矢野 秀明 院長の独自取材記事
矢野医院
(福岡市博多区/雑餉隈駅)
最終更新日:2026/06/08
1995年に西鉄天神大牟田線・雑餉隈駅前に開業して以来、内科・リハビリテーション科を掲げ、地域に寄り添ってきた「矢野医院」。2026年5月には、土地開発による立ち退き要請に伴い、線路を挟んだ反対側に移転。約4ヵ月の休診を経ての再開となったが、診療スタイルや大切にしている姿勢はこれまでと変わらない。院長を務める矢野秀明先生のモットーは「運動と食事こそが良薬」。合気道、マラソン、水泳、登山が趣味という、根っからのスポーツマンだ。その語り口からは、自身が人生を心底楽しんでいる様子が伝わってくる。今回は移転リニューアルを機に新しくなった同院の様子や、再開への思い、変わらず大切にしている診療への考えについて語ってもらった。
(取材日2026年5月30日)
近隣への移転を経て診療を再開、設備もリニューアル
このたびクリニックを移転されたそうですね。移転の経緯を教えてください。

以前の場所が土地開発の対象となり、立ち退くことになったのが移転のきっかけです。当初の予定から3年ほど猶予を頂けたので、その間も同じ場所で診療を続けてきました。そして期間が来たタイミングで、ちょうど駅を挟んだ反対側の土地に空きが出たため、そちらへ移ることになったのです。移転先を探すにあたっては、この地で30年診療を続けてきたので、これまで通ってくださっていた方が不便を感じないようにということを一番に考えました。博多にも近い割に落ち着いた環境であることも、この地域を選んでいる理由ですね。
新しいクリニックの内装や設備で、変わった点はありますか?
基本的には以前のものをそのまま引き継いでいますが、床のタイルカーペットは患者さんと一緒に貼りました。引っ越しそのものも患者さんと一緒に行ったので、かえって良い思い出になりましたね。広さは以前の半分ほどになったため、コンパクトにまとめることを心がけましたが、ほぼ同じ診療ができる環境を整えています。リハビリテーション機器については、移転をきっかけにレーザー治療器をリニューアルしました。筋肉痛や捻挫、寝違え(急性疼痛性頸部拘縮)など、関節周辺の痛みの軽減に用いています。広い範囲の痛みにはキセノン光線治療器を、と使い分けながら、痛みへの対応は変わらず行っています。
約4ヵ月の休診を経て再開されましたが、患者さんの反応はいかがでしたか?

来てくださった方からは「また開けてくれてうれしい」「再開してくれてありがとう」と声をかけていただき、ありがたく思っています。長く通ってくださっていた方々の思いにふれ、私も改めて再開して良かったと実感しているところです。一方で、当院が4ヵ月休診していた間に他の医療機関に通われ、移転したことをご存じない方もいらっしゃるかもしれません。ホームページなどでお知らせはしていますが、新しい場所で再開したことが、これから少しずつ地域の皆さんに伝わっていけばと思っています。今後も自然体で、患者さん一人ひとりを丁寧に診ていく。その姿勢はこれまでと変わりません。
東洋医学と西洋医学を組み合わせ、幅広い悩みに対応
医師をめざされたきっかけをお聞かせください。

