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蜂矢 喜一郎 院長の独自取材記事

はちや歯科

(名古屋市緑区/有松駅)

最終更新日:2021/10/12

蜂矢喜一郎院長 はちや歯科 main

名古屋市内でも特に若い世帯が増えつつあるという緑区。「はちや歯科」は開業して35年、改装を経た院内はきれいで整頓された、落ち着ける空間となっている。院長の蜂矢喜一郎先生は気さくでおおらかな人柄だ。「診療室はコンパクトですが、機材は良いものをそろえています」と言うとおり、口腔内カメラやCTを備え、得意の入れ歯や歯周病ケア、さらに歯科では珍しい睡眠時無呼吸症候群の治療にもあたる。患者の話にじっくり耳を傾け、一人ひとりの口内の経年変化まで把握、常駐の歯科技工士とともにきめ細かで丁寧な治療を心がける。「医療は人生に関わることだから、何十年と先まで責任を持つ先生を見つけてほしい」と蜂矢院長。そんな自身の診療スタイルから、好きな化石の話題まで幅広く話を聞いた。

(取材日2017年9月25日)

院内に歯科技工士が常駐で緊急時も迅速に対応を

まず、この地域について教えてください。

蜂矢喜一郎院長 はちや歯科1

私の実家は南区ですが、祖父が、商売は辰巳の方角が良いと言っていて、ちょうど売りに出ていたこの場所が実家から見て辰巳、つまり南東にあたる土地でした。当時は医院の前の道が開通していなかったのですが、開業した年に開通したんです。この辺りは昔は農地でしたから農家が多く、一方で新しい住宅も増えていて、学校歯科医をしている中学校は生徒数が1000人近いマンモス校です。今の子どもは虫歯が少なく、その中学校でも1クラスに数本でしょうか。当院の向かいは保育園でそこの保育園も園歯科医をしている関係で、お子さんもご家族そろって定期検診に来られますが、歯並びを気にされる方も多く、適宜、近くにある矯正歯科専門のクリニックを紹介しています。

こちらには歯科技工士の方が常駐されているのですね。

はい、開業時から二人三脚でやっています。院内に歯科技工士がいるメリットとして、まず1つは、患者さんの入れ歯が取れたり壊れたりといった緊急時にすぐ対応できること。例えば朝一番に来られると「昼までに治しておくからね」とか「15分だけ待っていて」と言うこともあります。やはり入れ歯は食べることにつながりますから早く治して差し上げたいですね。2つ目のメリットとしては、技工物を扱う診療のすべての作業がきめ細かくきちんとできること。技工士自らが患者さんの口の中をチェックでき、かぶせ物や詰め物を作るときは、口内で作業をするのではなく、技工室で材料を吟味し精密に仕上げることができます。処置の早さと丁寧さを考えると、院内技工士の存在は重要ですね。

入れ歯について気を付けていることはありますか?

蜂矢喜一郎院長 はちや歯科2

歯並びや色については、口腔内カメラで撮影し、患者さんにもモニターで見て確認していただきます。女性の場合は、しわを取ってほしいという方も多いですね。中には「もうちょっと口元を膨らませて」「歯を出して」など打ち合わせだけで数回来ていただく方や、古い入れ歯を5~6個出してきて「どれも合わない」とおっしゃる方も。その場合「当院で作っても合わないかもしれませんよ」と前置きしてお話を聞くことから始めます。もし私が投げ出したら患者さんとの関係も終わりですので、現状より少しでも良くなるように、食べ物がしっかり噛めるようにと心がけます。要望は大抵、複数ありますので、患者さんに納得してもらうために何を優先するかも含め、お話を聞くことを一番大事にしています。

経験を生かし、睡眠時無呼吸症候群の治療も

設備としてはCTも備えられているのですね。

蜂矢喜一郎院長 はちや歯科3

インプラント治療もしますので、3次元で画像が見られるCTは必要です。ただ、骨の少ない方に骨造成などはせず、確実にできる方のみを対象としています。それも入れ歯やブリッジなど他の手段ができない場合に行っています。CTは高価な機器ですので、人には「60歳を過ぎてそんなに投資するのか」と言われたのですが、これは投資ではなくて患者さんに説明するためと、診断を行うために必要だから導入したのです。診療チェアに備えた口腔内カメラもそうですね。鏡で見るよりわかりやすく、初診の方にも治療に前向きに取り組んでいただけます。企業では費用対効果を考えるでしょうが、医療はそういうものではないと私は考えています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療もされているのはなぜですか?

