三宮 貴彦 理事長の独自取材記事
三宮整形外科
(久留米市/西鉄久留米駅)
最終更新日:2023/11/06

開院から約60年にわたり、地域に根差した診療を行ってきた「三宮整形外科」。2004年に先代の父からクリニックを継承した三宮貴彦理事長は、大学病院を中心に、整形外科全般の中でも股関節分野を軸に幅広い研鑽を積んできたドクターだ。患者が訴える「痛み」に対し、さまざまな仮説を立て、徹底的に原因を追究するのが同院の診療スタイル。その決して諦めない姿勢に、遠方からも多くの患者が訪れているのだそう。「原因のない痛みはありません」、そう言い切る三宮理事長。症状の改善には専門性の高いリハビリテーションが欠かせないため、診断後は理学療法士とタッグを組み、原因を取り除くためのアプローチに力を注ぐ。医療人としての熱い情熱と、その背景にあるこれまでの軌跡、患者との向き合い方、三宮理事長の真っすぐな姿勢にふれてきた。
(取材日2023年9月13日)
股関節疾患を軸に研鑽を重ねた後、父の医院を継承
まずはクリニックの歴史からお聞かせください。

ここは、約60年ほど前に父が開院したクリニックになります。当時、久留米市内で2院目の整形外科としてスタートしました。その頃は病床もあり、大きな手術なども実施していましたが、時代の流れにより今のような一般的な疾患の早期発見、早期治療に努め、難症例や手術は大きな病院へご紹介というように変化していきました。父が医師だと、小さな頃からその背中を見てこの道を志したと思われがちなのですが、兄がおりましたので、次男の私は自由に伸び伸びと過ごし、子どもの頃はパイロットになりたいと思っていました。それが次第に医師への道に傾いてきたのは高校生くらいの時だったかと思います。そして、大学は久留米大学医学部へ進学しました。
ご卒業後は同大学の第三内科へ入局されたそうですね。
はい、心臓内科に入局しました。兄が整形外科医をしていましたので、私は祖父がやっていた内科を後々引き継ぐような話も出ていたことから内科を選択したんです。心臓内科を選んだ理由は単純で、当時は心臓内科と言えば一目置かれるような診療科であったから(笑)。そのような不純な動機だったものですから、いざ臨床に入るとその大変さに驚くとともに、ただただ必死にこなす日々。例えば、発作を起こしそうな患者さんがいたら、すぐに対応できるよう隣に簡易ベッドを置いて寝たり。家に帰れないほど、とにかくハードだったのを覚えています。そんな医師1年目の時に兄が急逝しましてね。兄も志半ばでしたから、その想いを自分が引き継ごうと診療科を整形外科に変更したんです。
そのような背景がおありだったのですね。整形外科ではどのような分野を中心に研鑽を積まれたのですか?

整形外科全般を担当するのでさまざまな疾患に携わらせていただきましたが、その中でも特に担当したのが股関節分野。変形性股関節症、大腿骨頭壊死症、ペルテス病など、手術も数多く執刀いたしました。大学病院を中心にキャリアを重ね、ここへ戻ってきたのが2002年。その後、父が体調を崩したことから2004年に継承しました。それを機に建物を改装し、新規開院に至ったのがここへ帰って来るまでの経緯です。
3人の医師を筆頭に約40人におよぶチーム医療を展開
こちらでの診療を開始して、大学病院での診療との違いを感じることはありましたか?

ここに戻ってきてまず一番に感じたのは、医師は改善できる基礎はつくることができるけれども、その後は患者さんの努力はもちろん、理学療法士によるリハビリテーションの介入など、いろんな人たちの力を受けて、症状の改善をめざしていくということ。大学病院は患者さんの数も多く、診察時間も限られていますから、診療後の患者さんが回復していくための一連のプロセスを見る機会はどうしても少なくなってしまうんですね。初診から回復まで、一つのチームとして患者さんをずっと見守っていける喜びを実感しました。
どのような主訴で来院される方が多いのでしょう。
首、肩、腰、膝の痛みで来られる方が多いですね。スポーツによる外傷や痛みで来られるケース、あとはいわゆる五十肩でずっとお悩みの方がなかなか改善しないからということで、当院のホームページを見て来られるケースも。下は幼児から上は100歳まで年齢層も幅広く、さまざまな痛みで来院されます。エックス線画像での評価が整形外科における一般的な診断方法ですが、画像で異常がないからといって、それで終わりにしてはいけないんです。患者さんが痛みを訴えて来院されているわけですから、画像ではわからない箇所、例えば筋といった別の角度からも痛みの原因を探るのが医師である私の役目。そして、リハビリテーションのプロである理学療法士へつなげるというのが当院の診療スタイルです。
理学療法士さんとは情報共有も密に行っているそうですね。

