久保 秀通 院長の独自取材記事
久保皮膚科
(鹿児島市/鹿児島駅)
最終更新日:2023/12/07

鹿児島駅から徒歩9分のところにある「久保皮膚科」は、90年近くこの地で治療を続けてきた歴史あるクリニックだ。院長の久保秀通先生は、祖父、父から続く3代目の院長に2014年就任。皮膚科医としての専門性を大事にしながら、鹿児島医療センターなど地域の医療機関と連携し、地域住民の健康を幅広く支えている。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医の久保院長が日頃の診療で意識しているのは、皮膚の症状に隠れた、がんなど大きな病気を見逃さないこと。毎日のようにあるケースではないからこそ、小さなサインをキャッチできるよう常にアンテナを張り、緊張感を持って診察にあたっている。久保院長に、診療方針や地域に対する思いなどについて、話を聞いた。
(取材日2023年11月1日)
3代にわたって地域貢献する歴史あるクリニック
クリニックの歴史と先生の経歴を教えてください。

初代院長である祖父が開業したのが1937年、90年近く前のことになります。父が久保皮膚科と名称を変更し、そして3代目となる私が2014年に院長を引き継ぎました。長年地域医療に携わってきた、地域に根差したクリニックです。先祖は江戸時代に大名に仕えた御典医だったという話もあり、私の家系の男性はほぼ全員医師なんです。私も子どもの頃から将来は医師になるものと思って育ったため、他の職業についてはあまり考えることなく、ラ・サール高等学校、鹿児島大学医学部に進学し、自然と医師の道に進んでいました。卒業後は、北里大学病院の救命救急センターや麻酔科で研鑽を積み、地元鹿児島大学皮膚科に戻ってきました。助教、病棟医長、外来医長など責任ある仕事も担い、地域に貢献していく想いがさらに強くなっていきました。
小さな頃から、医師という仕事が身近だったんですね。
そうですね。学校から帰ると、父が白衣を着て診察しているというのが当たり前の光景でした。それから、長年通ってくださっている患者さんが、祖父や父との思い出についていろいろと話してくれることも多いですね。祖父は私が生まれた時すでに他界していたので、私自身は祖父に会ったことがないのですが、患者さんから当時の様子を聞くと、祖父も父も、今自分が見ているのと同じ光景を見ていたんだな、と感慨深いものがあります。先代から引き継いだ想いをベースに、自分も地域を守る立場となり、培ってきた経験を地域に還元していきたい、と強く感じますね。
長年続いているクリニックならではですね。患者さんの層としては、どのような方が多いでしょうか。

年齢層としては、やはり高齢の方が最も多くなっています。この辺りは少し中心から離れた住宅地なのですが、地域自体の高齢化が進んでいます。それから、私が小児の診療にも力を入れていることもあり、子どもの患者さんも来てくれますね。診療内容としては、地域の皮膚科として、虫刺されやアトピー性皮膚炎などの炎症、とびひ、水虫などの感染症、やけどや擦り傷などのケガ、できものなどの疾患がほとんどです。皮膚症状に限らず地域のかかりつけ医として皆さんに頼っていただき、以前、道端で具合が悪い人を見つけた患者さんがうちに連れてきてくださったケースもありました。無理に専門外の治療をすることはもちろんありませんが、地域の他の医療機関とも連携し、何かあった際に幅広く対応できるようにしています。
がんのサインを見逃さないよう、日々の診療で意識
診療時に心がけていること、診療方針などはありますか?

