佐藤 恭弘 院長の独自取材記事
佐藤クリニック
(福岡市南区/高宮駅)
最終更新日:2024/10/31
南区長住1丁目の住宅街にあり、隠れ家カフェのような外観が目を引く「佐藤クリニック」。帝京大学医学部附属病院小児科で長年勤務していた佐藤恭弘先生が帰郷し、2023年に院長を継承。内科の医師であり前院長の父とともに小児科・内科、アレルギー科の診療にあたっている。専門分野の小児内分泌・代謝学をはじめ、感染症や小児救急、新生児学など研鑽を積み、幅広い疾患に対応。専門の思春期早発症などは遠くから患者も訪れるという。自身も2児の子育て中の佐藤院長。「目の前の子たちは自分の子どもだと思って診療しなさい」と、大学病院時代に上司から言われた言葉が、診療方針の根幹を成していると話す。めざすクリニック像や心がけていることなど話を聞いた。
(取材日2024年10月8日)
少ない検査で精密な診断につなげ、患者の負担を軽減
最初に、クリニックの特徴を教えてください。
私が小児科を、父が内科を担当する体制を取っていますが、父を手伝いながら私も内科診療に携わっています。家族で感染症にかかるなど、お子さんだけでなく親御さんも体調が悪い時など、一緒に受診していただけます。感染症に関しては、母校のOBである感染症専門の先生のもとで働いていた時期にいろいろな症状に対応し、診断に対する経験を重ねることができました。例えば、鼻水と咳と発熱の症状で一見風邪かな、と思う症状でもじっくり話を聞くことで、ある程度どんなウイルスによる感染症なのか予測することができますし、できるだけ少ない検査とお薬で治療することを重視しています。
お父さまから院長を継承されたんですね。
もともとは、父がここから少し離れた場所で内科クリニックを開業していたのですが、2016年に今の場所に移転しました。2023年からは私が院長を務めています。父は自宅では仕事の話をあまりしないタイプだったのですが、小学生の時に、職場見学した際に父が働く姿を見る機会がありました。その時にすごいな、格好いいなと感じたのを覚えています。そして今、一緒に仕事をするようになり、「町医者」として地域の人と長くお付き合いしながら、その方のことを理解して診療する姿勢は、見習う点が多いなと感じています。
小児科に進まれたのはどのような理由からですか?
小学生の時に小児科の医師になると言ったのを何となく覚えています。子どもにとって身近な診療科だったのかもしれません。帝京大学医学部に進学してからは内科系がいいなというのは考えていました。研修医となり、いろいろな診療科を回ってみて、帝京大学医学部附属病院小児科に入局することにしました。もともと子どもが好きだったので自分には小児科が向いていると思ったのと、小児科の授業を担当していた先生が熱意を持って小児科医療について講義してくださり、ぜひ学びたいと思ったからです。中でも、小児内分泌・代謝学を専門として、低身長、甲状腺疾患、思春期早発症などの内分泌疾患、糖尿病、脂質異常症などの代謝異常症、夜尿症のお子さんを中心に診療し、加えて感染症、アレルギー、小児救急、新生児学など幅広く研鑽を積んできました。
思春期早発症や低身長など、小児内分泌疾患も診療
約20年間東京で過ごし、福岡に戻ってこられたのですね。
大学病院では、外来で内分泌系の疾患を診療したほか、病棟では入院患者さんの診療も多く行っていました。そのほかに、足立区にある博慈会記念総合病院に出向したり、小児科クリニックの非常勤として開業医の先生のもとで勉強したりしました。専門分野や難症例の診療に携わり充実していましたが、いずれは帰郷して当院を継承したいと考えていたんです。子どもが学校に入学するタイミングで約20年ぶりに福岡に戻ってきました。ちょっとしたトラブルから高次の医療機関につながなくてはならない疾患まで、幅広く診療できるのが、地域に根差したクリニックならではのやりがいだと感じています。
先生の専門性を生かして、小児内分泌・代謝の外来もされているそうですね。
