桑島 良隆 副院長、掛川 佑 先生の独自取材記事
金子歯科診療所
(さいたま市中央区/大宮駅)
最終更新日:2023/07/14
1937年の開院以降、地域の一次医療機関として地域住民に寄り添い続けてきた「金子歯科診療所」は、歯科医師臨床研修施設として若手医師の育成にも力を入れている。多くの歯科医師が在籍しており、さまざまな歯科治療に対応できるところが魅力だ。また、さいたま市を中心に、同院から半径16km以内の地域を対象とした訪問診療も行っている。同院の金子久章院長が掲げた「プライマリーケア5原則」が、全スタッフの指針となっているという。今回は、同院の副院長である桑島良隆先生と、同院で研鑽を積んでいる掛川佑先生に、同院のポリシーや若手医師の教育、訪問診療について詳しく話を聞いた。
(取材日2023年6月23日)
一次医療機関として地域社会に貢献
まずはじめにこちらの診療所の診療体制について教えてください。
【桑島副院長】当院は1937年に開院し、今年で開院86年目を迎えました。乳幼児からご高齢の方まで幅広く来院されていて、今は常勤の歯科医師が6人、非常勤の歯科医師が9人います。一般歯科の外来のほか、歯科口腔外科、矯正歯科、マイクロスコープ、内視鏡、摂食・嚥下など、各分野の専門の歯科医師が在籍しています。歯科衛生士は22人です。ユニットは8台あり、2階に7台、1階に1台あります。1階はバリアフリーになっていて、車いすやベビーカーなどでの出入りもスムーズに行えるので安心してお越しいただけると思います。また、お子さんをお連れの方が治療に専念できるよう、保育士在籍の保育室もありますので、ぜひご利用いただければと思います。
診療の際、どのようなことを心がけていらっしゃいますか?
【桑島副院長】誠意を持って患者さんに接するというのを日々心がけています。しっかりコミュニケーションを取りながら治療方針を決めていくということが誠意を持って対応することだと思っています。
【掛川先生】治療を開始する前に、治療に関する情報を患者さんにきちんとお伝えして、納得していただいた上で選択していただく、つまりインフォームドコンセントを重視した治療を進めるようにしています。あとは、「自分が患者さんの立場だったら」と考えて治療にあたっていますね。自分がやられて嫌な治療は絶対やらないということを心がけています。
こちらの診療所のポリシーを教えてください。
【桑島副院長】「地域に根づいた歯科医院である」ということですね。当院には、「プライマリーケア5原則」というのを経営理念の一つに掲げています。これは、院長である金子久章先生が院長に就任し、訪問診療を始めたときに厚生労働省のプライマリヘルスケアの指針をヒントに定めたものです。具体的に言うと、「近接性」「包括性」「協調性」「継続性」「責任性」とありまして、いくつかご説明すると、「近接性」とは、かかりやすさで、さまざまなバリアフリーを実現しようということ、「継続性」とは、一過性の自己満足で行うことなく、全員で平等に長く患者さんに対して続けていけることをしようという姿勢に関するもの、「責任性」とは、高度な治療が必要な患者さんを大学病院など専門性のある医療施設に紹介した後も、自分の患者さんであるという意識で見守り、治療後も一生ケアし続けるということです。
歯科医師臨床研修施設として若手歯科医師の育成に注力
こちらでは若手歯科医師の教育も積極的に行われているそうですね。
【桑島副院長】そうですね。当院は、2000年に厚生労働省より歯科医師臨床研修施設に指定されており、研修医を受け入れています。管理型臨床研修と協力型臨床研修の2パターンあり、管理型臨床研修は、当院が主たる研修施設となり、当院で8~11ヵ月、協力施設となる東京歯科大学水道橋病院で1~4ヵ月研修をするプログラムです。協力型臨床研修は、大学病院が主たる研修施設となり、大学のプログラムに準じて、8ヵ月または4ヵ月の研修を行います。当院は、東京歯科大学水道橋病院と日本歯科大学附属病院の研修施設になっています。
研修医を積極的に受け入れている理由を教えていただけますでしょうか?
