岩本 英希 理事長の独自取材記事
岩本内科医院
(北九州市小倉南区/石田駅)
最終更新日:2026/05/01
1990年の開院以来、地域医療と肝臓がんに特化した診療に取り組む「岩本内科医院」。2014年に先代の故・岩本昭三氏の後を継いだ岩本英希理事長は、同院の理念である「最良の医療提供」を受け継ぎ、がんに対するカテーテル治療の質を向上させ、原発性の肝臓がんはもちろん、転移性の肝臓がん治療まで幅広く対応するようになった。そのため、患者がセカンドオピニオンを求めて来院するケースも多く、全国から相談を受け入れているという。「がんが心にまで転移してしまうと、過ごしていく時間は暗いものになってしまう。がんになったとしても心にまで入り込ませず、できる限り明るく健やかに過ごしてほしい」と話す岩本理事長に、肝臓がん治療の特徴をはじめ、地域医療に対する想いなどについて話を聞いた。
(取材日2026年4月23日)
地域医療と肝臓がん治療を両立し多くの人の受け皿に
開院以来、がん治療に特化されていますが、先生が医院を継承された際に改めた部分はありますか?

私自身、肝臓がんを専門的に診療してきたので、もともと父が行っていた肝臓がん治療を医院レベルで提供するというスタイルは継承しつつ、さらに発展させることに努めました。従来、当院では肝動脈化学塞栓術というカテーテルを使った抗がん剤治療を行っていたのですが、それだけではがんが進行してしまった患者さんの治療は難しく、新たに肝動注化学療法という、カテーテルを留置し抗がん剤を継続投与できる治療法を導入しました。カテーテル治療の技術と経験を積み重ねることによって、原発性の肝臓がんだけではなく、転移性の肝臓がん治療にも対応できるようになりました。がんが大きく進行してしまった患者さんも多く、根治が困難なケースもあります。そうした方たちにもここで治療して良かったと言ってもらえるよう、最良の医療を提供していきたいと思います。
他方で、地域住民のかかりつけ医としての役割も担っていらっしゃいますね。

父の考え方として、地域の患者さんの命をいかに背負っていくかという昔気質のところがあったので、それも肝臓がん治療と同様にしっかりと受け継いでいます。特に現在院長を務める山口泰三先生は父の代の副院長ですから、その想いを大切にしながら患者さんを診ていただいています。当院では採血検査、エックス線検査、CT検査、胃や大腸の内視鏡検査に関しては1時間以内に完結できる仕組みをつくっているので、検査から診断まで短時間で対応でき、早期の肺炎やがんを見つけて適切な治療につなげることが可能です。そうして地域を支える医院、地域の方たちの命を守っていくことができればと思います。また地域医療の一環として訪問診療にも対応しています。
地域医療とがん治療の両立は大変だと思うのですが、スタッフのサポートも大きいのではないでしょうか?
そうですね。私一人が良い治療をしたとしても、救える命は限られています。医師や看護師、事務スタッフ、調理師など、すべてのスタッフが協力し、一つのチームとなることで初めて良い医療が提供できると考えています。電話でセカンドオピニオンの相談を受ける機会も多いのですが、電話を受けた時から私たちの医療は始まっています。そういう思いは私や院長の患者さんに向き合う姿勢、理念の意識づけによって根づいていくものだと思っています。スタッフたちにも当院で仕事をする以上、ここで磨かれるもの、得られるものを通して人間的に成長してもらい、そしてそれを家庭や地域に還元し、また良い状態で働き、患者さんにも笑顔を伝えていく。そういう正のスパイラルをつくっていきたいですね。
自分の体にも愛情を持って定期的なメンテナンスを
こちらで対応しているがんについて教えてください。

