詠田 真由 先生の独自取材記事
アイブイエフ詠田クリニック
(福岡市中央区/天神駅)
最終更新日:2025/01/08

福岡の都心・天神エリアの中心にあるビルの6階に居を構える「アイブイエフ詠田クリニック」。約25年にわたり不妊治療を専門に、女性のためのクリニックとして地域に貢献してきた詠田由美院長の診療に、2021年から娘である詠田真由先生が加わった。母の背中を見て育ったという真由先生は、大学病院や総合病院で不妊治療や体外受精の経験を積んできた医師。自身も長年、子宮内膜症や多嚢胞性卵巣症候群などの婦人科疾患に悩まされてきた経験があることから、患者に寄り添う診療を大切にしている。「いつも元気な先生と言われます」と笑顔で話す真由先生。持ち前の明るさで、患者に慕われていることがうかがえる。クリニックの特徴や日々の診療で心がけていることなどを詳しく聞いた。
(取材日2024年11月27日)
母の背中を追い、患者に寄り添う医師をめざす
こちらはお母さまが開業されたと伺いました。明るくてきれいなクリニックですね。

1999年に母が開業し、2004年にこちらのビルに移転しました。最近はおしゃれできれいなクリニックも増えてきましたが、当時としては画期的なものだったようです。当院は不妊治療を専門とするクリニックで、ホルモン療法や人工授精などの一般不妊治療から、体外受精や顕微授精などの高度生殖補助医療まで幅広く対応し、品質にこだわった医療を提供しています。院長には女性ならではのきめこまやかな配慮があり、それがクリニック全体に浸透していますね。2022年から体外受精や顕微授精を含む基本的な不妊治療が保険適用となり、治療へのハードルが低くなったことから、治療を望む患者さんが増えてきました。どなたも安心して、満足な結果を得られるようサポートしていきたいと考えています。
先生はずっと医師をめざされていたのですか。
実は、最初は医師になるつもりはありませんでした。うちは祖父の代から医師の家系で、両親とも医師という環境に生まれたのですが、私はあまり勉強が好きではなく、自分にはとても無理だと思っていたんです。物作りに興味があったので、工学を学べる大学へ進学しました。転機となったのは、祖父が病気で倒れた時のこと。祖父は医師ですから自分の病気についてよく理解していて、両親もより詳しく理解していて、それなのに私だけが何もわからない状態でした。もし自分の親が病気になった時に、また同じような気持ちになりたくないという思いから、一念発起して医学部に入り直すことを決めたのです。医学部を卒業後は、いずれ当院を継ぐことを考えて、大学病院や総合病院の産婦人科で経験を積み、2021年からこちらに加わりました。
先生ご自身も、婦人科系のトラブルを抱えてきたそうですね。

10代の頃から月経過多で経血の量が多く、寝具や衣服を汚すこともしばしばで、貧血もひどかったんです。母に相談して受診したところ、多嚢胞性卵巣症候群、子宮腺筋症、子宮内膜症、両側の卵巣腫瘍など、複数の疾患を指摘されました。当時は未婚でしたが、子どもを持てないのではないかと将来に不安を感じたことを覚えています。幸いなことに今は病状が落ち着き、2人の子どもを授かることもできました。同じように病気を抱える患者さんの気持ちはよくわかります。薬を飲み続けることも大変です。自身の経験を生かして患者さんに寄り添い、少しでも不安を取り除けるよう、サポートしていきたいと考えています。
頑張る女性はもっと欲張りになっていい
クリニックのコンセプトと先生の治療方針を教えてください。