歯科では特殊だと思いますが、私自身が睡眠時無呼吸症候群(SAS)の患者だからです。40代の頃、夜中に胸が痛くて飛び起きることが何回もあり、古くからの友人がいる藤田保健衛生大学に入院し検査しました。当時の血中酸素濃度は80%台と低く、無呼吸低呼吸指数は28ぐらい。指数が30以上だと重症と言われ呼吸器内科でのCPAP(シーパップ)という呼吸療法が必要になりますが、中等症でしたので就寝時にマウスピースを装着する治療になりました。SASは遺伝的な骨格の問題もあり、私の弟も悩んでいたので、試しにマウスピースを作って渡したら、熟睡できたと喜ばれました。それで睡眠を専門に学ぶために学会にも参加し、診断の仕方からマウスピースの作り方まで学んだのです。おかげで医科のデータも読むことでき、現在は藤田保健衛生大学の呼吸器内科や耳鼻咽喉科から紹介された患者さんも診ています。

先生が作られるマウスピースについて教えてください。

蜂矢喜一郎院長 はちや歯科4

人は仰向けで寝ると顎が下がり、舌根も気道のほうに下がります。気道の狭い人や太っている人は気道がふさがれた状態になり、息を吐くときに舌が押し上げられるので、そのときに出る音がいびきになるのです。マウスピースはそうならないよう、顎を前に出したり、顎の高さを出したりするもので、CTで顎の骨の位置を見極めて作製します。程度によっては顎関節症になる人もいますのできちんとした調整が必要ですが、院内に技工士がいればそれもスムーズです。治療は装置を付ければいいというものではなく、まず肥満を解消することが肝心です。

歯周病ケアも歯磨きも、一生涯の付き合いを

先生は歯周病治療やケアにも力を入れておられますね。

蜂矢喜一郎院長 はちや歯科5

当院では、患者さんの7割以上がケアのために月1~2回通ってくださっています。慢性の歯周病は自覚症状がなく、ケアが必要だからです。ヒノキチオールを消炎剤として使う治療法は昔からありますが、効果的だと感じています。年をとると歯茎が下がり、歯の隙間は多く、手も動きにくく目も見にくい。そうした方々に歯磨き指導をしても、自宅でそのとおりにはなかなかできません。少しでも多く、私たちが口の中をきれいにして差し上げるしか方法がないのです。当院は歯科衛生士がいませんので私が実際に歯磨きから全部やります。全部やることで、どの患者さんの口の中も把握することができるので、経年的なちょっとした変化も見逃す可能性を低くすることができます。診療のほか週2回、昼休みに高齢者施設に出向き、約80人の歯磨きケアもしています。

先生は化石の本も共著で執筆されるなど、化石や歯について研究されてきたそうですね。

はい、一番好きなのはアンモナイトで、本当は化石の研究者になりたかったほどです。大学の解剖学の講座に60歳まで週1回通って歯の進化の研究を続け、哺乳類の原始的な形であるげっ歯類をテーマに学位を取得しました。人間は哺乳類の中でも別格と思われていますが、例えばネコのひげにあたるのは鼻毛など、隠れているところに共通した部分がたくさんあるんですよ。私は全身の解剖学を学びましたから、診療のときも、全身の疾患とのかかわりを頭の中で組み立てていますね。現在は、歯科衛生士専門学校で全身の解剖学と組織発生学の講義を受け持ち、臨床に即した、現場の歯科医師ならではの話をしています。

最後に、読者へのメッセージをお願します。

蜂矢喜一郎院長 はちや歯科6

医療は人生に関わるものですから、そのときだけ良ければいいと考えて治療を受けないほうがいいと思います。今は若くても、10年後、20年後、さらに70~80代になったとき、口の中がどうなっているか、そこまで考えて治療してくれる先生を見つけてください。治療というのは人工的な処置であり、人工的なものはその後のケアが必要になります。「きれいになりました、はい終わり」では医療者も良くないし、患者の心構えとしても良くありません。私は睡眠時無呼吸症候群や入れ歯、歯周病のケアなど、どの治療においても責任を持ち、患者さんとは一生お付き合いしていくつもりでいます。そこに、地域で医療をする意味があると思います。「ここへ来てよかった」と言っていただいて歯科医師人生を終えたいですね。歯科医師が天職だと思っています。

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