黒岩 真弘 院長、黒岩 宣親 先生の独自取材記事
黒岩整形外科内科
(日置市/伊集院駅)
最終更新日:2024/09/25
日置市伊集院町で地域に根差した医療を提供している「黒岩整形外科内科」。1989年に「黒岩内科」として開院、2020年に整形外科が開設され改名とともにリニューアル。2023年4月からは月・水・金の午前中に皮膚科診療が新設。主に、内科・循環器科を担当するのが黒岩宣親先生、整形外科・リハビリテーション科を担当するのが黒岩真弘院長だ。学生スポーツが盛んな地域でもあり、学生を中心にスポーツ障害の診療を目的に受診する患者も多いのが特徴。閉所が苦手な人のためのオープン型MRIをはじめ、超音波検査装置なども備えることで、身体的にも精神的にも、患者にとって負担の少ない診療を心がけている。患者と医師、スタッフの距離が近く、相談しやすい雰囲気が特徴の同院。真弘院長と宣親先生に詳しく話を聞いた。
(取材日2020年8月5日/情報更新日2024年9月13日)
地域に根差して30年。幅広い診療で地域の健康を守る
クリニックの成り立ちを教えてください。
【真弘院長】「黒岩内科」として1989年に、父の宣親先生が開院しました。病棟14床の有床診療所として、内科と訪問診療をメインに、約30年間にわたって地域に密着した診療を行ってきました。2019年に私が鹿児島に戻り、2020年から整形外科の診療を始め、2023年には皮膚科を新設しました。父から「後を継いでくれ」ということはなく、「今後どういった人生を歩んでいくか」「クリニックをどうしていくべきか」という相談があった時、私は勤務医として連日手術にあたっていましたが、何よりもまず思ったのは「父が30年間で築いてきたクリニックをなくしてはいけない」「困る患者さんがたくさんいるだろう」ということでした。
宣親先生にお伺いします。30年近く通っていた患者さんもいらっしゃるとか。
【宣親先生】今でも心に残っているのですが、大隅・内之浦の方でした。もともとは眼科の医師である妻が大学病院に勤めている時の患者さんで、クリニックの開院当初からフェリーと電車、バスを乗り継ぎ、一日がかりで通ってくださいました。「近くの病院でいいんですよ」とお伝えしたのですが、近所にある妻の眼科にも通いながら、「ここに来ればどちらも診てもらえるし、具合が悪いときには入院もできるので心強い」と言ってくださって。90歳を超えて通院が難しくなってきたため、最終的には地元の病院をご紹介したのですが、亡くなった時にはご家族の方から「長い間ありがとうございました」とご連絡をいただきました。力になれていたのならうれしいですね。
整形外科と内科が一緒になることでのメリットは?
【真弘院長】整形外科を受診する患者さんは、何らかの痛みを抱える場合が多いですが、例えば背中の痛みで受診した場合には、それが整形疾患によるものとは限りません。父の専門である心血管系の症状であることもあれば、腎臓や膵臓などの臓器からの症状であること、脳に問題があることなども。そういった最初の段階での見極め、判断が診療所の一番の役割だと思っているので、整形外科疾患だけでなく、内科疾患も広く勉強するように心がけています。学術的な興味は、大学時代に専門としていた脊椎とスポーツですが、日々の診療については、患者さんが悩みを気軽に相談できるよう、専門科や分野にこだわらずに学んでいきたいと思っています。
日常のケガからスポーツコンディショニングまで幅広く
クリニックには、どんな患者さんが多いですか?
【真弘院長】クリニックのある日置市は、鹿児島市に隣接したベッドタウン。当院にも子どもからお年寄りまで幅広い年代の患者さんがいます。中学や高校を中心に、スポーツの盛んな土地柄で、スポーツ関連の疾患で受診される患者さんも多いですね。日常のケガから、変性疾患のリハビリや神経疾患、スポーツによるケガやスポーツ障害後の再発予防とコンディショニングといった幅広い世代の悩みや相談に対応しています。病診連携についても、米盛病院などの総合病院と連携。その他、日置市やいちき串木野市のより近隣の病院への入院についてもご本人とご家族の希望で対応可能です。
整形外科の医師をめざしたのは、何がきっかけだったのでしょうか?
