長引く咳の原因とは?
呼吸器、胃、心臓など多面的な視点が重要
南條内科
(福岡市早良区/野芥駅)
最終更新日:2025/08/13


- 保険診療
「長引く咳」「止まらない咳」に悩んだ経験がある人は多いだろう。市販の咳止め薬を飲んでも一向に改善せず、何週間も症状が続くケースは決して珍しくないが、「咳だけだから」と放置してもいいのだろうか。「咳が続くようなら、感染症以外の原因も考えられます」と話すのは、「南條内科」院長で、日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本内科学会総合内科専門医の平田慎治先生。喘息、アレルギー疾患、逆流性食道炎、さらに心不全まで実に多様な原因が潜んでいる可能性があり、複数の原因が重なり合った複雑な病態を呈していることもあるという。見過ごされがちな「長引く咳」について、慎治院長と糖尿病が専門の平田詩乃先生に、咳の背後に潜む疾患や受診の目安を詳しく聞いた。
(取材日2025年7月9日)
目次
CT、エックス線、胃内視鏡など精度の高い各種検査により、「長引く咳」の迅速な診断・治療をめざす
- Q咳が長引く原因は何が考えられますか?
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A
▲日本呼吸器学会呼吸器専門医が対応
【慎治院長】呼吸器疾患では、風邪などの感染症の後に咳が長引く感染後咳嗽(がいそう)や、乾いた咳がしつこく出る咳喘息、アレルギーを背景としたアトピー咳嗽、百日咳を代表例とする呼吸器感染症などが多いです。COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺気腫、結核、間質性肺炎や肺がんなど重大な病気が隠れていることもあります。原因が1つとは限らず、複数併存して病態を形成している場合もあります。咳が長引いてつらいときは呼吸器専門医のいるクリニックをぜひ受診してください。当院ではエックス線検査に加え必要に応じてCT検査を行い、すぐに画像診断し、検査当日に所見をお伝えしています。
- Q呼吸器が原因ではない場合もあるとか?
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A
▲肺のみならず、咳の原因になり得る状態を考え、対処していく
【慎治院長】一般的に咳の原因は気管支や肺、喉だと思われることが多いですが、ほかの臓器が原因となる場合もあります。よくあるのは、胃液などが逆流して食道の粘膜がただれる逆流性食道炎などです。また、心不全や高血圧の薬の影響で咳が出る場合もありますので、呼吸器だけでなく、消化器、心臓、内服薬などにも広く目を向け原因を探っていく必要があります。私が心がけているのは、これまで培ってきた総合診療的な視点を生かし、総合内科専門医として患者さんを多面的に診察することです。逆流性食道炎などが疑われる場合は、院内で消化器内視鏡の専門家による胃の内視鏡検査を行い、シームレスな診断ができるのも当院の強みです。
- Q咳が続いたら、どれくらいで受診すべきでしょうか?
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A
▲充実した検査機器を導入し、広い視野の診断に役立てている
【慎治院長】2週間咳が続くようなら受診を提案します。厳密に言えば、3週間以内で治る急性咳嗽は感染症が原因である場合が多いですが、だからといって3週間も様子を見てきつい思いをする必要はないと思います。咳が3~8週間続くと遷延性咳嗽、8週間以上では慢性咳嗽と分類され、感染症以外の要素が大きく精査を要します。受診の際はご自身の生活の中でどういった時にどういう咳が出やすいかを医師に伝えていただけると、咳の原因を突き止めやすくなります。咳に痰がからんでいるかどうかも重要な要素です。痰を出そうとして反射で咳が出ている場合など、ある程度咳が必要なときもあります。
- Q診断方法や検査の流れを教えてください。
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A
▲丁寧な問診と効率的な検査で、適切な治療を提供
【慎治院長】まず問診が大事です。咳以外の症状はないのか、ご本人に熱はなくても周囲に感染症にかかっている人がいないかなどの情報をお聞きします。咳が長引いている場合にはエックス線写真を撮り、肺炎の有無などを評価します。さらに必要性に応じて、呼吸機能検査、CT、血液検査、胃カメラなどによる精査も行います。少しでも早く診断し、適切な治療を進めていけたらと考えています。もちろん、咳症状に加えてひどい呼吸不全があったり、血中酸素飽和度が下がっていたりするような緊急性が高い場合はしかるべき検査後速やかに基幹病院に送ります。
- Q健康をサポートする運動施設を併設されているそうですね。
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A
▲メディカルフィットネスでは、理学療法士による対応も可能
【詩乃先生】当院では2階にメディカルフィットネスを開設し、足腰が痛い方や基礎疾患がある方に、安全性に配慮しながらパーソナルトレーニングを提供しています。私の専門である糖尿病の患者さんは感染症にかかりやすく、咳症状も長引きがちです。糖尿病で定期的に病院にかかることで、他の病気もこじらせる前に早く気づけるとぜひ前向きに捉えていただきたいです。当院は運動面からも健康寿命を延ばすお手伝いができればと思います。
【慎治院長】今後は慢性呼吸不全の方に、クリニックではまだ実施しているところが少ない呼吸器リハビリテーションを提供していきたいと考えます。在宅酸素療法も含めより良い医療ができるよう尽力します。