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武藤 浩平 副院長の独自取材記事

むとう内科・脳神経内科クリニック

(佐賀市/佐賀駅)

最終更新日:2026/06/04

武藤浩平副院長 むとう内科・脳神経内科クリニック main

国道208号沿い、佐賀の住宅街にある「むとう内科・脳神経内科クリニック」。副院長の武藤浩平先生は佐賀大学医学部を卒業後、徳島大学でボツリヌス治療に精通した医師のもと研鑽を積み、2024年に祖父の代から続くクリニックを継承した脳神経内科の専門家だ。体が意思に反して動いてしまう不随意運動を専門領域とし、保険診療の範囲でボツリヌス治療を幅広く手がける。木目調を取り入れバリアフリーにも配慮した院内は、温かみがあり肩の力が自然と抜ける雰囲気。「何度でも聞いてください、何回でもお話ししますから」と穏やかに語る先生の、わかりやすく伝えようとする誠実な姿勢が印象に残る。治療に込めた思いや患者と向き合う際の心がけ、今後の展望についてじっくりと聞いた。

(取材日2026年4月23日)

慕われる父の背中を追い、脳の奥深さに魅せられて

まずは、先生が医師の道を志したきっかけを教えてください。

武藤浩平副院長 むとう内科・脳神経内科クリニック1

祖父の代から続くクリニックで育ちましたので、医療は幼い頃から身近な存在でした。とはいえ、強く医師をめざしていたわけではないんです。ただ、父と一緒に買い物に出かけると、スーパーなどで患者さんによく声をかけられていて、その距離の近さがとても印象に残っています。お医者さんという肩書きを押し出すのではなく、地域の方から自然と慕われている姿が子ども心に「すごいな」と映っていました。その背中を見て育ったことの影響は、やはり大きいと思います。2024年に佐賀へ戻りクリニック名を改めて継承し、現在は副院長として診療のほぼすべてを担っています。院長である父には、胃カメラなどの検査をお願いしている形です。

脳神経内科を専門に選ばれた理由をお聞かせください。

高校生の頃に読んだ本で「半側空間無視」という脳の症状を知ったのが最初のきっかけです。視野には入っているはずなのに片側の世界だけ認識できなくなるという現象に衝撃を受けて、脳への興味が一気に芽生えました。医学部で学びを深めるうちに、全身の診察所見から論理的に病変の場所を絞り込んでいく脳神経内科の診察プロセスに強く惹かれ、この道を選びました。卒業後はボツリヌス治療に精通した先生がおられる徳島大学へ進み、病気だけでなく、その方の考え方や人生、生活環境も含めて広く診るという全人的な視点も教わりました。今も日々新鮮な発見があり、探究心をかき立てられ続けている奥深い分野です。

クリニックづくりでこだわった点を教えてください。

武藤浩平副院長 むとう内科・脳神経内科クリニック2

継承にあたって院内を改装し、やわらかい色合いや木目調を取り入れて温かみのある空間をめざしました。待合室にはなるべくメタリックなものを置かず、肩肘張らずに過ごしていただける雰囲気を大切にしています。脳神経内科では足の動きが不自由な方も多いため、トイレの洋式化や段差の解消、土足のまま入れる設計などバリアフリーも徹底しました。ボツリヌス治療を行う際に筋肉の状態を確認するポータブル筋電計を備えており、これは往診にも持参できます。MRIなどの画像検査は提携先の病院にお願いしていますが、診察の所見からも論理的に診断を組み立てるようにしています。一般内科として頭痛やしびれ、物忘れなど幅広い症状にも対応しています。

困っている人に届けたい、ボツリヌス治療という選択肢

先生が力を入れている治療について詳しく教えてください。

武藤浩平副院長 むとう内科・脳神経内科クリニック3

先ほどお話しした不随意運動という体が自分の意思とは関係なく動いてしまう症状が私が特に専門としている領域です。その治療法の一つとして、ボツリヌス毒素製剤治療を保険診療の範囲で行っています。対象は幅広く、脳卒中後の痙縮という筋肉が硬くこわばる状態をはじめ、首が傾いてしまう痙性斜頸、まぶたや顔のピクつきである眼瞼けいれん・顔面けいれんなど、原因となる疾患を問わず対応しています。不随意運動に対するボツリヌス毒素製剤を行う医師は全国的にも少なく、久留米や熊本から来院される方もいらっしゃいます。こうした治療の選択肢を知らないまま長年困っている方も少なくないので、必要としている方にきちんと届けたいという思いで取り組んでいます。

