早い回復が望める内視鏡手術「UBE」
背骨治療の新たな選択肢
福岡脊椎クリニック
(福岡市博多区/南福岡駅)
最終更新日:2025/09/11


- 保険診療
腰痛や下肢のしびれの原因となる脊椎疾患の手術は、近年低侵襲へと進化している。従来の開放手術は大きく切開しなくてはならず、筋肉剥離も必要で侵襲が大きかったが、近頃主流の内視鏡手術は、単孔式から2孔式のUBE(2孔式内視鏡下手術)へ発展。内視鏡と器具の挿入口を分け、生理食塩水の還流下で広い視野と高い操作性を確保し、出血や組織損傷を抑えられるのが特徴の手術方式だ。隈元真志先生が院長を務める「福岡脊椎クリニック」では、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などに対し適応を見極め導入している。「薬やリハビリテーションなどの保存療法が第一で、手術はあくまでその次の手段ですが、負担の少ない選択肢があることで、患者さんの生活に合わせた治療をご提案できます」と語る隈元院長に、手術について聞いた。
(取材日2025年8月20日)
目次
早い回復が望める内視鏡による低侵襲手術「UBE」。働き盛り世代から高齢者まで広がる負担の少ない選択肢
- QUBE(2孔式内視鏡下手術)とはどのような手術ですか?
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A
▲手術経験豊富な医師が対応
背骨の手術は、もともとは大きく切開して筋肉を骨から剥がす開放手術が中心でした。そこから進化して内視鏡手術が登場し、まずは単孔式といって1本の筒を通してカメラと器具を同時に扱う方法が主流となりました。ただ、この方法は筒の中でしか操作できず、視野や自由度に限界がありました。そこで生まれたのが2孔式のUBEです。カメラを入れる孔と器具を入れる孔を分けることで、より広い視野と高い操作性を得られるのが特徴です。さらに手術部位には生理食塩水を流しながら進めるため、出血を抑えつつ治療が行えます。従来では対応が難しかった症例にも柔軟な対応ができるようになり、内視鏡手術の可能性を大きく広げた方法といえます。
- Qどんな人がUBEでの内視鏡手術の対象になりますか?
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A
▲患者のライフスタイルを考慮し、一人ひとりに合った治療法を提案
腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などが対象となる代表的な疾患です。基本的には全身麻酔下で行うため、心臓や肺に大きな持病がなければ幅広い年齢層の方に対応できます。切開を小さくし、術中に生理食塩水を流しながら進めることで、感染リスクに配慮しているのも特徴です。糖尿病や高齢の方にも対応可能なのは、この手術の大きな強みだと思います。ただしすべての症例に万能ではなく、筋肉の厚い方や骨の変形が強い方では工夫が必要になることも。私たちはまず薬やリハビリ、ブロック注射などの保存治療を優先し、どうしても痛みが強く生活や仕事に支障が出るときに手術を検討します。患者さんの生活環境や仕事の状況も踏まえて考えます。
- QUBEでの内視鏡手術のメリットについて教えてください。
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A
▲体への負担が少ないUBEについて話す隈元院長
一番のメリットは体への負担が少ないことです。傷は5ミリ程度の小さな孔が2つだけで済み、筋肉を大きく剥がさずに済むため出血も少なく、術後の痛みや腫れの軽減が望めます。そのためこれまでの手術では必要だった術後の尿道カテーテルが不要となるケースもあり、翌日から歩ける方も多いです。入院期間は個人差がありますが、平均で1週間ほど、早ければ3日で退院できるケースもあります。早い社会復帰が望めるのは、働き盛り世代にとって大きな利点です。さらに、体にできるだけ傷をつけないことは、今後の加齢や新たな背骨の病気に備える上でも重要。UBEは最小限の侵襲で行うため、長い目で見ても患者さんの体を守ることにつながります。
- Q診察から手術までの流れを教えてください。
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A
▲先進の機器をそろえた、清潔感あふれる手術室
まずは外来で症状をお伺いし、MRIやCTなどの検査を行います。手術が必要と判断された場合は、全身麻酔に耐えられるかどうかを確認するための検査を受けていただきます。持病のない方であれば1日で済みますし、糖尿病や心臓の病気などがある場合は、さらに詳しい評価を行います。その後、手術日を決定し入院。手術は全身麻酔下で行い、術後はその日のうちに痛みに応じて離床を始めます。従来の手術と異なり、翌日から歩行練習が可能なケースが多いため、早期回復につながります。診察から手術、そしてリハビリまでを一貫して同じ施設で行えるのは、当院ならではの強みです。
- Q手術後のリハビリはどのように進めていくのでしょうか。
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A
▲広々としたリハビリテーション室。専門性の高いリハビリを提供
手術翌日から1日3回のリハビリを始めます。患者さんが苦労されている点に応じて、筋力強化や歩行練習、階段の昇降、仕事に必要な姿勢の確認など、個別にプログラムを組んでいきます。入院中のリハビリはもちろん、退院後も1回40分以上の通院リハビリが体制を整えています。実は手術そのものよりも、その後のリハビリが回復を左右するといっても過言ではありません。高齢者では全身の体力を取り戻すために3ヵ月ほどかけるケースもありますし、若年世代では早い場合もあります。患者さん一人ひとりの生活環境や目標に合わせて支援できるのは、私たちが外来からリハビリまで一貫して関われるクリニックだからこそだと思います。