山下 司 院長の独自取材記事
山下司内科クリニック
(福岡市博多区/祇園駅)
最終更新日:2024/11/13
祇園駅、博多駅から徒歩圏内にある「山下司内科クリニック」。オフィス街にあって非常に通いやすい点が魅力のクリニックで、1998年に山下司院長が開業。専門である糖尿病治療を中心に、地域住民やオフィスワーカーが気軽に相談できる場所として長く愛されている。「糖尿病治療は長く付き合っていくもので、すぐに結果が出ないことも。その中で患者さんがご自身で気づきを得て、自発的に動いてくれるように支えていく。それが当院のスタンスなのだと思いますよ」とおおらかな雰囲気で患者の背中を押し、「糖尿病をマイナスに考えないように」と導いていく院長に、日々の診療で心がけていることや、患者の負担を減らすスマホアプリなどについて詳しく話を聞いた。
(取材日2024年9月25日)
オフィス街にある「いつでも相談できるかかりつけ医」
とてもアクセスのいい場所にありますね。
祇園駅の5番出口からすぐ、博多駅からでも徒歩圏内ですから、いろんな方がいらっしゃいます。周りがオフィス街なのでお近くにお勤めの方はもちろん、出張などで福岡にいらっしゃった方で急に体調を崩された方、もともと当院に通っていて定年退職後も当院に通い続けてくださっている方など、本当にさまざまです。主訴も同様に幅広いですね。風邪や急な腹痛、頭痛などのちょっとした体調不良から、会社の健康診断、その健康診断の結果を踏まえた上でのご相談、そして私が専門としている糖尿病治療など、こちらも挙げるときりがありませんが、このように内科を中心として地域の皆さんの最初の相談窓口となるのが開業医の務めだと考えています。
先生のご専門は糖尿病治療と伺いました。
糖尿病は生活習慣病で、食事を多く取る人がなりやすい病気というイメージがあるかもしれませんが、それは氷山の一角にすぎません。糖尿病は全身の血管が悪くなるものであり、そこから心筋梗塞・心不全・心房細動などの心疾患、神経障害・脳梗塞などの脳神経疾患、腎臓病、糖尿病による網膜症、緑内障、白内障、そして骨粗しょう症・認知症などまで引き起こしてしまう、いわゆる全身疾患なのです。そしてそれこそが私が興味を持ったきっかけでもあります。専門は糖尿病治療ではありますが、内科的な幅広いご相談に対応し、当院で治療ができるのか、治療を継続する必要がないのか、それとも専門的な検査ができる病院に紹介するのか。その道筋をつけるのが当院の大きな役割なのだと考えています。
「オフィス街にあるよろず健康相談所」といった役割もあるんですね。
当院は糖尿病治療の方も含めて、予約制ではありません。お仕事中に急に体調が悪くなることもあるでしょうし、糖尿病治療で定期的に通う方もお忙しい方が多いです。「そろそろ1ヵ月たつし、今日の昼休みなら行けそうだ」と急に時間が取れた時でもすぐに通える、そういう環境をめざしています。糖尿病だと「食事を取ってこないように」などと指示がある場合も多いかと思いますが、当院では食事を取っているかどうかも問いません。慢性疾患の場合、まずは通院してもらうことが大事ですから。それに伴って近年、SNSを使ったお知らせも始めました。せっかく行ったのにクリニックが閉まっていたら、私ならがっかりしてしまいます。そこで臨時休診のお知らせや、インフルエンザワクチン接種開始のお知らせなどを配信するようにしました。
糖尿病であることをマイナスに捉えすぎない
治療の際に心がけていることは何でしょうか。
患者さんの訴えをよく聞き、こちらから一方通行な意見を言うのではなく、その方の思いに応えられるようにすることです。ごく当たり前のことですが、人と人とのやりとりというのはそういうものですよね。仕事の合間で急いでいるからまずは症状を抑えたいとか、ずっと気になっている症状があるから検査をしたいとか、それぞれのニーズをしっかりと把握することが大切だと考えています。加えて糖尿病治療の場合は、治療自体がスティグマとならぬよう意識をすることが大切です。いまだに糖尿病になったら日頃の生活習慣が悪いからだと決めつけられる場合も多く、実際は標準体型で食事もそう多くない方でも、遺伝的要素によって糖尿病になるケースも少なくはありません。患者さんが「自分は糖尿病だから駄目なんだ」と傷つくことがないようにしなければならないのです。強い治療が必要な方が差別的な環境におかれないよう配慮することも大切です。
患者さんは糖尿病についてどう考えればいいのでしょうか?
