庄嶋 賢弘 院長の独自取材記事
庄嶋医院
(合志市/御代志駅)
最終更新日:2026/10/26
合志市を走る国道387号沿いに立つ「庄嶋医院」。院長を務めるのは庄嶋賢弘先生。36年前に院長の父親が開業した同院を、2026年4月に承継した。内科から外科まで幅広く対応する中、約20年にわたる心臓血管外科での経験を生かし、循環器疾患や生活習慣病、心臓・血管の手術後の経過観察にも力を注ぐ。「できる限り断らない医療」を掲げ、何科に相談すればよいかわからない症状もまず受け止めたいと話す庄嶋院長。親しみやすい笑顔が印象的な庄嶋院長に、父から受け継いだ医院への思いや、地域医療にかける思いを聞いた。
(取材日2026年9月11日)
心臓血管外科の経験を、地域医療の力に
これまでのご経歴と、心臓血管外科を専門にされたきっかけを教えてください。

父が消化器外科医だったこともあり、医学部に進んだ頃は、私も自然と消化器外科に進むものと思っていました。一方で、救急の現場でも力を発揮できるような「何でも診られる医師」への憧れもありました。転機になったのは、学生時代の臨床実習で出会った心臓手術です。心臓をいったん止めて手術を行い、再び動かす。そのダイナミックさに純粋に感動して、「かっこいいな、自分もできるようになりたい」と思ったんです。卒業後は久留米大学の外科学講座に入局し、大学院では心筋保護について研究して博士号を取得。1年間の消化器外科での研鑽を経て、その後約20年間、心臓血管外科手術に携わりました。沖縄と福岡の小児専門病院でも先天性心疾患について学び、2016年からは久留米大学で小児心臓手術に注力してきました。
心臓血管外科での経験は、現在の地域医療にどう生かされていますか?
心臓血管外科に特化して歩んできたので、地域の内科で総合的な診療を続けてきたわけではありません。ただ、私が研鑽を積んだ環境では、外科医は手術だけをするのではなく、術前から術後まで一貫して患者さんを診ていました。心臓の病気にはさまざまな疾患が関係しますから、心臓だけでなく全身の状態を把握し、その時々に起こる問題にも対応する必要があります。一つの分野を深く学ぶ中で、結果的に全身を診る経験を重ねてきたことが、今の地域医療の土台になっていると感じます。もちろん、地域に来たからこそ新たに学ぶこともたくさんあります。今も毎週金曜日は久留米大学で心臓手術に参加していますので、外科の現場で学び続けながら、これまでの経験を地域の患者さんに還元していきたいですね。
2026年4月にお父さまから医院を承継されたそうですね。

父が庄嶋医院を開業したのは私が中学2年生の頃です。承継については以前からどこかに思いはありましたが、心臓血管外科医を続けるのか、父の医院を継ぐのかは悩みました。具体的に考え始めたのは5年ほど前です。大学での役割や後輩の指導もあり、すぐには戻れませんでしたが、2026年4月に承継しました。父は今も現役で診療しており、消化器疾患や小外科など、私も学ぶことがあります。実は外科医になった頃、「父と一度くらい手術をしてみたかった」と思っていたんです。今では小さな皮膚のできものを取るような処置を一緒にすることもあって、「こういう外科医だったんだな」とあらためて父の仕事ぶりを知る機会にもなっています。父が築いてきたものを受け継ぎながら、私なりの診療も加えていきたいと思っています。
内科から外科まで、まずは受け止める診療を
現在の庄嶋医院では、どのような診療を行っていますか?

