迫野 能士 院長の独自取材記事
井後眼科
(鹿児島市/朝日通駅)
最終更新日:2024/04/25
1963年の開業以来、約60年にわたり地域の眼科医療を担ってきた「井後眼科」。2020年4月、迫野能士(さこの・たかと)先生が院長に就任し、新たな一歩を踏み出した。地域に根差した医院としてあらゆる世代の眼疾患に広く対応。19床の病床を備え入院治療も行う同院。遠方や離島からの患者も積極的に受け入れるとともに、県内の医療機関と連携し個々の患者に適した医療を提供する。「地域の皆さまに喜んでいただける診療を提供し、地域医療に貢献したい」と語る熱意あふれる迫野院長に、これまでの歩みや診療にかける思いなどを聞いた。
(取材日2021年12月02日/情報更新日2024年4月3日)
歴史ある医院を継承。より質の高い医療の提供をめざす
院長就任までのご経歴をお聞かせください。
鹿児島大学医学部卒業後、同大学病院眼科教室に入局。出向先の垂水中央病院眼科、いづろ今村病院眼科で研鑽を積んできました。また数年前からは当院の診療にも参加し、大学病院と市中病院との診療の違い、患者さんのニーズの違いなどを学んできました。2020年、前院長の退職に伴い私が院長職を継承することに。スタッフとも顔見知りでしたので、引き継ぎはスムーズでした。現在も週1回程度、鹿児島大学病院へ出向き、研究、論文執筆にも取り組み、新たな知見や先端治療に関する知識・技術を、当院の診療に生かしていきたいと考えています。
歴史ある医院を継承され、プレッシャーを感じられることもあったと思います。
そうですね。一般的には一定期間、大学病院に勤務した後に開業するか、大学病院で先端治療を続けるという選択肢があるのですが、私の場合37歳で院長となり、まだ早いのではないか、やっていけるのかという不安もありました。他方で、前院長の指導を受けた経験から、やれるという自信も少なからずあったんです。もちろん、より良い診療を提供するためにはもっともっと知識・技術を向上させなければなりません。そのため、あえて大学病院での研究も継続するという道を選択しました。当院スタッフ、大学病院の皆さんの理解や配慮には心から感謝しています。
若い先生ならではのパワーが医院に与える影響も大きいのではないでしょうか。
やはり若さは大きな強みだと思っています。初めのうちは若さに任せて、当院の診療と大学病院での研究の両方に100%の力を注ごうと意気込んでいましたが、さすがに長くは続かず、ようやく自分の役割や仕事のペースがつかめてきたところです。1人ですべてを抱え込むのではなく、信頼できるスタッフに任せられる部分は任せて力を発揮してもらい、また実力ある先生方の助けをいただきながら、医院としてさらに質の高い医療を提供できればと考えています。医師になりたての頃、自分はコモンディジーズ(日常的に高い頻度で起こる疾患)と希少疾患のどちらに力を注ぐべきだろうかと考えたときに、私はコモンディジーズを診て多くの方々の悩みに応える道を選びました。そのことを思い出すと、当院の診療はまさに私の理想。この環境で働けることに大きな幸せを感じています。
白内障治療に注力。離島住民の目の健康にも心を砕く
入院設備も備えているのですね。どのような患者さんが多く来院されますか。
小さなお子さんから90歳を超える方まで、幅広い年齢層の患者さんが来院されます。お子さんだとアレルギー性結膜炎などが多く、若い方はコンタクトレンズの使用に伴うドライアイを訴える方が目立ちます。年齢が上がると白内障や初期の緑内障で来られる方が増えてきますね。当院は眼科としては珍しく入院設備を備えています。白内障手術は日帰りでも可能ですが、手術当日に帰宅するのを不安に感じることもあるでしょう。また、手術後数日間は毎日診察を受けていただかなければなりません。通院に付き添いが必要なご高齢の方や、遠方から来られる方もいらっしゃいます。入院することで心身の負担を軽減し、安心して治療に臨んでいただければと考えています。ご家族と一緒に過ごせる大きめの病室もご用意できますので、ご希望があればお申し出ください。
白内障の治療に力を注がれていますね。多焦点レンズについても教えてください。
