谷山 弘樹 副院長の独自取材記事
敬愛クリニック
(鹿児島市/五位野駅)
最終更新日:2024/08/26
開院以来40年近く平川町の人々の健康を守り続ける「医療法人三樹会 敬愛クリニック」。2020年に谷山茂樹院長の長男である谷山弘樹先生が副院長に就任し、現在は2人体制で診療を行っている。糖尿病を専門とする弘樹副院長の加入時に新たに糖尿病検査機器を導入し、院内検査で迅速に早期発見・早期治療につなげられる体制を強化。また機器のデジタル化も図り、さまざまな検査に対応している。開院当初から患者に寄り添った診療を続ける父の姿を見て育ったという弘樹副院長は、その理念を守り今後も患者が心身の不調を感じた時に、気軽に診察を受けたり相談できたりするかかりつけ医院として、地域の人々に必要とされるクリニックであり続けたいと話す。そんな弘樹副院長に、診療理念や専門の糖尿病治療などについて詳しく話を聞いた。
(取材日2024年7月25日)
診察時の会話は心身の不調や疾患を見抜く鍵
長く診療を続けられているクリニックですが、理念や診療方針を教えてください。
院長が開院以来守り続けている、患者さんに対し優しく寄り添った診療をすることです。その中で僕が意識しているのは、患者さんとしっかり話をすることになります。それは患者さんの話をよく聞きながらしっかり会話をすることで、患者さんの背景を知ることが診療にとっても重要なんです。どんな生活をし、どんな趣味や楽しみを持ち、生活リズムはどんなふうなのか。例えば「最近寝苦しい」、「夜中によく目が覚める」などの世間話の中から新しい病気が見つかることもあります。こういうことは患者さん自身はあまり気にしていないことが多く、病気が隠れているとは思っていないので、それを見逃さないように心がけています。
主な患者層や主訴について教えてください。
地域の方が多く来院してくださっています。平川町周辺も年齢層が上がっており、全体としてはご高齢の方が多い印象です。症状は糖尿病に限らず内科全般、手がしびれる、眠れない、虫刺されのようにさまざまです。患者さんの中には顔見知りの方も多く、子どもの頃の僕を知っている方も多いので、気恥ずかしさもあります。ただ、地域の皆さまに頼っていただけるのはうれしい限りです。また患者さん同士お知り合いの方も多く、待合室で「元気にしてた?」「久しぶりだね」と会話されている様子もよく拝見します。おしゃべりをしたり笑ったりすることで気持ちが軽くなり元気になることもありますよね。そういう意味では、クリニックであり地域の憩いの場でもあるといえるかもしれません。
4年前に副院長として診療に加わられたのは、どのような経緯からでしょうか?
医師を志した時から、いつかはこのクリニックを手伝いたいと考えていました。父は長くこの地域で患者さんの健康を守るために尽力していますが、年齢を重ねました。僕が加わることで、患者さんの体調が悪くなった時にすぐ対応できる体制を強固にしたいと、4年前に副院長に就任しました。現在は2人体制での診療で、電子カルテやデジタルエックス線検査装置など電子機器への移行も行い、僕の専門が糖尿病なので、その専門に沿った検査機器を新たに導入し、血糖値やHbA1Cの検査から結果までを院内で行えるようにしました。他にも、超音波や心電図、動脈硬化などさまざまな検査に対応しています。
専門が異なる2人の医師が、幅広い疾患に対応
ところで医師になられたきっかけは、お父さまである茂樹院長の存在でしょうか?
