島香澄院長の独自取材記事

南谷歯科医院

(鹿児島市／鹿児島駅)

最終更新日：2024/01/15

2014年から「南谷歯科医院」の2代目院長を務めるのは、「私、この大明丘から一度も住民票を動かしたことがないんですよ」と、笑う島香澄先生。JR鹿児島本線・鹿児島駅から車で約10分、閑静な住宅街の中にある同院は、1985年に島先生の父が開業した。歯科医院の2階が住居になっていて、島先生はここで生まれ育ち、今も家族と暮らしている。同院は、島先生の謙虚で温かい人柄を投影したような、アットホームで親しみやすい雰囲気だ。「親子4世代で通ってくださる患者さんもいて、皆さん優しい方ばかり。ありがたい環境で仕事をさせていただき感謝の気持ちでいっぱいです」と、語る島先生。取材にあたり事前に細かなメモを準備するなど、真摯な対応が印象的な島先生に、継承までの経緯や診療方針、地域への想いをじっくりと聞いた。

（取材日2023年12月7日）

親子4世代が通う、地域に根差した歯科医院
何でも話しやすい、相談しやすい雰囲気を大切に
温かく見守ってくれる地域の患者に感謝しながら

親子4世代が通う、地域に根差した歯科医院

前院長が開業されてもうすぐ40年になりますね。

当院は私が生まれたタイミングで父が開業しました。以来ずっとここに住んでいるので、私がまだ小さく診療室内を歩行器で走り回っていた頃をご存じの患者さんも多く、「あの香澄ちゃんがこんなに大きくなって～」とよく言われます（笑）。父が「地域に根差した歯科医院」をめざし、頑張ってきてくれた地盤を受け継ぐことができ、患者さんに温かく見守っていただき、私はとても幸せだなと思います。それこそ親子4世代で通ってくださる患者さんもいて、患者さんの年齢層は0歳から90歳代までと幅広いです。この辺りは高齢の患者さんが多かったのですが、最近近くに新しい住宅地ができたりして若い世代の方も増えてきたように思います。

先生は幼い頃から歯科医師をめざしていたのですか？

幼稚園の頃の夢は「歯科衛生士になりたい」でした。優しくておしゃれで、一生懸命仕事をしているお姉さんたちみたいになりたい、父と一緒に働いてみたいと憧れていました。その後も何かしらの医療職に就きたいとは考えていましたが、私は昔からすごく怖がりでして、特におばけが苦手なんです。何か見えるとかではまったくないのですが。高校2年生の時に進路に迷って父に相談したら、「夜勤のある仕事は絶対無理だろうな。歯科医師は夜勤がないぞ」と。冗談みたいに聞こえるかもしれませんが、私も父も大真面目でしたよ。鹿児島大学歯学部を卒業し、薩摩川内の歯科医院に勤務。そこでインプラント治療から訪問診療まで幅広く研鑽を積みました。

勤務医時代に印象に残っていることを教えてください。

一番心に残っているのは訪問診療です。個人のお宅や施設にお伺いして歯科治療を行っていたのですが、ある方が入れ歯を作製している途中で亡くなられてしまって。ご家族のご希望で、完成した入れ歯をお口に入れてお見送りしたことがありました。関わってきたスタッフはみんなボロボロ泣いてしまいましたが、ご家族からはとても感謝されて。患者さんやご家族に寄り添った診療というのはこういうことなんだ、これからもこういう仕事をしていきたいとはっきりイメージできた経験でした。父の病気がわかり3年で実家の歯科医院に戻りましたが、ここに帰っても父の足手まといにならずに頑張れると思えたのも、これらの経験をはじめ、多種多様な治療の経験があったからですので、経験を積ませてくださった先生方には本当に感謝しています。

何でも話しやすい、相談しやすい雰囲気を大切に

歯科医院を継承して以来、患者さんと向き合う時に大事にされてきたことは何ですか？

「何でも相談しやすい歯医者さん」でありたいということです。父は、家族はもちろん地域の患者さんや同業の仲間からも愛された歯科医師で、私は今も周囲からは「近所の娘さん」的なイメージで見られているのですが、それを強みに、何でも話しやすい、言いやすい雰囲気を大事にしたいと思っています。特に専門分野を限定するのではなく間口を広く持ち、保険診療を中心とした一般的な治療からインプラント治療やセラミック治療、ホワイトニングなどの自由診療まで幅広く対応。「口内炎がなかなか治らない」「歯が痛い気がする」くらいでも気軽に相談できる歯科医院をめざしていますので、「こんなことを聞いたら恥ずかしいかな、笑われないかな」などと思う必要はまったくありません。そういえば先日、「足が巻き爪で痛いんだけど、どこに行ったらいい？」という相談もありましたよ。