安心感を与えられる診療スペースと確かな技術を提供して、母になりゆく女性を支えていきたいという院長の思いが、当院の診療の土台です。ただ妊娠させて卒業というのでなく、より安全な出産や2人目につなげていくことを大事にしています。今は女性が働くのは当たり前の時代です。昔は子どもを産むことを選んだら仕事を諦めなくてはならないという風潮でしたが、女性はもっと欲張りになっていい、仕事も結婚も出産も育児も全部かなえてほしいと思っています。患者さんが最短ルートで妊娠・出産できるように、治療の道筋を立てることは、私たちの重要な役割です。また、仕事をしながらでも治療を進めやすいよう、ご都合に合わせて治療スケジュールを立てるなど、柔軟に対応しています。
具体的にはどのような治療をされているのですか?
まず検査をして、妊娠しにくい原因を究明することから始めます。不妊治療を行う上で、原因を特定することはとても大切です。検査をして不妊の原因がわかった場合は、その原因や女性の年齢に応じて具体的な治療計画を立てます。不妊治療にはステップがあり、適切なタイミングで治療を切り替えてくことが重要です。一定期間の治療で妊娠しない場合は、漫然と同じ治療を続けるのではなく、ステップアップを提案します。多くの治療実績をもとに、妊娠への近道となるような提案をしていますが、一方的に治療方法を押しつけるようなことはありません。決めるのはあくまで患者さんご夫婦です。お二人でよく相談して、ご自分たちに合った治療を選択していただきたいと思います。
先生が患者さんと接する際に大切にされていることを教えてください。

不妊治療を行っても、ご夫婦の望む結果にならないことも少なくありません。どんな結果であっても、最終的に満足してクリニックを卒業できるようにサポートしていきたい。そのためには、患者さんが納得した上で治療を進めていくことが大切だと考えています。不妊治療に関する説明は情報量が多く、内容も複雑です。治療がなかなかうまくいかないときは、なおさら話の内容が頭に入らないでしょう。そこで、こちらが言いたいことを一気に話すのではなく、患者さんの反応を見ながら適切な間を置いて、言葉を一つ一つ選びながら、患者さんが腑に落ちる説明を重視しています。また、婦人科の内診中は、患者さんが医師と顔を合わせない状態になりますから、安心感を抱いてもらえるよう、こまめな声かけを意識しています。
将来の妊娠・出産に備えて、若い世代から健康づくりを
複数の医師がいらっしゃいますね。

現在は常勤の医師は女性4人、非常勤の医師は男性2人の体制で日々の診療を行っています。当院はチーム制で治療を行っており、担当医制ではありませんが、ご希望を言っていただくことは可能です。複数の医師から多面的にいろいろな角度から意見が聞けるのは、患者さんにとってメリットが大きいのではないかと思います。みんな穏やかで優しく、チームワークはいいですね。毎週チームでミーティングを行い、しっかり情報共有ができています。また、スタッフが診察室を行き来できる裏動線が確保されており、診察中にわからないことがあってもその場ですぐに相談・解決できる体制が整っています。先生たちの個性はさまざまですが、私は前向きな性格なので、後ろを向くような話はしないです。患者さんとお話しする時も明るく元気づけるように心がけています。
今後の目標や力を入れたいことなど教えてください。
不妊治療は日進月歩で進化を続けています。先進医療も増えており、模索の日々です。データの収集・分析を繰り返し行い、少しでも妊娠率を向上できるよう努めていきたいと考えています。また、最近はプレコンセプションケアという言葉が聞かれるようになりました。プレコンセプションケアとは、妊娠前の若い時期から性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、健康管理を行うよう促すことをいいます。日本ではまだまだ性教育が進んでおらず、十分な知識を得る機会がないまま妊娠し、中絶をせざるを得なくなった10代の女性がいます。正しい知識をもとに、自分の健康を自分で守る力をつけてほしいですね。最近は母校で性教育の講演活動を行っているのですが、このような取り組みをもっと増やしていけたらと思っています。
妊娠を望む方へメッセージをお願いします。

「いつかは子どもを」と思っていても、なかなか踏み切れないと悩んでいる働く女性も多いのではないでしょうか。しかし残念ながら、妊娠・出産には、タイムリミットがあります。先延ばしにした結果、いざ妊娠を希望した時になかなか子どもができないというケースも珍しくありません。不妊治療はできるだけ早く始めることが妊娠への近道の一つです。ご興味のある方はぜひご相談ください。今すぐに妊娠を考えていなくても、定期的に体をメンテナンスすることは大切なことです。望んだ時にスムーズに妊娠できるよう、日頃から健康管理に取り組みましょう。