内科、循環器内科、胃腸内科、外科、血管外科、肛門外科を掲げ、風邪や腹痛、下痢といった身近な症状から生活習慣病、心臓や血管の病気、けがまで幅広く診ています。父は消化器外科を専門としてきましたので、今も胃腸の病気や小外科、痔など肛門疾患の初期診療を担当しています。肛門の手術は行っていませんが、必要に応じて適切な医療機関へおつなぎします。私が大切にしているのは、「できる限り断らない医療」です。具合が悪い時に庄嶋医院を思い出して来てくださった、そのこと自体を大事にしたいんです。もちろん当院ですべて完結できるわけではありませんが、まずお話を伺って、当院でできることを考える。「何科に行けばいいかわからない」という時にも、最初に相談していただける医院でありたいと思っています。
特に力を入れている診療について教えてください。
私自身の専門性を生かし、心臓や血管の病気に加えて、高血圧症や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病には力を入れていきたいと考えています。動悸や息切れ、胸の違和感、むくみなどがあれば、お話を聞いて診察し、心電図や超音波検査など必要な検査を行います。また、心臓や大動脈、血管、先天性心疾患などの手術を受けた方の術後の経過も診ていきたいですね。私は大学で術後の患者さんを長く診てきましたので、どのような病気で、どんな手術を受け、その後どこに注意していく必要があるのかを踏まえて診療できることは、これまでの経験を生かせる部分だと思います。専門の医療機関で必要な診療は続けながら、日頃の体調管理や経過観察は身近な場所でも受けられる。そんな役割を担えればと思っています。
外科医としての経験が生きる診療もありますか?

この地域は農業や酪農をされている方も多く、けがをして来院される方もいらっしゃいます。例えば、くぎを踏んでしまったというような場合ですね。父が外科医だったこともあって、庄嶋医院は以前から地域の方に「けがも診てもらえる医院」として認識していただいていたようですから、そうした役割も引き継いでいきたいと思っています。傷を縫う際には、心臓血管外科で使ってきた拡大鏡を使うこともあります。ただ、傷の治療一つを取っても、私が医師になった頃とは考え方や方法が変わっていますから、昔の知識だけで診るわけにはいきません。今の治療についてあらためて学びながら、内科診療を基本に、けがなど外科的な処置が必要な時にもできる限り対応していきたいですね。
顔を見て向き合う、気軽に相談できる医院へ
患者さんと接する際に、大切にしていることを教えてください。

患者さんに「自分をきちんと診てもらえた」と感じていただくことですね。大学で術後の患者さんを診ていた頃、「いつもの先生は画面ばかり見ている」「薬をもらうだけで終わる」といった声を聞くことがあり、自分は患者さんの顔を見て話そうと決めました。ですから診察では体を患者さんのほうに向けて話を聞き、必要な診察をした上で、検査結果などもできるだけわかりやすく説明するようにしています。病気の話だけでなく、地域のことや最近あったことを話したり、冗談を言ったりすることもありますよ。そうした何げない会話からわかることもありますし、少し気持ちがほぐれることもあると思うんです。スタッフとも情報を共有しながら、一人ひとりが何を求めて来院されたのかを考え、その方に合わせた対応をしていきたいですね。
休日や診療以外の時間はどのように過ごされていますか?
ランニングを始めて、もう6年くらいになります。朝に4~5kmほど、週4回ほど走っています。走るようになって感じるのは、診療にも良い影響があるということ。朝走った日は声がよく出て、患者さんともしっかりお話しできる気がします。学生時代は中学、高校、大学とバレーボールをしていたので、もともと体を動かすことは好きですね。フルマラソンにも挑戦していて、走っている最中は「もう走りたくない」と思うんですけど、終わるとまた練習しているんですよ(笑)。家では妻と子どものことを話したり、最近は医院のことで妻からアイデアをもらったりすることもあります。自分一人では気づかないこともあるので、参考になりますね。
今後、どのような医院にしていきたいですか?

父が開業した頃と比べると、この辺りには住宅やお店が増え、街の様子もずいぶん変わりました。昔から通ってくださる方はもちろん、新しく暮らし始めた方や若い世代にも、何かあった時に思い出してもらえる医院にしていきたいです。院内も改修し、自動ドアや土足で入れる環境、ユニバーサルトイレなどを整える一方、開業当時からあるヒマワリのステンドグラスなどは残しました。これからはウェブ予約なども活用しながら、忙しい方にも必要な診療を続けてもらえるよう工夫したいです。また、将来的には車を運転できなくなった方への訪問診療や往診も考えています。「病院に遊びに行く」とまでは言いませんが、それくらい気負わず来られる医院が理想です。父が築いた信頼を受け継ぎながら、まず気軽に相談していただける場所でありたいですね。

