酒見 亮介 副院長の独自取材記事
医療法人 酒見内科胃腸科医院 さけみ内科・内視鏡IBDクリニック
(福岡市東区/香椎花園前駅)
最終更新日:2026/02/05
1988年から東区香住ヶ丘で地域医療を担う「さけみ内科・内視鏡IBDクリニック」。父が築いた基盤を継承した酒見亮介副院長は「医療は病院だけでは完結できない」との信念のもと、地域のかかりつけ医として診療にあたる。久留米大学医学部を卒業後、炎症性腸疾患(IBD)の患者との出会いをきっかけにIBD専門の道へ進み、10年以上にわたりIBD治療に情熱を注いできた。時折見せる笑顔が印象的な酒見副院長は「患者さんの今も大事ですが、10年後、20年後を見据えた治療が必要」と語る。オンライン診療やAIシステムなど先進技術の導入には「自分が患者さんだったら使いたい」という視点を大切に、時代に合った医療の提供を追求する。そんな酒見副院長に、地域医療と専門性の両立、そして愛され続けるクリニックへの想いを聞いた。
(取材日2025年10月28日)
地域の窓口として専門性も兼ね備えた診療を
お父さまが開業されたクリニックを継承し、どのような診療を心がけられていますか?

父が1988年に開業したこのクリニックで、現在は副院長として診療にあたっています。実は病院勤務も継続していて両方で医療を提供しているんです。「医療は病院だけでは完結できない」というのが私の考えで基本的にクリニックでできることはすべて行えるよう努め、集中治療が必要な患者さんは病院にご紹介する。まさに初めの選択をする場所としての役割を担っていると思います。内科と標榜していますが、実際は皮膚の問題や整形外科的な問題など、さまざまな相談を受けています。足が痛い、腰が痛いという方も来られますし、必要に応じて適切な専門医療機関につなぐことも重要な仕事です。地域住民にとって気軽に立ち寄れる窓口でありながら、自分の専門分野については自院で完結できる医療を提供する、その両立を大切にしています。
IBDを専門にされたきっかけを教えてください。
10年以上前、病院勤務時代に若いIBD患者さんを診たことがきっかけです。若い方も多い病気であるにもかかわらず、当時は適切な治療法がわからず、本当にその患者さんをうまく治療できたか自信が持てませんでした。IBDは一生病気とともに歩む疾患であり、長期的な視野での治療が不可欠です。しかし当時の自分にはその視点が欠けていました。そこで「若い方々が社会でしっかりと活躍できるような医療を提供したい」と考え、深く学ぶことを決意しIBD専門施設へ国内留学をしました。その後、病院では看護師、栄養士、ソーシャルワーカーなどを巻き込んだサポートチームを立ち上げました。患者さんが学校や仕事でうまくいかない原因が病気にあるのか、周囲の理解不足にあるのかなどを、チーム全体で考える体制を整えたのです。現在も「患者さんの今のみならず10年後、20年後を見据えた治療」を心がけています。
地域医療における貴院の役割をどのようにお考えですか?

地域医療において、われわれは住民の皆さんにとって「何でも相談できる窓口」でありたいと思っています。医療の入り口として、どの診療科にご案内するかを判断する重要な立ち位置です。一方で、私の専門であるIBDについては紹介状なしでも受け入れていて、専門性に基づく医療も提供しています。待ち時間の短縮をはじめ、患者さんからのフィードバックを真摯に受け止めて改善していく。地域に根差しながら、時代に合った付加価値を提供し続けることが、これからのクリニックには必要だと考えています。
IBDと大腸がん、消化器疾患への専門的アプローチ
IBD患者さんのQOL向上にどのように取り組まれていますか?