「糖尿病と付き合いながら生活する」という意識を持つことでしょう。過去にはさまざまな感染症や遺伝的疾患などによる医療スティグマもありましたし、現在も存在していると思います。そうならぬよう、糖尿病はその人の「駄目な特徴」ではない、ということを理解できるよう、正しい知識を得ていただくという点も治療においては非常に大切なことだと考えています。近年ではむしろ糖尿病治療をきちんと受けている方のほうが長生きにつながるというデータも出ているようです。日々運動や食事に気をつけるなど健康に意識を向け、ご自分の体の管理ができているからこそ、そういう特徴が出てくるのでしょうね。
糖尿病だから駄目と決めつけず、一緒に生きていく意識を持ってもらうのですね。
あくまでその方の特徴や特性の一つであると考え、長い目で付き合っていくことが大切です。だから私も治療中はあまり深刻になりすぎないようにと心がけていますが、逆に患者さんが軽く考えすぎていれば、「もっと気をつけないと将来的に心疾患、脳疾患の恐れもありますよ」としっかりお伝えします。一方で「ちょっと糖質を減らしましょう」とアドバイスするだけで一切糖質を断ってしまうという極端な方もおられます。大事なのはやはり、こちらもごく当たり前のことではありますが、患者さんお一人お一人に合った、バランスを崩さないような治療を継続しやすいアドバイスを丁寧に行っていきたいと思っています。
患者と一緒に考え、その人らしいやり方を見つけていく
具体的にどんなアドバイスをされるのでしょうか?
学生時代を思い返してみてくださるとわかりやすいと思いますが、「勉強をしなさい」と言われても長続きしませんよね。自分で「この学校に行きたい」「この分野を勉強したい」と思うからこそ続くものです。治療も同じで、患者さん自身がご自分で行動しなければ結果に結びつきません。そのためには患者さん自身が「気づき」を得ることが重要です。例えば高血圧を指摘され、毎日血圧手帳を記録する中で、「今朝は血圧が高い」と気づいたら、その原因となりそうなこと、例えば前日お酒を多めに飲んだとか、心当たりを考えてみる。そうすると「あの飲み方が悪かったんだ」とわかってそれを控えるようになる。またそうする中でジムやヨガに通ってみたいと思われたら、「それは良いことですね」と思いっきり背中を押してあげたいと考えています。
スマホアプリなどのデジタル技術も活用されているとか。
2週間腕に装着し続ける連続血糖測定器があり、血糖値が一定以上下がったり、あるいは上がったりするとアプリを通じてスマホに通知が来るようになっています。そうすると「さっきの食事が原因だ」と気づきやすいですよね。私もたまに装着しますが通知が来るとビクッとします(笑)。健康診断の結果は専用のスマホアプリにお届けします。忙しい方でも検査結果を確認しやすいですし、ほかの医療機関に行った場合でもすぐに見せられますよね。またシールのようなパッチ型の心電図も導入しています。シャワーなどはもちろん可能で、10日間の結果を得られます。来院せずに患者さんが郵送で対応することで、来院の手間も省けるんです。睡眠時無呼吸症候群の検査も同様のものがあり、いかに患者さんの負担や手間を減らせるかという点も当院が取り組んでいる点ですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
糖尿病治療はもちろんですが、皆さんの身近な存在である内科のクリニックとして、日々のちょっとしたご相談や、帯状疱疹ワクチン、肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチン、新型コロナワクチン、子宮頸がんワクチンなどの各種ワクチン接種のご相談などにも対応しています。自治体によっては帯状疱疹ワクチンの補助が出ているので、そういった情報を知りたい方もぜひお気軽にご相談にいらしてください。それに当院のスタッフは明るく和やかで、そして採血がとても上手です。健康診断や検査の際も安心してほしいですね。糖尿病や健康のことなど、私たちと一緒に考えて、より良い道を探していきましょう。