性の成長が通常より早く始まる思春期早発症やそれに伴う低身長は、診療しているクリニックが少ないようで、北九州市や筑後地方からも来院されます。何度も遠方からいらっしゃるのは大変かと思いますので、できるだけ近くの医療機関でも受診できるよう手配しています。思春期早発症は、必ず治療しなくてはならない病態ではありませんが、身長の伸びが早く止まってしまう可能性があるほか、お子さんに心理的な負担がかかることがあります。ですから、まずは親御さんやご本人に現状を理解いただくのが第一歩。その上で強い希望があれば、男性ホルモンや女性ホルモンの分泌を抑えるために投薬をするというのが主な治療方法となります。
小児のアレルギー治療にも力を入れているとお聞きしました。
ええ。勤務していた帝京大学医学部附属病院は、アレルギーを得意とする病院でした。病棟医ならアレルギーを診られて当然という環境でしたので、かなりの症例を診察してきました。当院でも、喘息やアトピー性皮膚炎、鼻炎、食物アレルギー、近年子どもの患者さんが増えている花粉症などの診療を行っています。スギやダニに対する舌下免疫療法にも対応していますので、ご相談ください。特に食物アレルギーに関しては、アレルギーの専門部門を設けている国立病院機構福岡病院が近くにあり、連携がスムーズなのが当院の強みです。
2児の父として、自分の子どもにしてあげたい治療を
診療において心がけていることはどんなことですか?
駆け出しの医師時代に、上司から「目の前の子たちを自分の子どもだと思って診療しなさい。わが子にやりたくない検査や治療は絶対にしないで」と、口酸っぱく言われてきました。2児の父となり、実感を持って理解できるようになったその言葉が、私の診療の根幹となっています。「多分風邪でしょう」と、簡単に終わらせるのではなく、一人ひとりの患者さんを自分の子どもだと思って、検査方法や診断方法を、オーダーメイドに変えていく必要があると考えています。特に、小さなお子さんは、自分で上手に症状を伝えることができません。親御さんに対する問診を丁寧に行うことで、適切な診断につなげます。注射や鼻の検査などは怖がるお子さんも多いですよね。例えば、ボールペンを注射に見立てて「こうすればあまり痛くないからね、すぐに終わるからね」など、たとえすべてを理解できなくてもお子さん本人に丁寧に説明するようにしています。
丁寧な問診と説明を大切になさっているのですね。
そうですね。親御さんやお子さん本人の目を見てお話しすること、検査の所見は異常がなくても流さずに伝えることを心がけています。「喉はきれいな状態ですね」「心臓の音は問題ありませんよ」など、医師から一言添えることで安心なさるのではないでしょうか。また、口頭でお伝えしたことは忘れてしまうこともありますので、すべての疾患ではないですが、プリントを自作して参考資料としてお渡ししています。
スタッフの対応が良かったという声をかけられる機会も多いそうですね。
患者さんや親御さんの不安をくみ取り、親身に対応できるスタッフばかりでありがたいですね。人員に余裕がないと、院内の雰囲気もギスギスしがちですので、スタッフが心にゆとりを持って働ける人員配置を心がけています。クリニックの成り立ちから、小児科の経験が長い看護師、内科を主に担当してきた看護師が、それぞれ在籍していますので、互いの診療科について学ぶ機会も設けていきたいです。医師、看護師が一体となり、患者さんをさらに手厚くサポートできる体制を整えていきたいと考えています。
最後に、ドクターズファイルの読者へメッセージをお願いします。
当院は、児童館のように入りやすい、ハードルの高くないクリニックをめざしています。お父さんお母さんが安心して子育てできるよう、お子さんが健康に成長していけるよう尽力いたします。小さなことでもご相談ください。実際、「子どもが少食で心配」「夜あまり寝てくれない」といった、育児の悩みをお話しくださる親御さんもよくいらっしゃるんですよ。病気とは直接関係がないことでも、答えられる範囲で喜んでお答えします。一般的に小児科は診療対象が15歳までで、中学校を卒業すると一旦お別れとなります。しかし、私も内科の診療に携わるようになりましたので、高校生になっても大学生になっても大人になっても、継続的に診ていけたらと考えています。これからも地域の皆さんの健康を支えていきますので、小児科や内科の症状で気になることがありましたら、お気軽にお越しください。