川原 和也 院長、松本 秀一朗 先生、萱島 恒善 先生の独自取材記事
川原腎・泌尿器科クリニック
(姶良市/帖佐駅)
最終更新日:2024/12/26

姶良市西餅田で1998年に開業した「川原腎・泌尿器科クリニック」。同院を率いるのは、鹿児島大学医学部泌尿器科で医局長も努めた川原和也院長。泌尿器科や腎臓内科のほか、透析、性感染症、外科などに対応するとともに、17床を備えた入院施設、手術室、透析室と設備も充実。近隣の病院と緊密な連携を図りながら救急患者にも迅速に対応している。川原院長のほか、在宅で行う腹膜透析の専門家である松本秀一朗先生、総合病院の泌尿器科で長年研鑽を積んだ萱島恒善先生が在籍し、地域の医療を支えるクリニックだ。今回は川原院長・松本先生・萱島先生に、クリニックの特徴や地域への思いをたっぷりと聞かせてもらった。
(取材日2024年12月9日)
専門的な治療と、幅広く面倒見の良い地域医療の要
医師を志したきっかけやご経歴をお聞きします。

【川原院長】医療関係の仕事とは関係のない家庭で育ちましたが、高校の先生の勧めで医学部を受験し、長崎大学医学部に進学し、15年間大学病院に在籍して泌尿器科の医局長も務めました。開業から27年たちましたが、自分の理想とする地域医療を実現し、多くの患者さんと関わってこられたことが人生において大きな財産となっています。
【萱島先生】私は小さい頃に結核にかかったことが一番のきっかけです。将来は私も病気になった方を助けたいと思い医師を志しました。先輩の声がけで泌尿器科を専門とすることになり、佐賀県医療センター好生館や鹿児島市立病院にて泌尿器科全般を診ていました。2012年からこちらで働いています。
松本先生はいかがですか?
【松本先生】北海道大学医学部に進学し、大学卒業後は移植外科の医師として、北海道大学などで腎臓・肝臓・小腸膵臓などの移植を行っていました。2009年から万波誠先生に師事し、宇和島徳洲会病院で腎移植や泌尿器外科手術を数多く経験し、2012年に鹿児島に来た頃から腹膜透析に力を注ぐようになりました。こちらのクリニックで勤務するようになったのは2021年からで、実は川原先生とはもともと釣り友達だったんです。
診療内容について教えてください。

【川原院長】腎臓疾患・尿管・膀胱・前立腺など、泌尿器科全般を診ています。手術に関しては内視鏡での膀胱がんや尿管結石、前立腺肥大症手術、透析導入に必要な内シャント造設術、腹膜透析の導入手術など幅広く行っております。入院中の回診は執刀医が担当しますので、患者さんには安心いただけるのではないでしょうか。地方のクリニックですから、腎・泌尿器科だけでなく内科的疾患などのご相談もたくさんいただきます。検査を行った際に胆石や膵病変などが発見された場合は、専門の病院をご紹介します。医療福祉や地域連携、急性期から慢性疾患までプライマリケアを行い、さまざまなお悩みに対し面倒見の良いクリニックであると思っています。
どのような患者さんが来院されていますか?
【川原院長】幅広い年代の方がいらしていますが、特に多いのは高齢の方ですね。相談内容は尿漏れや血尿などの尿に関するお悩みや、松本先生が行う透析治療のご相談、男性は前立腺マーカー検査で高値判定があったとか、女性だと膀胱炎や陰部への違和感などです。若い方は性感染症や、小さなお子さんですと夜尿症のご相談もあります。救急車も受け入れているので、激しい痛みを伴う尿路結石で運ばれてくる方もいらっしゃいますし、地域医療を支える前線のクリニックとして幅広い診療を行っています。
在宅での腹膜透析に注力
設備や治療の特徴はございますか?