福岡で生まれ育ち、いずれは福岡で医療に携わりたいと考えていたので、九州大学医学部に進学しました。卒業後は、幅広く医学を学ぶため麻酔・蘇生科に入局したのです。麻酔科は野球でいうキャッチャーのような役割で、全体を俯瞰しながら各ポジションをまとめる、そのような点に魅力を感じました。大学時代にはアルバイトで鍼師の助手を経験し、東洋医学に関心を持つようになりました。後日、そこで知り合った方から「先生に診てほしいので、通いやすい場所で開業してほしい」という言葉をいただいたのです。その言葉に背中を押され、この地での開業を決意しました。今も心に残っている思い出です。患者さんの後押しがきっかけで始まったクリニックですから、今回の移転に関しても、その思いに応えなければという気持ちもあり、場所選びを重視しました。
患者層や多い主訴について教えてください。
近隣や沿線から来院される患者さんが多く、女性が7割ほどを占めています。年齢層は中高年以上が中心で、主訴としては更年期障害に関する治療がおよそ3分の1、腰痛・肩凝り・膝の痛みが3分の1、残りが糖尿病・高血圧症・風邪といった一般的な内科疾患です。更年期障害に対してはプラセンタ療法を行っていて、肝機能障害の方に用いることもあります。また、変形性膝関節症や肩関節周囲炎などにはヒアルロン酸注入のご希望も多くいただきます。明らかな病名がつかない不調や風邪などの場合は、症状に合わせて漢方薬を組み合わせて処方しています。
スタッフとの連携で大切にされていることは何でしょうか?

日々の診療は、私のほかに看護師と受付の体制で行っています。持ち場に限らずオールラウンドで対応できるように動いてもらっていて、皆が優秀で気持ちの良い人ばかりなのです。私から特に細かく指導することはありませんが、一つ共通認識にしているのは「患者さんのためにベストを尽くす」ということ。声がけも自然体で、開業してからずっと困ったことがなく、本当に恵まれていると感じています。移転に際しても、床貼りや引っ越しを一緒に行うなど、患者さんやスタッフに支えられました。こうした温かいつながりこそが、町のかかりつけ医を続けてこられた力になっていると思います。
大事なのは運動、食事、そして生きがいを持つこと
診療をする上で大切にしていることはありますか?

症状に応じてお薬を処方したりを行ったりしていますが、どのような薬も適切な食事と運動にはかなわないと考えています。血流を促し酸素を全身に回すには、体を動かすことが適しています。程良い筋肉痛も成長ホルモンの分泌を促しますし、血流が良くなれば肌にも良いかもしれません。中でも一番のお勧めは登山です。有酸素運動でありながら筋力トレーニングにもなり、森林浴もできて、無料で楽しめます。スクワットを1時間続けるのは大変ですが、登山なら頂上まで行ってみたいという気持ちで、1時間があっという間ですよ。1週間から2週間に1回ほど続けることをお勧めします。季節の移ろいを感じ、すれ違う人とあいさつを交わす交流も魅力です。初心者の方は低い山から徐々に慣らしてください。
食事についてはどのようなアドバイスをされていますか?
バランスの取れた腹八分目の食事をお勧めしています。必要最小限のカロリーで過ごすほうが、過多気味よりも元気で長生きするという実験結果もあるようです。炭水化物は通常の半量を目安にすると良いでしょう。ただし極端な制限は、血糖値が下がりすぎて体が脂肪や糖分をため込もうとし、リバウンドも起きやすいので注意が必要です。特に脳は基本的にグルコースを栄養にしているので、炭水化物は欠かせません。あとは豆類もポイントで、豆腐や納豆に含まれる大豆たんぱく質は筋肉を保持するために重要な栄養素です。
読者へメッセージをお願いします。

これからも自然体で、西洋医学と東洋医学のそれぞれの良いところを組み合わせた治療を続けていきたいと思います。漢方薬は自然の薬草などから生まれたもので、人の力で進む自転車のようなものです。一方、西洋薬はガソリンで走る車のように、人力では難しいことを成し遂げるためのものです。状況に合わせて両方を使い分けながら、副作用に配慮した効率的な治療をめざしています。なかなか治らない不調のある方もいらっしゃいますが、西洋医学と東洋医学、それぞれの特長を生かしながら、その方に合った方法を一緒に考えていきたいですね。また、一番大切なのは生きがいを持つこと。ご自身が人生を楽しめると、周りの人も楽しくなります。気になる不調があれば、諦めずにぜひ一度ご来院ください。