肝臓がんは、肝臓から発生する原発性のものと、ほかの臓器で発生したがんが肝臓に転移した転移性のものとに分けられます。原発性の肝臓がんの多くは肝細胞がんで、まれに肝内胆管がんというものもあります。肝細胞がんについてはB型肝炎やC型肝炎、あるいは肝硬変などが原因となっているケースが多く、逆に肝臓に異常が認められない場合にはあまり発症することはありません。また、飽食の時代には避けられない、脂肪肝からくる肝炎を由来としたがんもあることがわかってきています。ほかにも当院では大腸がん、胃がん、胆管がん、乳がんなど、さまざまながんの治療を行っており、治療の選択肢が限られた肉腫や希少がんなどにも、カテーテル治療を取り入れています。
治療方法についても教えてください。
当院では、がんの血流を止めて壊死を起こす肝動脈塞栓術、根治をめざす塞栓術の門脈動脈同時塞栓療法、持続的に抗がん剤を投与する動注療法などを行っています。また特徴として、肝臓がんだけでなく、転移性のがんに対しても積極的にカテーテル治療を行っています。一般的に、転移性のがんには全身の抗がん剤治療が標準治療とされています。これは、転移性のがんに対して、カテーテル治療をしたとしても再発するケースが多いためですが、実際には有用な場合もあります。例えば乳がんから肝臓に転移し肝不全になって命を落としてしまうリスクがあるとしても、肝臓を治療することができればほかの治療にも取り組めるようになりますよね。がんが小さくなり、患者さんの表情が明るくなる可能性が期待できるのであれば、素晴らしい医療だと考えていますから。
沈黙の臓器といわれる肝臓ですが、どういった場合に検査を受けるべきでしょうか?

車に例えるとわかりやすいのですが、50年間何も検査をしない人はいませんよね。人間の体は壊れたからといって車のように乗り換えることはできませんから、自分の体に愛情を持って定期的なメンテナンスを行うことが必要です。特に肝炎や肝硬変がある方は定期的に検査を受けることが重要ですし、また脂肪肝の方は運動習慣をつける、数値異常があれば検査に行くということも大事になってきます。基本的には採血とエコーによる検査ですが、何よりも体のメンテナンスを行うという意識がとても大切だと思います。
がんを心にまで入り込ませず明るく健やかに過ごす
先生のがんに対する想いをお聞かせいただけますか?

がんには、どれだけでも増えて、どこまでも入り込んで、どこにでも飛んでいくという3つの性質があります。これを専門的には増殖、浸潤、転移といいます。その中で転移を考えた場合に、患者さんにどこに転移したら怖いかと聞くと肺や脳と答える方が多いのですが、本当は心への転移が最も怖いことだと私は考えています。心にがんが転移してしまうと、がんのことしか考えられなくなり、治療がうまくいったとしても過ごす時間は暗いものになってしまいがちです。もちろん、がんの根治が100%保証できればそういうこともないのでしょうが、現代の医療をもってしても厳しい戦いになることは間違いありません。治療がうまくいかないこともあるでしょう。そんな中でもがんを心に入り込ませず、明るく健やかに過ごせることは素晴らしいことです。その大切さに気づいてほしいと思っています。
がんの治療においては早期発見が一つのキーワードになりますね。
早期発見の良さの一つは、やはり根治的な治療を受けられる可能性が見込めるということですね。しかし、それ以上になぜがんになってしまったのか、ある種、自分を振り返る機会として捉えることも重要だと考えています。がんになると内省的になり、自分のことを見直したり、周囲に感謝したり、家族の愛を改めて知ったり、心の中でさまざまな気づきが起きます。早期でがんが見つかるということは、これまでの自分の行いや考え方などをリセットして、第二の人生を歩めるチャンスになり得るとも言えます。がんをそうした一つのきっかけとなる病気として捉えることができれば、また違った病気の見方もできるのではないでしょうか。
がんで悩んでいる方も多いと思います。最後にメッセージをいただけますか。

がんになると、悩み、苦しみますが、人間はわからないことに一番不安を感じます。実際に見ることができないものに対しては、どんどん不安が膨らんでいきます。そういう状況に置かれている中では、病気に関することは私たちプロに任せてください。体や治療への不安を私たちが背負えば、患者さん自身の負担も軽くなるはずです。それが最初にやるべき「医療」ではないでしょうか。がんで悩んでいる方はセカンドオピニオンでも構いませんので、私たちに相談していただき、少しでも明るい笑顔を取り戻していただければと思います。