【真弘院長】父が内科の医師、母が眼科の医師だったこともあり、医学の道へ。実は、兄も近くで母と一緒に眼科の医師をしていて、妹は皮膚科の医師、弟は消化器内科の医師としてそれぞれ働いています。整形外科の分野に興味を持ったのは学生時代ですね。中学から大学までバスケットボールをしていたのですが、大学時代にチームメートがケガをしてしまって。復帰するまでの過程を見て、整形外科医師の道を選びました。大学は、東海大学医学部へ進み、附属病院で10年間ほど勤務。研究分野は「脊髄損傷」でしたが、並行してスポーツや四肢の外傷、変性疾患など幅広く学びました。そういった思いもあり、今のクリニックでは、スポーツ診療に力を入れています。現役のスポーツトレーナーやスポーツ経験のある理学療法士をそろえ、テーピング指導やコンディショニングなど、治療以外のケアも充実させています。
診療を行う上で大切にしていることを教えてください。
【真弘院長】当院はあくまで無床診療所ですので、一番の役割は早期に診断し、適切な治療やアドバイス、専門施設へと紹介するべきかどうかの見極めだと思っています。その上で大切なのが「患者さんにとっての駆け込み寺」であるということ。「どこの科に行けば良いのかわからない」「病院にかかるべきなのかわからない」といった悩みでも、「気軽に相談できる」「何か体のことで困ったことや不安があれば、すぐに相談に来られる場である」ことが重要。実際、患者さん自身のこと以外でも、ご家族の体調管理の相談なども多くあります。なるべく気軽に相談していただけるよう、話を聞いて診察や検査、治療が不要だった場合には、ご相談のみでお帰りいただくこともあります。話をすることで少しでも心配事やストレスが減った状態で帰っていただきたいですね。
オープン型MRIや超音波検査機器で患者の負担を軽減
身体的にも精神的にも、患者さんにとって負担の少ない診療を心がけているとか。
【真弘院長】具体的には、運動器超音波検査やMRI検査などを用いることで、放射線被ばくを極力減らすよう努力していて、MRIも閉所が苦手な患者さんのためにオープン型です。ガラス張りのリハビリ室は明るく開放感があり、周囲を気にせずリハビリに専念できます。リハビリ室から連結した屋外テラスもあり、天気の良い日には歩行訓練など屋外でのリハビリも可能です。リハビリの頻度についても、一人ひとりの体力や、通院の移動手段があるかないかで負担にならない範囲を見極め、ご自身で行える方には自宅でのセルフトレーニングを細かく指導し、通院頻度を減らせるように配慮。費用についてもきちんと説明し、どのようなアプローチが最も合うのか相談をしながら一緒に選択していきます。
スタッフの皆さんにとって「働きやすい環境」づくりにも取り組んでいると伺いました。
【真弘院長】当院は小さな診療所ですので大学病院や総合病院のような高度な医療は提供できませんが、その分患者さんと医師、スタッフの距離が近く、何でも相談できるのが良い点だと思っています。病院に行くのは多少の緊張を伴いますが、当院に来る時は緊張してほしくないんです。そのためには、私の診療態度はもちろんですが、やはり当院全体の雰囲気が大切だと思います。良い雰囲気づくりのためには、まずスタッフ全員にとって働きやすい環境を整えることが大事なので、なるべく残業を減らす、休みの取りやすさ・相談のしやすさに配慮するなど、スタッフがストレスなく働ける環境づくりを心がけています。幸い父が院長の頃から良い雰囲気が築けていますので、これからも続けていきたいですね。
最後に、今後の展望やメッセージをお願いします。
【真弘院長】皮膚科の診療も始まりましたので、これまで以上に地域に根差した通いやすいクリニックをめざしていきます。整形外科ではスポーツ障害の患者さんも多いので、リハビリ室の機器もそれに特化したものをそろえ、よりスポーツに関する診療を充実させたいと考えています。また、外来・リハビリスタッフを増やして、なるべく患者さんをお待たせしないようにしたいですね。一人ひとりの診察にかける時間が限られてはきますが、「患者さんの話をとにかくよく聞いて、一人と向き合うこと」を肝に銘じていきます。心配事や不安なことがあれば、お気軽に何でもご相談ください。