荒牧 聡 院長の独自取材記事
荒牧産婦人科医院
(北九州市八幡西区/本城駅)
最終更新日:2022/05/25

「産婦人科の医師として一番幸せを感じる瞬間です」。新しい命の誕生について満面の笑みで語るのは、「荒牧産婦人科医院」の荒牧聡院長だ。日本産科婦人科学会産婦人科専門医でもある。大学病院の産婦人科や総合周産期母子医療センターで研鑽を積んだ荒牧院長は、2021年に父である前院長からクリニックを継承。診療では、患者との対話を大事にしているという。これまでのキャリアを存分に生かすため、分娩だけでなく、PMS(月経前症候群)や月経困難症などの悩みや、不正出血、おりものの異常、子宮および卵巣疾患、更年期障害など多岐にわたり診療にあたる。近年、「ここで誕生した赤ちゃんが自身の出産で来院されることが増えました」と目を細める荒牧院長に、これまでの経緯や診療内容について聞いた。
(取材日2022年4月18日)
大学病院や周産期医療専門施設での豊富な経験を糧に
まずはクリニックの歴史からお聞かせください。

1989年に父が開院したのが始まりです。当時、私は小学校3年生でした。医療が身近にある環境の中で育ちましたので、漠然とですが将来は医師になるのかなと思っていたような気がします。明確になったのは、大学への進学を考えた時ですね。父の影響が大きかったと思いますが、医師を志し産業医科大学の医学部へ進学しました。大学では友人との出会いもたくさんありましたし、大好きなバイクに乗っていろんな所へ出かけるなど、本当に充実した日々でした。卒業後の初期研修で各科を回ったのですが、最初は外科をめざしていたんです。ですが、産婦人科での研修で分娩に立ち会わせてもらったのがきっかけで気持ちが変わりました。赤ちゃんが誕生した時のお母さんの顔を見ると、感動して何とも言えない気持ちになりましてね。それで産婦人科の医師になろうと思ったのです。
お産に立ち会ったことがきっかけだったのですね。
ええ。産婦人科はお産だけではなく手術もありますので、その技術も磨くことができると思ったことから、同大学の産婦人科に入局しました。若手の頃は一通り経験させてもらえるので、がんに関する領域にも携わらせてもらい、7年目以降はお産がメインの総合周産期母子医療センターで勤務しました。出産はそれぞれ違いますので、通常の出産からハイリスク出産まで実にさまざまなお産をサポートさせていただきましたね。中には命に関わるケースも。時にかなわないこともありましたが、とにかく母子ともに救いたいという一心で他の科の先生とも連携しながら臨んでいました。
出産前から他の科とも連携体制を整え、来るべき日に備えるケースも多かったとか。

妊婦さんの状態によって、麻酔科、ICUなど各部門の先生とも相談しながら、万が一救急搬送になっても搬送中に命を落とすことのないようチーム医療で取り組んでいました。大学病院は特にそれが求められる場所ですから、対応力もずいぶんと身についたと思います。そのようなキャリアを積んで、ここに戻ってきたのが2020年。その翌年に院長を継承しました。外来は今も父とそれぞれ担当する曜日を決めて診療を行っています。親子で仕事をするとうまくいかないという声もよく耳にしますが、うちの場合は父がとても理解があり、私の意見も快く受け入れてくれるのでとても良い関係性です。父の優しさに救われています。
新しい命の誕生後は母親のメンタル面にも配慮を
診療はお産を中心に婦人科疾患まで幅広く対応されていると伺いました。