目の病気はカメラに例えると、白内障はカメラのレンズの部分である水晶体の病気。濁ってしまった水晶体を手術で取り出し、透明な眼内レンズを入れて水晶体の代替とすることで、見えやすさを取り戻すことが期待できます。患者さんの不便を解消するために、当院で力を注いでいる治療の1つです。代替に挿入するレンズには単焦点レンズと多焦点レンズがあり、健康保険適用の範囲でよく使われるのは、遠方・近方など決まった1つの範囲にだけピントを合わせる単焦点レンズです。一方で多焦点レンズは、1枚のレンズに特殊な加工を施すことで遠方中距離近方と複数範囲にピントを合わせることができます。当院ではこの多焦点レンズを選定療養で使用できます。どんな眼内レンズを選んだらいいかわからない場合も詳しい説明を心がけていますのでご相談ください。
白内障相談ダイヤル、離島専用フリーダイヤルはどのように利用されているのですか。
白内障については、目がかすんできたと感じても受診すべきタイミングがわからない方も多いと思います。そうした患者さんからのお電話に看護師が対応し、症状をお聞きした上で早期受診をお勧めしています。白内障は時間とともに進行するため、末期になると手術のダメージが大きい場合や、回復までに時間がかかる可能性も。検査で別の病気が見つかることもあり、どんな病気も早めに治療を始めるに越したことはありません。必要に応じて連携する専門医療機関へご紹介していますので、まずはご相談ください。また離島にお住まいの方は近くに病院がなく、受診に手間と時間がかかる場合も多いことから、症状が進むまで受診されない傾向にあります。そういった方の電話相談に対応し、必要な治療を安心して受けていただけるようご案内しています。
気遣いや心遣いを大切に、患者に喜ばれる診療をめざす
アットホームな雰囲気が印象的ですが、日頃から心がけていることはありますか。
病気を診断するのは医師ですが、患者さんと接するのは医師だけではありません。スタッフにも普段からよく言っていますが、すべてのことは気遣いがあるかどうかでいいほうにも悪いほうにも転ぶものです。患者さんとのちょっとした行き違いもスタッフ同士のトラブルも、それらをひもとくと最初の時点での気遣いが足りなかった、もっとわかりやすく伝えれば良かったといった反省に行きつきます。大切なのは気遣い、心遣い。診療に関する知識・技術を一朝一夕に身につけることはできませんが、気遣いは自分でやろうと思ったときから実行できること。しっかりやっていこうという意識を院全体で共有しています。
子どもの近視が増加傾向だと聞きますが、目が悪くなる原因は何でしょうか。
目を使いすぎるとよくないと考えている方もいるようですが、酷使することが目が悪くなる直接の原因になることはほとんどありません。人間の目はもともと遠方を見ることに適した仕組みになっています。太古には人間も他の動物同様に狩猟や採集を行うので、遠方が見えるほうが生存に有利だったと考えられます。そのため近くを見るときは、目がピント合わせを頑張り続けている状態。でも頑張り続けると疲れて、次第に近くを見るのに適した状態になろうと変化します。それが近視だと考えられています。この変化が成長時期に始まると、近視は急激に進行してしまいます。残念ながら近視進行のメカニズム、予防方法は解明されていません。また、昔から「眼鏡をかけると目が悪くなる」といいますが、それは誤解。近視進行は眼鏡のせいではありません。眼鏡はピント合わせを助けてくれる道具なので、かけることをお勧めします。
読者へメッセージをお願いします。
目に限った話ではありませんが、少しでもおかしいと感じたら早めに受診することが病気の早期発見・治療につながります。受診で異常がなければ安心できますから、いずれにしても早期の受診が最良の選択肢だといえます。また体に異変を感じたとき、どこの科を受診すべきか迷うことがあるかもしれません。まずはかかりつけの医師に相談されるといいでしょう。もちろん当院でもお話を伺い、アドバイスさせていただきます。長年地域医療に貢献してきた当院の理念を継承し、今後もより多くの患者さんに丁寧でわかりやすい説明、納得・理解できる診療をお届けすることを目標にスタッフともども努力してまいります。どのようなことでもご相談ください。
自由診療費用の目安
自由診療とは多焦点眼内レンズを用いた白内障手術/片眼37万4968円