出産の選択肢に「安心」を添えるため
無痛分娩を支える管理体制
嘉村産婦人科医院
(福岡市博多区/南福岡駅)
最終更新日:2025/09/05


- 自由診療
この10年ほどで、母体の負担を軽減するための選択肢の一つとして浸透しつつある無痛分娩。陣痛の痛みを和らげる無痛分娩のメリットは、心身に余裕を持って赤ちゃんを迎えることや産後に早めの回復が望める点だ。現在は希望する妊婦の増加に合わせて無痛分娩の体制を整える医療機関も増えており、福岡市博多区で長年地域に根差した診療を行っている「嘉村産婦人科医院」もその一つ。同院では、安全面を重視しリスクへの備えや管理を徹底した環境で無痛分娩を行っているという。今回は、副院長の嘉村駿佑先生に、無痛分娩を検討する人に知っておいてほしい基礎知識を聞いた。
(取材日2025年7月30日)
目次
全症例を振り返りプロトコルの確認を徹底することで、安全面に配慮した無痛分娩を提供
- Q無痛分娩とは、どのようなものですか?
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A
▲定期的に無痛分娩教室を開催し、妊婦の不安軽減につなげている
無痛分娩では、陣痛の痛みを和らげるために硬膜外麻酔を用います。背中から麻酔薬を注入し、子宮や骨盤の痛みを伝える神経のブロックを図ることで、痛みの信号が脳へ届かないように導きます。硬膜外麻酔は、おなかの張りや骨盤の痛みを「生理痛程度」や「圧迫感がある程度」にまで抑えることが目標です。痛みの感じ方には個人差がありますが、当院の無痛分娩は「携帯電話を操作できる程度の痛み」にコントロールします。分娩後2時間ほどで自然に作用が切れていきます。痛みが少ないと必要以上の力が入りにくいことから、産後の早い回復も期待できます。
- Q無痛分娩は誰でも希望できるのでしょうか?
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A
▲無痛分娩が適さない人もいるので医師の判断が必要
無痛分娩を検討する方は増えてきましたが、すべての妊婦さんに適しているわけではありません。安全を最優先に考え、妊娠中の健康状態によってはお受けできない場合もあります。例えば、妊娠中の体重増加が著しい方や母体の体格に対して赤ちゃんが大きい方は、分娩の経過が滞りやすくなる可能性があるため、慎重な判断が必要です。ご希望を伺った上で医師が適応を見極め、自然分娩への切り替えや、必要に応じて総合病院へのご紹介なども含め、個別にご案内します。まずは健診の際にご希望をお伝えください。
- Q無痛分娩のリスクについても気になります。
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A
▲穏やかな入院生活が送れるよう、環境づくりを徹底している
一般的に、無痛分娩は自然分娩に比べて吸引分娩になる可能性が高いと言われています。これは麻酔の作用で陣痛自体が弱くなったり、最後にいきむ力が弱くなったりするためです。その他、ごくまれに血圧の低下や発熱が見られることもありますが、いずれも事前にリスクを説明し、徹底した体制で管理を行っています。また、麻酔の作用で足に力が入りにくくなるため、分娩終了まではベッド上で過ごす必要があります。誤嚥を防ぐために飲食は控えていただきますが、ゼリーなどの軽食をご用意していますよ。リスクについて知っておくことは大切ですが、専門的な知識と徹底した管理のもとで行える環境があれば、お勧めしたい分娩方法の一つです。
- Q無痛分娩を希望する場合、どのような流れになりますか?
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A
▲院内のレストランでは、季節のイベント開催も
無痛分娩をご検討中の方には、妊娠30週頃までに当院で月2回開催している「無痛分娩教室」へ参加していただきます。無痛分娩の基礎知識や安全管理について、スライドを使ってご説明します。パートナーの方の同席も可能ですよ。教室では、吸引分娩の割合やまれな合併症など、不安に思いやすい疑問にも丁寧にお答えしています。説明を聞いた上で無痛分娩を希望する方は、スタッフまたは医師にお伝えくださいね。妊娠34週頃に同意書をお渡ししています。当院では、初産婦の方は自然な陣痛を待ってから行う「オンデマンド無痛分娩」、経産婦の方は分娩日を計画的に決めて行う「計画無痛分娩」をお勧めするケースが多いです。
- Q無痛分娩の管理体制も徹底されているそうですね。
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A
▲スタッフ一丸となって、安全・安心な分娩をサポート
当院では、患者さんの安心・安全を第一に考え、無痛分娩の管理体制の整備にも力を入れています。すべての無痛分娩症例を対象に、月に1度スタッフ全員で振り返りを行い、分娩の経過や麻酔の使用状況を共有しています。新しいスタッフが加わった際にも、プロトコルどおりに対応できているかを確認し、全体の質を保つための体制を整えています。また、実際の分娩経過を振り返ることで、説明内容や対応方法の改善にもつなげています。こうした取り組みを重ねることで、初めての方でも安心して臨める環境づくりをめざしています。どんな小さな不安でも、遠慮なくご相談ください。