ボツリヌス治療には具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。

硬くなった筋肉の緊張を和らげるために注射をし、動きやすくすることやリハビリテーションにつなげることをめざします。治療であると同時に、リハビリのサポートでもあるというイメージですね。例えば首が傾いてしまう痙性斜頸の方は、首や肩の痛みに加えて飲み込みにも支障が出ることがありますが、首の傾きの改善をめざすことで各症状が和らぐかもしれません。また、手がグーの形に固まってしまうと、伸びた爪が手のひらに当たって痛みや傷の原因になることがあり、それを和らげて手が開くようにすることをめざすだけでも、ご本人の負担軽減につながるでしょう。また足が固まって開きにくい場合、おむつ交換の際にご家族がとても苦労されますが、その改善を図れば、介護の負担軽減も期待できます。ご本人だけでなく、支える方にとってもメリットのある治療だと思います。

患者さんと接する際に心がけていることはありますか?

武藤浩平副院長 むとう内科・脳神経内科クリニック4

診察の最後には「何度でも聞いてください、何回でもお話ししますから」とお伝えするようにしています。お話しする内容がどうしても多くなりがちですし、お一人で来院された方が帰宅後にご家族へうまく伝えきれないこともあるだろうと思うんです。ですから、高齢の方がお一人で来られた場合は「次はご家族を連れてきてください、またご説明しますよ」とお声がけして、ご家族にも直接お伝えする機会をつくるようにしています。一度の診療で難しければ、2度目、3度目と繰り返して、納得していただける形で説明を終えることを大切にしています。注射に対する不安がある方には細い針を使うなどの配慮をしますし、どうしても難しいという場合には無理にお勧めすることはしません。

諦めず向き合い、最後まで寄り添う診療をめざして

診断がつきにくい症状の方には、どのように向き合っていますか?

武藤浩平副院長 むとう内科・脳神経内科クリニック5

しびれなどの症状で他の医療機関を受診して「異常はない」と言われたけれど、やはり気になるからと来院される方は実際にいらっしゃいます。そうした方のお力になりたいと考えていますし、私自身の信念として、カルテに「原因不明」とはなるべく書かないようにしています。というのも、一度その言葉がカルテに残ると、その先で診療にあたる医師も含めて探究の流れが途切れやすくなるからです。もちろんすべての原因を解明できるわけではありませんが、やれることはまだあるはずだという気持ちを常に持っていたい。それは自分への戒めでもあります。どこに相談すればいいかわからないような症状でも、一緒に考えるところから始められればと思っています。

今後、取り組んでいきたいことについて教えてください。

訪問診療を少しずつ始めています。一番の動機は、パーキンソン病のように長く付き合っていく疾患の患者さんを最後まで診たいという思いからです。例えば10年間ずっと一緒に歩んできたのに、通院が難しくなった途端に別の医師に替わるというのは、患者さんやご家族にとっても心残りになりかねません。だからこそ、ご自宅でも継続して診られる体制を整えていきたいと考えています。また、将来的にはクリニック内でリハビリにも対応できるようにしたいですね。それからもう一つ、ブログなどを通じて、医療や健康に関する情報を発信し続けることも大切にしていきたいです。正しい知識が届くことで、不安の解消や早めの受診につながることもあると思っています。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

武藤浩平副院長 むとう内科・脳神経内科クリニック6

脳神経内科というと、脳の病気を扱う診療科ということで少し構えてしまう方もいらっしゃると思います。「脳神経」と聞くと外科のイメージが先に浮かぶかもしれません。ですが、内科では手術ではなく、まず診察で症状を丁寧に読み解くところから始めます。「こんなことも治療できるんですよ」「こういう症状は別におかしくないですよ」と、もっと気軽に知っていただけたらうれしいです。気軽に寄ってもらって、ちょっと相談してもらうだけで解決の糸口が見つかることもあります。スタッフもみんな温かい人ばかりですので、身構えずに足を運んでいただければ。父の代から大切にしてきた地域との距離の近さを引き継ぎながら、近隣の皆さんに親しんでいただけるクリニックでありたいと思っています。