【桑島副院長】当院では、歯科医師の研修制度が必修化となった2006年から、歯科医師としての力量を養成することはもちろん、豊かな人間性を持ち地域を大切にする歯科医師を輩出したいという思いのもと、研修医を受け入れています。矯正やインプラントなどの専門的なことを学ぶというよりは、総合的に診療ができる歯科医師を育成することを目的としています。
教育体制について教えてください。
【掛川先生】私もここで研鑽を積んだのですが、先生方と患者さんの口腔状態を一緒に見ながら指導してもらいました。たくさんの先生方がいて、さまざまな治療方法を見ることができたので、とても勉強になりましたね。私は今、指導する側になりましたが、それぞれ進捗状況は違うので一人ひとりに合わせて指導を行うようにしています。また、勉強したいと思っている症例は何かを聞いて、本人のやる気も尊重するようにしています。
掛川先生はこちらで研鑽を積んだ後、そのまま就職されたそうですね。
【掛川先生】はい。当院が地域密着型の歯科医院であること、患者さんの担当制であるところが魅力だなと思い、ここへ就職しました。それから、金子院長をはじめとして勤務医皆がカルテの記載を大切にしているんですね。カルテは診療報酬請求の根拠を目的として記録しているだけでなく、診療録でもあります。急患の患者さんが来院されたときでも、カルテがきちんと書かれていれば治療の流れがわかるので、患者さんのためにも他の先生のためにもカルテを丁寧に記載するのは重要なことなのです。
訪問診療は他職種との連携を密に行うことが重要
こちらでは訪問診療にも注力されているそうですね。訪問診療の際に配慮されていることを教えてください。
【桑島副院長】外来と訪問診療の一番の違いは診療に関わる人数や職種の多さだと思います。例えば老人ホームだとすると、介護に携わっている職員さん、体調を見てくださってる看護師さん、介護関係を取り仕切るケアマネジャーさん、もちろんご家族もいらっしゃいますし、とにかく関わる人数が圧倒的に増えるんですね。そういった方たちと密に連携を取り、関わっている方たちのご意向をくみ取りながら、合意・同意を得てから方針を決めることを大切にしています。
往診の経験が日々の外来の際に生かされていると感じることはありますか?
【桑島副院長】何に重きを置くかというのは、外来と訪問診療ではやはり変わってくると思います。例えば、理屈の上では、差し歯を入れることがベストだとしても、高齢の患者さんが長時間お口を開けていられるのかという問題が出てきます。それは難しいとなれば、また別の選択肢を探す必要性が出てきます。外来の経験のみだったら、とにかく虫歯を治療することだけ、歯がない部分をどう補うかといったところのみに傾倒していたかもしれません。本当にこの方は治療が継続できるのか、この方にとってベストな選択肢になり得るのかということを考えるようになったのは、訪問診療を行っているからなのかもしれません。
外来に来られていた方が訪問診療に切り替わるケースもあるそうですね。
【掛川先生】外来で長い間診ていた患者さんも年齢を重ねてくると、外来に来られなくなるというケースもあるんですね。その場合、引き続き在宅で診ることができれば、それまでの状況を知っている歯科医師が担当することで、患者さんやご家族もとても安心できると思います。歯科医師からしても、継続して診させていただけるのはありがたいことだなと思いますね。
今後の展望をお願いします。
【桑島副院長】金子院長が掲げたプライマリケアをベースに医療を提供していきたいと思います。ただ情勢が変わることももちろんあると思います。特に保険制度は、その時の情勢によって大きく変わることもあるので、そういった変化にも柔軟に対応できるように、個人としても組織としてもアップデートしていきたいと思っています。
【掛川先生】訪問診療は患者さんやそのご家族からも必要とされていると思いますので、これからも注力していきたいですね。若い先生方と一緒に訪問診療へ行く機会もあります。関わる人が多いため大変なこともありますが、それ以上の魅力があることを若い先生方にも伝えていきたいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とは成人矯正70万円~90万円、小児矯正30万円~40万円
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マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。