【川原院長】血液透析室では患者さんの治療状況をリアルタイムで共有できる透析通信システムを導入しています。また松本先生による在宅で行う腹膜透析に力を注いでいます。前立腺肥大症の治療においては、高エネルギーのレーザーを用いて前立腺を内側から蒸発させるためにCVP(接触式レーザー前立腺蒸散術)を導入しています。切除と止血を同時に行うため出血リスクが低く、複数の薬を内服している方などにも行える手術です。尿管結石に関しては先進のレーザーを導入し、砕石効率が上がることが望め、手術時間も従来より短縮を図れるとも特徴の一つです。また当院では前立腺がんに対して陽子線治療を行っているメディポリス国際陽子線治療センターと連携をしており、職員さんに毎週金曜日に来ていただいているため治療相談が可能です。
腹膜透析について詳しく教えてください。
【松本先生】腹膜透析は自分のおなかを使ってできる透析で、血液透析と比べて身体的負担が少なく、在宅でできるため高齢の方に適しています。日本では高齢化社会の到来に伴い、新たに始める方の平均年齢は70歳以上なんです。家から通えず入院している方も多く、全透析患者さん約33万人のうち3万人ほどが入院していると言われています。こうした状況から鹿児島を拠点に10年ほど、患者さんやご家族に直接情報を届ける啓発活動を行ってきました。当院では鹿児島県全域から紹介があり多くの患者さんをフォローしています。約60ヵ所の訪問看護ステーションと連携しており、私たちの取り組みを「鹿児島モデル」として呼ばれています。
在宅での腹膜透析は、どのように行われるのですか?

ご自身やご家族ができない場合は、アシステッドPDという地域包括ケアシステムを活用し、訪問看護師さんにお手伝いしてもらいます。在宅とクリニックを直接つなぐIoT技術を活用して、日常的に細かく管理することで在宅でも医療機関と同じクオリティーの医療を提供できるのです。また、自宅で最期を迎えたいと思われる方も多い中、血液透析をされているとそれをかなえるのは非常に難しいため、在宅での腹膜透析に切り替えたいというご希望も多いです。私は治療法を決める際は患者中心主義であるとともに、患者さんにとって最も良いと思う治療法をそっと後押ししてアドバイスする、SDMという共同意思決定支援を大切に日々診療にあたっています。
困った時にすぐに来られるクリニックへ
患者さんと接する際にどのようなことを心がけられていますか?

【川原院長】私たちにとって病気は日常ですが患者さんにとっては非日常ですので、患者さんが理解できるような説明をしています。些細な会話が生活背景を知るきっかけになることも多いので、例えば「今日は寒くて朝に霜が降ったでしょ」など話を振ってみるなど親しみやすく安心してもらえるよう接しています。
【萱島先生】専門用語は使わず、わかりやすい言葉や表現で患者さんに伝わるような説明をしています。検査結果がどうあれ、明確に事実をお伝えした上でどう解決していくかをしっかりお話ししています。
【松本先生】透析は命を預ける治療ですので、家族になったつもりで親身になって信頼していただけるよう心がけています。外来ではパソコンでなく患者さんの目を見て、訪問看護やIoT技術をフル活用し困ったことがあればいつでも対応するようにしています。
職員の方もたくさんいらっしゃいますよね。
【川原院長】現在は医師が3人、看護師が25人、臨床工学技士が5人、事務や補助を行う職員が10人います。職員に対しては常々仕事を減らすよう声をかけているんです。書類の簡素化、デジタル機器の活用、効率の良い動線を作ることなど、とにかく無駄な仕事を減らすことがミスの削減につながりますし、患者さんと接する時間を作ることもできますよね。現場の職員に裁量権を渡し、必要なものはどんどん取り入れるようにしています。また、長い時間会議をするよりも食事会などを催してコミュニケーションを取るようにしています。
最後に読者や地域の方々へメッセージをお願いします。

【松本先生】知りたいことがある方はホームページから問い合わせができますので、日本中どこにいても相談に乗れます。腎臓の病気でお悩みなど些細なことでも構いませんのでいつでもご連絡ください。
【萱島先生】ご不安なことがあればしっかりとお話を聞きますので相談してください。これからも目の前にいらっしゃる患者さんに対して、誠心誠意対応していきます。
【川原院長】2026年春から泌尿器科の医師である息子が勤務し始める予定です。スムーズに承継できるよう補佐していきたいと思います。泌尿器科に関わらず他科のお悩みでご相談に来られる方もたくさんいらっしゃいます。体のことで何か異常があれば、すぐに飛び込めるようなハードルの低いクリニックですので、いつでもお越しください。地域の方々にとって困った時すぐに「川原クリニックに行こう」と思っていただける場所であり続けたいと思います。