現在、日本全国で40万人を超えるIBD患者さんがいます。下痢や血便、腹痛などが原因で、仕事や学校でのパフォーマンスが落ちてしまう方も多い病気です。私は「病気になる前の状況に戻っていただく」ことを念頭に置いて治療しています。症状を止めるよう努めることはもちろん大事ですが、患者さんのQOLの向上をめざすことがより重要です。また、周りの理解も必要でそれにより患者さんのQOLを高めることができます。がんの就労支援のように、IBDも病気を抱えながら通常の社会生活が送れる環境づくりが大切。認知度を上げることで、生活しやすい社会になることを願っています。
大腸がんの早期発見についてどのような取り組みをされていますか?
大腸がんは早期発見できれば高い治癒率が見込めるにもかかわらず、死亡率が高いのが現状です。最大の課題は検診の受診率の低さと、便潜血検査で陽性になっても内視鏡検査に進まない方が多いことです。便潜血陽性の方には、がんだけでなく前がん病変も多く見つかります。大腸がんは腺腫というポリープが徐々に大きくなってがんになることが多いので、この前がん病変の段階で切除すればがんの予防につなげられると考えています。当院では内視鏡検査のハードルを下げるため、鎮静剤を用いて眠った状態で検査を受けていただいています 。また腹部の張りを少なくするためにCO2を用いています。特にIBD患者さんは年に1回など定期的な検査が必要なので、痛い思いをして次から検査を受けなくなってしまってはいけません。検査は20分程度、ポリープ切除でも40分程度で終わります。身構えずに受けてもらえるように、説明も含めて工夫しています。
患者さん目線の診療で大切にしていることは何ですか?

「自分が逆の立場だったらどう思うか」を常に考えています。例えば待ち時間。自分だったら病院で長く待ちたくないし、時間がもったいない。だからこそ待ち時間短縮に取り組んでいます。患者さんからのご意見も非常に重要で良いご意見も厳しいご意見もすべてスタッフと共有し、次の改善に生かしています。私は医療も患者さん目線で捉えると、サービス業だと考えています。医療だから特別なことはないんです。12月には接遇マナー講師を招いて接遇の講習を行いました。細かいところに目が行き届けば、提供する医療の質も向上すると思います。患者さんに「ここに来て良かった」と思っていただけるクリニックでありたいと考えています。
デジタル技術で実現する次世代の地域医療
オンライン診療を導入されたきっかけと現状について教えてください。

新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに「これからはオンライン診療が必要だ」と考えて導入しました。でも本音をいえば「みんな忙しいから」が最大の理由です。基本的には病状が安定している方を対象にしていて、血圧が安定している方やIBD患者さんでも薬でうまくコントロールできている方にお勧めしています。診察は患者さんのスマートフォンやパソコンなどを使って行い、薬の受け取りは患者さんが希望する薬局を利用できます。そのため遠方の方でも来院いただかなくていいんです。病状が落ち着いている方であればオンライン診療を推奨しています。忙しい現代人にとって、通院時間を節約できるオンライン診療は重要なツールです。医療の付加価値を高める手段だと考えています。
AIシステムなどの新しい技術の活用についてお聞かせください。
エックス線検査でのAIシステムを導入していますがとても良い技術ですね。健康診断で見逃されているような所見も検出につなげてくれるほどです。もちろん完全に頼りきるわけではありませんが、見逃しを減らし、より良い診断をするための強力なツールになっています。今後は内視鏡検査でのAIシステム導入も検討していますし、生成AIも診療の補助に活用しています。重要なのは、これらの技術を使って患者さんに良質な医療を提供できるかどうかです。医療は日々進化しています。例えば高血圧症の治療目標値一つをとっても、ガイドラインで改訂されます。こうした変化に対応し、AIをはじめとする先進技術を積極的に取り入れながら、時代に合った診療を提供していくことがこれからの医療には不可欠だと考えています。幸い、当院のスタッフはこうした新しい取り組みに非常に協力的で、本当に心強いですね。
今後の展望と地域の方々へのメッセージをお願いします。

今後も地域住民にとって「何でも相談できる窓口」でありながら、専門性も提供できるクリニックであり続けたいと思っています。何か困ったことがあれば、気軽にご相談ください。医療は日々進化しています。先進的な情報をキャッチアップし、常に知識を深めていくことでより質の高い医療を提供したいと考えています。患者さんに信頼され、安心して通っていただけるクリニックであり続けることが私たちの使命です。スタッフ一同、これからも邁進していきます。