ええ、お産だけでなく、月経にまつわるお悩みから不正出血、おりものの異常、性感染症、子宮や卵巣の病気、更年期障害まで幅広く対応しています。そのため、年齢も小学校高学年から70代くらいまで、さまざまな年代の方がおみえになりますね。学生の方はPMS(月経前症候群)をはじめ、修学旅行で生理にならないようにしたいという相談で親御さんと一緒に来院されることも。お産に関しては、やはり出産される年齢も年々高くなっているように感じます。初産の年齢も上がってきていますので、不妊のご相談もありますが、当院ではタイミング指導までで、それ以降の人工授精や体外受精などの専門的な不妊治療についてはご紹介という流れになります。
多くのお産に立ち会われていますが、赤ちゃんの誕生は言葉に言い表せないほどうれしい瞬間なのでしょうね。
何回立ち会っても感動しますし、産婦人科の医師として喜びを感じる瞬間でもあります。当院では赤ちゃんが生まれてすぐにお母さんのそばに連れていき、軽く抱っこしてもらうんですね。お子さんの顔を早く見たいと思うので、即別の場所へ連れていくことはしないんですよ。もちろん赤ちゃんの体が冷えるといけないので、お顔を見てもらった後はすぐに体を拭きあげて暖かい場所へ移動しますが、お母さんが初めて赤ちゃんを見た時、言葉で言い表せないくらい良い表情をされるんです。それを目の当たりにすると、毎回「この仕事ができて幸せだな」と、実感するんですよ。その後、まだ出血の処置なども残っていますので、パッと気持ちを切り替えてお母さんの産後処置に注力しますけどね。
その感動の一方で、出産後はいわゆる「産後うつ」の方も増えているとお聞きします。

確かに増えていますね。当院には今、助産師が5人、看護師が6人いますので、まずは彼女たちがお話を聞かせてもらった上で診察を行います。私には話しにくいこともあるでしょうから、最初に同性である彼女たちにしっかりと患者さんの悩みや苦しみをすくい上げてもらいます。また、地域の保健師さんとの連携、状態によっては精神科の先生につなげることもありますし、一番大事なのはそのままにしないことなんです。実は、更年期にもうつ病が隠れていることが多いんですね。その主な原因は産後も更年期もホルモンの変化。ご自身がうつ症状に気づいていないことも多々あるため、患者さんのちょっとしたサインも私たちが見落とさないように努めることが重要だと思っています。
未来へと続く新たな命をつないでいきたい
婦人科診療に関してはいかがでしょう。

月経困難症の方が多いですね。診療の流れとしては卵巣腫瘍や子宮内膜症などがないかのチェックをした上で、患者さんの状態によって痛み止めの処方や低用量ピル、漢方薬を取り入れるなど、各アプローチで改善をめざします。40代から50代の方は更年期障害を訴えて来られる方が多く、症状はイライラする、気分の落ち込み、めまい、ホットフラッシュなどです。血液検査をしてホルモン値を確認することもあるのですが、私はご本人が困っている症状を重視しています。というのも、更年期のホルモン値というのは、波がうねるように上がったり下がったりするのが特徴のため、来院時の血液検査が基準値であっても更年期障害ではないと言いきることができないのです。まずは症状を軽減させることに取り組みます。
不正出血については早急な受診を呼びかけているそうですね。
はい。不正出血は悪性疾患の有無を調べる必要がありますので、早急に受診していただきたいです。不正出血がなくとも、定期的に子宮頸がんの検診をお勧めしています。早期発見が大事ですから、他の症状で来られた方にもお声がけしています。時間がないなど、さまざまな事情で当院での検診を希望されない場合でも、会社や自治体の検診を必ず受けてくださいといったアナウンスを実施しています。子宮頸がんで若くしてお亡くなりになられた方も見てきただけに、検診を受けることでご自身の身を守っていただきたいという想いがどうしても強くなるんです。検診で救われる命もたくさんあるということを多くの方に知っていただきたいですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

産婦人科は受診のハードルが高いと思われがちですが、最近はブライダルチェックで性感染症の確認を希望される方もいらっしゃいますし、以前に比べると通いやすくなっている印象を受けます。それだけご自身の体に関心を持っている証拠。非常に良いことだと思います。おりものの匂いやかゆみが気になるという場合は、細菌性膣炎やカンジダ症の場合もありますので、不正出血同様に早めに受診ください。また、少し離れた地域には産婦人科が少ないエリアもあるため、その方たちが受診しやすいと思えるような、より患者さんの気持ちに寄り添える環境づくりに取り組んでいきたいと思っています。近年、自分がここで生まれたからと当院での出産を希望される方も増えてきました。父が取り上げた赤ちゃん、そしてその子の出産を私が、というように、今後も未来へと続く新たな命をつないでいけたらうれしいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とは低用量ピル/3300円
アフターピル/1万2000円
ブライダルチェック/5000円~(検査内容により異なる)