者一人ひとりに適した治療を行う

治療に際し心がけていることは何でしょうか？

患者さんお一人お一人に対するベストな提案ができるようにしたいと常々考えています。幅広い年齢層、幅広い主訴の方がいらっしゃいますが、医療機関として尽くせるベストと、患者さんが求める治療は別になることもあります。お仕事で忙しいのでまめに治療に来れないとか、逆に口腔環境から全部診てほしいという方まで患者さんのご意思もさまざまです。患者さんのご希望とこちらの提案が、できる限り高い位置で一致するよう、互いの意見を練り込んでいくことが大事なのだと思います。また「何が原因なのか」という点にも気を配っています。歯を抜くことになったとしても、喫煙による歯周病なのか、虫歯なのか、噛み合わせによるものなのか、患者さんごとに原因は異なりますよね。

原因をはっきりさせないままに治療をしても、また治療の繰り返しになってしまうと。

そうです。悪くなっている部分だけを治療するのではなく、全体的な歯のバランス、そして顎の周囲の筋肉の状態を見て、「悪かった点をどう改善していくべきか」を考えながら治療していくのが当院のスタンスなので、根本的な原因をきちんと見極めた上で治療を進めていきます。私は自分たちを山岳ガイドのような役割だと思っているんです。ヒマラヤに登りたい方もいれば、近所の丘に登りたい方もいる。そこで私たちが行き先案内人を務めるわけです。ですから、常に勉強は欠かせませんね。最近はオンラインで受講できるのでありがたい限りです。

今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

顎の動きは歯によって制限されることもあり、それが歯並びを悪くする原因になっていることも。顎が本来どこに行きたがっているのかなどを知れば、顎関節症の痛みなどの軽減にもつながることもあるため、口腔とその周辺の筋肉の関連性について学びを深めたいですね。もし他院でお子さんの歯並び・噛み合わせを診てもらったものの、不安な点や疑問がある方はセカンドオピニオンとして活用してもらうのもお勧めです。時間は決して巻き戻せません。当院ではセファロなどを使用して詳しい説明を行いますので、正しい情報を得て、お子さんご本人、そして親御さんをはじめとしたご家族が納得できる診療を受けてほしいと思います。