小河 芳子 院長の独自取材記事
小河歯科医院
(福岡市博多区/中洲川端駅)
最終更新日:2025/05/13

中洲川端駅から徒歩1分。冷泉公園の前にある「小河(おごう)歯科医院」は1934年に開院し、現在は4代目院長の小河芳子(おごう・よしこ)先生が診療を行う歴史あるクリニック。院内には、ここに通う子どもたちが描いた絵や折り紙の作品が飾られ、なんともアットホームな雰囲気だ。診療は、虫歯や歯周病治療、小児歯科、予防歯科、入れ歯、審美歯科に絞って提供し、「通いやすい、楽しい歯医者さん」をめざす。もともと小児歯科が専門の小河院長を頼りにする親子連れも多く、患者の3割以上は子ども。「気負って来られる患者さんの心をほぐし、安心して笑顔で帰っていただけるような歯科医院でありたい」と語る小河院長に、診療の特徴や小児歯科へのこだわり、今後の展望を聞いた。
(取材日2021年2月18日)
保険診療がメインの「通いやすく楽しい歯科医院」に
戦前から続く歯科医院を継承された経緯からお聞かせください。

私は長崎県の出身で、当院は嫁ぎ先なんです。そもそも歯科医師をめざしたのは、私の父も歯科医師で、その姿を見て憧れて……なんてきれいな話じゃないですよ(笑)。私が小さい頃、子どもたちにとって歯医者さんは嫌われ役で、私も好きではありませんでした。でも、手に職をつけて一生働いていたいとは思っていたので、いろんな条件を冷静に考えると、歯科医師が一番良いんじゃないかと。父も背中を押してくれて、福岡歯科大学へ進学しました。卒業後は小児歯科医師をめざし、糸島市の「いしいかおり小児歯科」に勤務。2004年から、夫が3代目院長を務めていた当院に副院長として入り、小児歯科を担当。2代目の義父と3人で診療にあたっていましたが、2014年に夫が、2018年に義父が亡くなり、私1人体制になったというわけです。
現在はどのような診療をされているのですか?
勉強会に行ったり知り合いの歯科医師に教わったりして必死に研鑽し、今は2歳から90代の患者さんまで診ています。診療は、虫歯や周病治療、小児歯科、入れ歯、予防歯科の他、ホワイトニングにも対応しています。インプラントのメンテナンスは受けていますが、新たなインプラント治療、大人の矯正、重度の歯周病治療、親知らずの抜歯などは専門の歯科医院をご紹介しています。当院は1934年に現在の博多区千代に開院し、1950年に現在地に移転した歴史の長い歯科医院で、初代院長は志免町や宇美町まで自転車で行って治療していたそうで、今でもその頃の患者さんの下の世代の方々が来てくださるんですよ。今は結婚して遠くに住んでいるけれど、小さい頃からここに来ていたからと帰省に合わせて通ってくださる方もいらっしゃいます。子どもの患者さんも多く、平日夕方と土曜はほぼ小児歯科で埋まります。
診療で心がけていることは?

大人も子どもも気負わず、気軽に来られるような、通いやすい、楽しい歯科医院でありたいと思っています。笑顔でコミュニケーションを取り、患者さんの気持ちに寄り添った、人間味あふれる歯科医療を提供していきたいですね。例えば高齢で、歯がもうグラグラしていて抜いたほうが良いのはわかっているけれど決心がつかないような方にも、強く説得したりせず、ご自身が納得されるまでお付き合いします。また、無理に自由診療を勧めたりしないのも私の信条。もちろん患者さんからお尋ねがあればメリットデメリットなどお答えしますが、基本、保険診療で十分だと考えています。
子どもに恐怖心を植えつけない工夫
先生はもともと小児歯科がご専門ですが、小児の診療で工夫されていることはありますか?

