御鍵 麻記子 理事長の独自取材記事
医療法人はまだ内科クリニック
(糸島市/波多江駅)
最終更新日:2026/05/07
筑肥線波多江駅から徒歩約5分、住宅と田畑が広がるのどかな糸島のエリアに「はまだ内科クリニック」はある。2025年に同院を継承した理事長の御鍵麻記子先生は、日本内科学会総合内科専門医と日本呼吸器学会呼吸器内科専門医の資格を持つ専門家だ。糸島で長年地域医療に尽力した祖父と父の背中を見て育ち、自身もこの地で患者を診たいという思いを温め続けてきたという。「よくしゃべります、私」と明るく笑う御鍵理事長の持ち味は、対話を通じて病気のヒントを見つけ出す会話重視の診療スタイル。同じく患者とのコミュニケーションを大切にするスタッフたちと、密に連携して診療を行っている。3代にわたる地域医療への思いや、看取りの経験を通じて得た患者に寄り添う姿勢について、じっくりと話を聞いた。
(取材日2026年4月2日)
幅広い内科症状に対応し、窓口としての役割も果たす
まず、こちらのクリニックを継承された経緯をお聞かせください。

私の祖父と父は糸島の原田病院で長年にわたり地域医療に携わっており、私も小さい頃からその背中を見て育ちました。タイミングもあり原田病院は別の法人へ引き継がれましたが、私も糸島で医療をしたいという思いがずっとあり、ご縁あって濱田先生と出会うことができました。濱田先生ご夫妻は一人ひとりの患者さんにとても丁寧に向き合っておられて、その思いを引き継ぎたいと継承を決意しました。現在は、スタッフの負担も考えて電子カルテや自動精算機を導入する一方、先代の丁寧な診療の形を大切に受け継いでいます。
こちらではどのような診療を行っていますか。
私は呼吸器内科を専門にしていますが、地域柄、何でも相談できる家庭医のような存在がめざすところです。呼吸器の分野では気管支喘息や長引く咳、肺気腫、睡眠時無呼吸症候群などに対応し、高血圧や糖尿病といった生活習慣病も日常的に診ています。女性の方からは更年期の不調や、子育て中に気持ちがつらくなったというご相談をいただくこともありますね。インフルエンザや帯状疱疹などのワクチン接種にも対応していますし、「体の不調はあるけれど、どこに行けばいいかわからない」という方もおみえになります。まず取っかかりをつくり、必要に応じて地域の医療機関にご紹介するという窓口の役割も大切にしています。
喫煙に悩む患者さんへの対応についても教えてください。

禁煙指導にはスタッフ一同で取り組んでいます。「よく頑張りましたね」とねぎらいや前向きな声かけを大切にしながら進めるスタイルです。大人になるとなかなか褒められる機会がないですよね。だからこそ「すごいです」と素直に口に出すことが、患者さんの力になると感じています。途中でどうしてもタバコを吸いたくなったときには、氷をかじってみてはどうですかといった具体的な工夫もお伝えしています。私は呼吸器を専門にしてきた中で、肺気腫や肺炎で亡くなる方を多く診てきました。がんとはまた違う、本当に苦しい最期なんです。そうした実体験をお話しすることもありますし、必要に応じてCTで肺の状態を見ていただくこともあります。ご自身で納得しないと禁煙は進みませんから、実感を持って取り組んでいただくことを大事にしています。
祖父母や父のように地域医療に尽力する医師に
患者さんと向き合う上で、大切にされていることは何ですか。

よくしゃべります、私。周囲の人たちにもそう言われるくらいです。自分ではごく自然に診療しているつもりなのですが、会話の中から病気のヒントや気づきを得られることがあるんですよ。ですから時間の許す限り、病気に関係するかもしれないし関係ないかもしれないけれど、なるだけお話ができたらと思っています。医療もオンライン化が進む時代ですが、やはりお互い向き合ってじっくりお話しするという医療の本質を大切にしていくべきだと考えています。先代の濱田先生も一人ひとりの患者さんに丁寧に向き合う方でしたし、そのスタイルは私の思いとも重なります。対話の中での小さな気づきを次の診療に生かしていく、その積み重ねをこれからも大切にしていきたいですね。
先生が医師を志されたきっかけを教えてください。
祖父や父が地域医療に尽力していたことが大きいです。祖父は車もない時代に自転車で夜中に患者さんのもとへ往診していたそうで、当院に通ってくださっている方から祖父のことで声をかけていただくこともあります。父は私とは正反対で寡黙な人でしたが、医学部に入ってから改めてその姿を見ると、患者さんにはとても優しかった。ただ口下手だなとも感じていたので、反面教師で私がおしゃべりになってしまったのかもしれませんね。久留米大学医学部を卒業した後は呼吸器内科を専門に選び、原田病院や地域の医療機関などで経験を重ねました。
これまでの診療経験の中で、特に心に残っていることはありますか。

原田病院には慢性期の患者さんが多く、私は看取りの場面に数多く立ち会ってきました。年齢を重ねた方が最期を迎えるとき、いかに苦しみを与えないか、そしてご家族との絆をしっかりつないで看取っていけるか。私はそこをとても大切にしていましたし、父も同じ姿勢で24時間365日病院にいました。その経験を通じて、患者さんご本人だけでなく周りのご家族も含めて支えていく大切さを学びましたね。もう一つ印象に残っているのは食事の力です。しっかり食べる方は本当にお元気で、粗食で育った世代の方々はとりわけ力強かった。食べ方や食べ物の工夫次第でできることがあると実感し、今の診療でもその視点を忘れないようにしています。
患者との会話を大切にする、アットホームなクリニック
スタッフの皆さんについてお聞かせいただけますか。

受付スタッフ、看護師、言語聴覚士が約10人勤務しています。先代の時から長く勤務しているスタッフが中心なので、患者さん一人ひとりのことをよく覚えていてくれるんですよ。患者さんについてと聞くと、どのスタッフもすぐに答えてくれますし、長年の関係の中で生活やご家族のことも把握しています。毎朝のカンファレンスでは、気になる患者さんの情報や当日の予定をスタッフ全員で共有してから診療に入るようにしています。明るくアットホームな雰囲気だと思いますよ。
今後、さらに取り組んでいきたいことはありますか。
この建物は築約30年になりますので、リフォームを考えています。院内を整えて気分も新たにスタートしたいですね。診療面では、誤嚥防止のための食事に関する指導や提案にも取り組んでいきたいと思っています。また女性医師だからこそ話しやすい部分があると感じていますので、更年期のお悩みや尿漏れなど、なかなか相談しづらい女性特有の症状にも寄り添っていきたいです。先代から引き継いだ言語聴覚士による小児の言語リハビリテーションも継続しています。吃音や言葉の発達が気になる年長さんから小学校低学年くらいまでのお子さんを対象に、市や幼稚園からのご紹介を中心にお受けしている形です。やりたいことはたくさんありますので、一つずつ着実に形にしていきたいと思っています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

相談しやすい雰囲気をつくっていくことが、私の一番の目標です。体のことで気になることがあっても、どこに相談すればいいかわからないという方は少なくないと思います。そんなときに気軽に足を運んでいただける場所の一つになれたらうれしいですね。祖父や父がこの糸島で地域の方々を支えてきたように、私も少しでも皆さんの力になれればと思っています。休日はゴールデンレトリバーとプードルと一緒にドッグランへ出かけるのが何よりのリフレッシュです。仕事でもプライベートでも、人と関わる時間が私の元気の源になっています。たくさんお話しするのが私の診療スタイルですので、健康のことで気になることがあればどうぞ気軽にご相談ください。