先生がとても身近な存在なのでしょう。

ありがたいですね。当院は「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」です。安心、安全な歯科医療の提供をめざすとともに、地域医療の担い手として患者さんの生涯にわたる口腔機能の維持・向上をめざしています。訪問診療もその手段の一つ。通院が難しい患者さんには、設定した曜日・時間帯に私がご自宅や施設に伺い診療します。患者さんだけでなくご家族とのお付き合いも広がり、いろいろな瞬間に立ち合えるやりがいのある仕事です。また、予防歯科にも注力し、歯だけでなく、口全体を診ることを心がけています。また、口腔がんなど命に関わるような病変を見逃さないことも大事です。治療の中で麻酔をする際、全然健診に行っていないという患者さんは血圧を計って内科へつないだり、逆に、内科的な治療をされている方に抜歯など大きな治療をする際は積極的にその内科の先生にご連絡し、時期などの相談をするようにしています。

口全体、患者さん全体を診るよう心がけていらっしゃるのですね。

「地域に根差した歯科医院」とうたうからには、広い視点で患者さんお一人お一人を診ていきたいと思っています。生涯健康なお口を維持していけるよう、例えば、歯のすり減りが気になる方には、「スマホをぼんやり見ていてふと、われに返った瞬間、歯と歯が接触してないか確認してみてください」と、お話しします。上の歯と下の歯はいつも少し離れていて、前歯の裏に舌が来ているのが本来の姿。無意識のうちに歯と歯が当たり緊張状態が続くと、肩凝りや夜間の歯ぎしり、歯の割れにもつながります。ちょっとした気づきでその方の口腔環境や体調の改善が見込めるのであれば、マウスピースを作る前に、それをお知らせするのも私の大事な役割です。

温かく見守ってくれる地域の患者に感謝しながら

先生は子どもの治療も得意そうですね。

私には今、小学生と幼稚園生の息子がおりまして、そのお友達が来院することもあります。私にとって子どもは、とにかくかわいい存在。泣く子もかわいくてたまらないですし、お子さんの診療は私のご褒美タイムのようなもの。私のことを歯医者さんだと思わないうちに治療が終わってしまうお子さんも多いかもしれません（笑）。矯正に関するご相談もいつでもお受けしますが、本格的な治療になると基本的には矯正歯科専門の歯科医院をご紹介します。実は私も先月、矯正治療が終わったばかりなんです。入れ歯のような装置を入れていたこともありますし、治療中の痛みや違和感、慣れていく感覚など、患者さんの気持ちがよくわかります。経験に基づいた説得力のある説明ができることもあると思いますので、どんなことでもお気軽にご相談くださいね。

患者さんに共感、感謝しながら日々診療されている様子が伝わってきます。

これは涙なしでは語れないのですが。新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっていた頃、息子が感染して私にもうつってしまい、急遽休診にせざるを得ない時がありました。予約の患者さんお一人お一人にスタッフが連絡して事情を説明したのですが、こちらを責めるような患者さんは一人もいなかったと後で聞いて、涙が出ました。「先生や息子さんは大丈夫？」「元気になったらまたよろしくね」と言ってくださっていたそうで、復帰後も患者さんが離れることはありませんでした。そんな温かい患者さんたちにどうにか報いたい、いつまでもおいしくごはんを食べられるよう長く支えていきたいという気持ちが一層強くなった出来事でした。

最後に今後の展望を聞かせてください。

当院は特別に専門性の高い治療を提供するような歯科医院ではありませんが、地域の皆さまが何でも気軽に相談できるような間口の広い歯科医院でありたいと思っています。私個人としては、患者さんやスタッフにとって親しみやすい歯科医師となれるよう、人間的にも成長していきたいですね。仕事なので楽しいことばかりではありませんが、当院に関わるすべての方たちが気持ち良くいられる歯科医院をめざし、これからも生まれ育ったこの地域で頑張っていきたいと思います。