子ども専用の個室の診療室を設けていて、中はまるで駄菓子屋さん(笑)。シャボン玉など“選べるご褒美”を用意しています。このような工夫は私が以前勤務していた小児歯科で学びました。親子で一緒に来院し、子どもは私が治療、親御さんは歯科衛生士がメンテナンスを、同時にするケースも多いです。子どもたちには「銀歯のない大人」になってほしいと願っていますが、そのためには定期的なメンテナンスは必須。歯科を怖い所と思わず、気軽に通えることが一番大事なんです。
歯科を怖い所だと思わせないためには親御さんの協力も必要だとか。
私は子どもの治療で麻酔が必要な時、絶対に注射器を見せません。そして麻酔のことを「注射」ではなく、「しびれ薬」と言います。それは親御さんにも徹底していただき、家でも「注射されたのに泣かずにえらかったね」「注射大丈夫だった?」などとは決して言わないようお願いしています。「歯医者さん頑張ったね」で良いんです。実際、麻酔はさまざまな工夫を凝らし、子どもとお話ししながら行うので、本人はいつ注射されたか気づかないと思います。親御さんが歯科を怖いと思っていると、無意識にそれを子どもに植えつけようとしてしまうもの。歯科医院では楽しく過ごせたのに、家に帰ってからの「注射怖くなかった?」といった何げない一言で記憶が上書きされ、恐怖心が植えつけられてしまうんです。それはぜひ避けていただきたいですね。
子どもの噛み合わせに不安を抱く親御さんには、どのように対応していますか?

当院では、12歳臼歯が生えてくるまでの成長期における、歯並び、噛み合わせ、顎骨の成長をサポートする「咬合誘導」を行っています。よく1~2歳の子どもを連れて、不正咬合じゃないかと心配して来られる方がいらっしゃいますが、5~6歳頃までは装置を入れるのも難しいため、とりあえずの手段として「子どもが寝ている間に、指で前歯を押してみませんか?」とご提案しています。実は私も息子が小さかった頃に受け口の傾向があり、地道に指で押し続けたことがあります。子どもの成長には個人差があり、必ず治るとは言えませんし、大きくなって矯正を行うことになるかもしれませんが、毎日自宅でできる方法ですし、お金もかかりませんから、ご相談の上試していただければと思います。
糖尿病患者の歯周病治療に尽力
大人の診療で注力している分野はありますか?

歯周病治療とメンテナンスです。虫歯と歯周病を予防するため、歯科衛生士がさまざまな専用機器や器具を用いて、普段の歯磨きでは落ちない汚れを除去する、専門的な歯のクリーニングを行っています。歯は治療が終わった後の定期的なメンテナンスがとても重要なので、予防に対する患者さんの意識を変えていきたいと思っています。中洲川端という場所柄、夜の仕事をされている若い患者さんも多いのですが、痛くならないと来ない、痛くなくなったら来ないというケースが結構見受けられるので、歯磨きの大切さやブラッシング方法を基本から根気良く伝え、歯と体を大事にするよう時にはうるさく言いながらサポートしていきたいですね。
歯周病に関する勉強を続けておられるそうですね。
最近は糖尿病の患者さんが多く、そのような方に適切な治療を行うための勉強を続けています。糖尿病の方は歯周病が治らない、改善しない、進行しやすいという特徴があります。歯周病菌は本当に怖いもので、糖尿病の血糖コントロールが難しくなることがわかっていますし、脳梗塞や心筋梗塞、アルツハイマー型認知症とも関連性があると指摘されています。糖尿病が進行した患者さんに対しては、感染のリスクや傷が治りにくい場合があるため、治療はもちろん歯周病検査を行うのも注意が必要で、ご本人や主治医の先生に血糖値の推移を必ず確認してから、当院でできる治療を行い、糖尿病の方にお勧めのお口のケアのポイントなどもレクチャーしています。間違ったケアをされている方も多いので注意が必要です。
では最後に、読者へのメッセージをお願いします。

実は夫が急逝した時、歯科医院をやめようかという話にもなったんです。でも夫が生前、「もうすぐ開院100年だから、その時はお祝いしたいね」と話していたことを思い出して。今は「めざせ100年」の気持ちで、日々本音で、患者さんと向き合っています。中には、育児をする中で飛び交うさまざまな情報に戸惑い、心配して来られる親御さんもいらっしゃいます。当院ではそんなガチガチに固まった心を溶かし、「大丈夫だよ」と言ってあげられるような時間を大切にしています。親御さんが安心して笑顔になると、子どもも安心して育っていけると思うんです。ですから、口の中のことだけでなく、気軽にいろんなことを話しに来てくださいね。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラントのメンテナンス/1本:4000円~、ジルコニア/1本:11万円~、ホームホワイトニング/3万3000円~