はい。僕が1歳の時に父が当院を開院し、2024年7月で40年目に突入したところです。1階がクリニックで2階が住まいだったのですが、その頃の父は休みなしと言っていいほど、休日も夜間も連絡が来たら患者さんのもとへと走る毎日でした。正に地域医療を担う医師として尽力する父の姿を間近で見ていて、僕も医師になりたいという思いを強くしました。実際大学の勉強は大変でしたし、仕事をするようになってからは患者さんとのコミュニケーションの難しさに悩むこともありましたが、勤務医時代から経験を重ね、患者さんと真摯に向き合うことで、少しずつでも父に近づけているといいなと思います。「憧れの医師は?」と聞かれたら、やっぱり答えは「父」です。
そんな茂樹院長と2人体制診療のメリットについて教えてください。
院長の専門は胃腸科・消化器内科、僕の専門は糖尿病と、同じ内科でも専門分野が違うことが一番のメリットです。例えば、僕が診ている糖尿病の患者さんに胃腸の疾患が見つかった場合、他の医療機関を紹介しなくても、院内ですぐに院長に相談し、診察・サポートしてもらえます。お互いの得意分野が異なることで幅広い疾患に対応できることが当院の強みだと思うので、日頃から院長とは患者さんの症状や治療方針について、よく話し合うようにしています。もう一つは、今まで院長が診ていた患者さんを僕が診ることになった時にスムーズに引き継ぎができることです。いきなり知らない医師の診察を受けるのは抵抗がある方もいらっしゃると思いますが、「息子が帰ってきて」と父が事前に紹介してくれることで、安心して診察を受けてもらえるのではないかと考えています。
先生のご専門は糖尿病だとお聞きしました。具体的にはどのような治療をするのですか?
糖尿病は痛い、つらいといったわかりやすい自覚症状がないので、日常生活の中で自分が糖尿病と気づく人はほとんどいません。だからこそ、健康診断などを利用し、血糖値やHbA1cが少し高いと指摘された方は、早めに受診してほしいと思います。治療は採血の値にもよりますが、早期発見であればいきなり薬を服用することはなく、まずは生活習慣の見直しを行います。食生活や飲酒量、運動量を見直し、改善を図ることが重要で、当院の場合は管理栄養士が勤務しているので、一人ひとりに合わせた食生活などの生活習慣の指導を行っています。そうやって3ヵ月くらい経過を見て、それでも数値が改善されない場合は、患者さんにしっかり説明した後、治療薬を服用することになります。
総合病院での経験を生かし、専門の糖尿病にも尽力
以前は総合病院で勤務されていたんですね。クリニックの診療に生かされていることを教えてください。
僕が以前勤務していた病院では夜間の救急科外来もあり、幅広い年齢の患者さんのさまざまな疾患に対応していました。また垂水、川内などの病院では、糖尿病以外の内科全般の診療にも従事していました。診断がついた状態で他院からの紹介で来院される患者さんが多い総合病院とは違い、当院へ来られる患者さんの症状はさまざまなので、そういった大きな病院での経験が、当院で診療する上で非常に役立っていると思います。また鹿児島市内の病院では、いろいろな科の先生方と一緒に話し合ったり相談したりする機会が多く、他の診療科の先生ともつながりができました。当院で対応が難しい疾患の場合、そういった先生たちに相談したり、専門の医療機関を紹介させていただいたりといった横の連携が取れることも、強みだと思います。
今後は訪問診療も考えていらっしゃるとか。
地域の皆さんが気軽に診療を受けられるかかりつけ医院であることが、当院のめざすところです。この地域も年々ご高齢の方が増えていて、今まで来院してくださっていた患者さんの中にも通院が難しいと感じている方が増えています。現在、往診はできる範囲で受けるようにしていますが、訪問診療はまだできていない状況です。将来的には医師の増員を考えていて、体制が整ったら訪問診療も行っていきたいと思います。通院が難しい方々のご自宅へ、僕たちが定期的に訪問することで、しっかりと医療を届けたいと思っています。
読者の方へメッセージをお願いします。
息子の僕が見ても、院長は患者さんにすごく優しく寄り添った診療をしているので、その院長の思いをずっと受け継いでいきたいと思います。患者さんが安心して通うことができ、地域の皆さんに必要とされるクリニックであり続けることが目標です。一方で開院から40年たち、機器などの電子化を図るなど、僕が加わったことで新しくすべきところは変えていきたいです。今後も専門分野が違う医師が在籍しているメリットを生かし、幅広い疾患に対応していきたいと思います。また当院で対応が難しい場合は、速やかに専門の医療機関を紹介することも、かかりつけ医院としての大事な役割だと思います。特にご高齢の方はさまざまな疾患が複合的に現れる場合が多いので、体調に不安がある時はまずは気軽に相談してください。