院長を引き継いだ時、父から一番最初に伝えられたのが「とにかく、がんを見落とさないように。開業医はそこが一番の生命線だ」というアドバイスです。ちょっとした症状があった際、最初に患者さんを診療するのは私たち地域のクリニックです。小さなサインを見逃さないよう、常に意識をしています。もちろん、実はがんだった、という事例が毎日のようにあるわけではありません。虫に刺された、おできができたといった日常的な疾患の中に、ある日突然紛れ込んでくる……まさに忘れた頃にやって来るという感じです。そのため、常に意識をしてアンテナを張り、「がんを見逃さない」という目で診ないと見つけることはできません。おかしいなという症状を見つけた時は検査を行います。ヒヤリとすることもあり、身が引き締まる思いですね。
どのような点を注意して診ていらっしゃるのでしょうか。
皮膚がんにもいろいろとあるので、一概には言えないのですが、気をつけているポイントは「普通ではない」症状です。できものの例で言うと、色が黒や、白、青などいろいろと混ざってきれいではないとか、普通よりも異様に大きいとかですね。それから、短期間で症状が急速に変化している場合も気をつけています。当院は、近くに鹿児島医療センターがあるので、より詳しい検査が必要な場合などは、連携を取ってそちらに紹介しています。鹿児島医療センターは皮膚がんの治療が強みで、多くの症例数がある病院です。大学時代の恩師がいるほか、症例について検討するカンファレンスに私も参加するなど、しっかりと連携できる体制が整っています。
お子さんの診療で気をつけている点はありますか?

例えば乳児湿疹は、誰もが一度は経験する疾患です。多くの赤ちゃんが皮膚科にかかる最初の症状が乳児湿疹ではないでしょうか。その際も、場合によってアトピー性皮膚炎などが隠れていることもあるので、注意が必要です。乳児湿疹は皮膚科の医師に専門的に子どもの肌を診てもらう最初の機会とも言えるのですが、乳児だと最初は小児科に行かないといけないと思っている親御さんもいらっしゃいます。皮膚科の専門家の目で見ないとわかりにくい違いもありますし、アトピー性皮膚炎などがあれば、早めに治療に介入することが必要です。日頃から小児科の先生とも連携を取り、お互いの専門性が必要な場合はそれぞれ紹介していますが、皮膚に関しての相談は、乳幼児でもまず皮膚科を受診することをお勧めしています。
皮膚の専門家として、地域の健康を支えるクリニックに
スタッフの人数と、フォロー体制について教えてください。

スタッフは看護師が2人、事務が3人で、私以外に5人の体制です。クリニックは、もちろん病気を治すことが第1の目的です。しかし患者さんにとっては、スタッフの対応やクリニック全体の雰囲気も、治療と同じくらい重要なポイントだと思っています。最近は「医療はサービス業だ」という言葉がありますが、私は立場上どうしても治療のために厳しいことを言わないといけないこともあります。そんな時に、受付や看護師がやわらかい空気でちょっとフォローをしてくれたり、何でも聞きやすい雰囲気で接してくれたりすることで、患者さんに頑張って治療しようと思ってもらえると考えています。私だけではなく、スタッフ全員で患者さんを支えられるようにしていきたいですね。
先生のお人柄位についても伺います。休日はどのように過ごしていますか?
休日は、ほとんどサッカー観戦に行っています。プロサッカーリーグで鹿児島がホームタウンのチームを応援していて、鹿児島で行われる試合はほぼすべてスタジアムで観ています。試合の日は、スタジアムに露店がたくさん並び、まるでお祭りのような雰囲気なんです。サッカーの試合を観るのも楽しいのですが、そうした露店で買ったものを飲んだり食べたりするのも、いい気分転換になっています。
最後に、地域の皆さん、患者さんに向けたメッセージをお願いいたします。

祖父、父、私と3代にわたって、これまで開業医として地域の皆さんの健康を支えるべく治療を続けてきました。積み重ねてきた信頼を大切にしながら、時代のニーズに合わせた医療を提供できるよう努力し、今後も皮膚科の医師として地域医療に貢献できればと思っています。皮膚の症状はもちろん、それに限らず体に関する何かわからないこと、診てほしいことがあったら、何でも聞いてください。地域の他の医療機関と連携しながら、皆さんの悩みの解決に向けたアドバイスをいたしますので、気軽に会いに来てくださるとうれしいですね。