ええ、当院は風通しの良い環境を整えていますので、理学療法士も私に遠慮なく質問しますし、逆に私も彼らへ進捗などの確認を密に行います。とにかくスタッフ間でのコミュニケーションを大切にしています。当院は医師3人を筆頭に総勢約40人のスタッフによるチーム医療を展開していますので、情報共有の徹底は必須。なかなか改善しない五十肩などの難治性肩関節拘縮では、硬くなった関節包を伸ばしながら切ることで可動域を広げることを図るサイレントマニュピレーションという手術も実施していますが、その結果が長く持続するとは言い切れません。そのため術後は理学療法士へ託し、しっかりと様子を見ていきながら必要に応じてフォローアップしていきます。
画像だけに頼らずさまざまな角度から痛みの原因を探る
約40人ものスタッフをどのように束ねておられるのですか?

当院はある程度経験を積んだ方を採用しているので、それぞれの専門性がしっかりと確立しています。例えば、スポーツ領域に長けていたり、肩、腰などを得意とするスタッフ、また子どもに関しては女性スタッフが対応するなど、それぞれの得意性を生かしながら、しっかりと自分がやるべき仕事を果たしてくれるので、私があえて束ねる必要はないんです。それだけ力のあるスタッフばかり。彼らが率先して自分の得意分野以外の知識も高めようと勉強会も実施しています。当院のリハビリテーション室には超音波の機器も置いていますので、リハビリテーションの先生が超音波画像を見ながら患者さんの筋肉の動きを細かく確認することもあります。また、高齢者の通所リハビリテーションも実施。このように、当院は幅広い年代へのケアが行える体制がしっかりと構築できています。
お忙しいと思いますが、日頃どのように息抜きされているのでしょう。
最近はなかなか行く機会がないのですが、往復100kmくらいサイクリングをすることもあります。腰を痛める前は夏に糸島の海で泳いで、それから自転車に乗って、その後は軽くランニングを。このような感じでトライアスロンの練習が息抜きになっていました。宮古島や五島で開催された大会にも出場しました。そういったこともあり、華やかなプロスポーツよりも地域のスポーツに貢献できたらと思っていますね。例えば、地域の子どもたちが通っている空手クラブや野球チームのサポートなど。スポーツにけがはつきものですが、復帰するタイミングの見極めやケアの仕方をサポートするのも私の役目だと思っています。無理をしすぎて肘や肩、そして膝などを壊すことのないよう見守っていけたらと思います。彼らはまだまだ先の未来がありますからね。
では、最後に読者へのメッセージをお願いします。

私が診療で心がけているのは、画像だけに頼らない診断。画像を見て、ある箇所に問題があるからといってそれが原因であると決めつけません。触診を必ず行い、さまざまな角度から痛みの原因を探ります。そのツールとしてMRIも活用。痛みの原因がわからず長い間つらい思いをしている方は痛みがその場で改善しなくとも、原因がわかるだけで安心されるんですね。このように診療に時間をかけていますので、当院は朝から来られても2時間待ちは当たり前です。患者さんはそれをご理解された上で受診されますので、5分で終わる診療をご希望の方は当院には来られませんね。その気持ちに私もしっかりとお応えするため、隅々まで診させていただきます。そしてお子さんで注意したいのが、故障による痛みではなく、ストレスを抱えているときに感じる首から肩、腰などの痛み。このような痛みもあるということを、子育て世代の方には特にお伝えしたいですね。