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篠崎 進一 院長の独自取材記事

しのざき整形外科

(今治市)

最終更新日:2021/10/12

篠崎進一院長 しのざき整形外科 main

本州と四国を結ぶしまなみ海道を愛媛県側から走っておよそ30分。古くは製塩業で知られた伯方島で診療を続けているのが「しのざき整形外科」だ。院長の篠崎進一先生が開業を決意したのは、しまなみ海道開通より10年以上前、30代の頃だそう。交通手段の少ない島しょ部であるため、整形外科と内科の限られた診療科目であっても、入院設備が必要と考えた篠崎院長。地域の患者とともにゆったり歩んできた同クリニックでは、現在はリハビリテーションや東洋医学にも重点を置きながら診療を行う整形外科として、島外からも患者が訪れるのだそう。もともとは物理を学びたかったという篠崎院長に、東洋医学の考え方や漢方を取り入れたきっかけ、医学と死生観についてなど、興味深い話を聞くことができた。

(取材日2021年3月24日)

目標は治癒ではなく痛みの改善と生活の質を上げること

島で開業されるのは勇気や覚悟のいることだったと思いますが、ここは先生の地元なのでしょうか?

篠崎進一院長 しのざき整形外科1

伯方島は妻の地元で、私自身は鳥取県の出身です。1988年2月に開業しましたので、しまなみ海道が開通する10年以上前のことでした。離島というほどではないものの、当時は船で行き来するほかありませんでしたから、使命感のようなものがなかったわけではありません。そういう土地柄ですから入院設備が必要と考えて、有床診療所として開業しました。整形外科であれば当院で手術ができますし、現在ほど各科の専門性が進んでいなかったこともあり、患者さんの訴えには幅広く対応していました。急な発熱や腹痛など内科的な疾患と思われる場合でも、とにかく医療機関にかかりたいと来院される患者さんには、現在もできるだけの診察と処置を行っています。

診療内容について教えてください。

整形外科と内科を標榜していますが、内科については4、5年前から非常勤の先生に来てもらっています。高齢になると持病のある患者さんは珍しくないですから、整形外科と内科の両方を診ることで、全身管理がしやすくなると考えています。整形外科は私が担当していますが、当院の場合はリハビリテーションを中心とした運動療法と物理療法を、東洋医学の考え方を用いながら進めています。リハビリを進めるにあたって、まずは痛みを取り除くことが大切ですので、漢方薬を処方するなど工夫しています。理学療法士・作業療法士も合わせて3人います。他に、数は少ないですが在宅医療にも対応していまして、こちらは内科の先生が担当しています。

患者さんはどのような方が多いですか?

篠崎進一院長 しのざき整形外科2

伯方島は高齢化の進んだ地域ですから患者さんもお年寄りが多く、90才を越えた方も少なくありません。東洋医学を取り入れている整形外科は、しまなみ海道の周辺ではあまりないようで、遠方では大三島や大島から通われている患者さんもいます。加齢による整形外科的疾患の患者さんが圧倒的に多いですが、スポーツ傷害の方が来院されることもあります。長年、改善しなかった体の痛みを、東洋医学の考え方も取り入れながら緩和していくようにして、治癒や緩解に至らないとしても、穏やかに過ごせるようにしていくことが目標です。再診のときはこの点について改善があったかどうかを、最も重視しています。そこを見極めた上で、追加の検査が必要か、改善しないようなら他の疾患も疑って内科で診てもらう場合もあります。そこで疑わしい疾患があれば、無理に当院で治療を進めずに、適切な連携先に紹介しています。

患者との信頼関係を大切に不定愁訴にも目を向けていく

30代の若さで開業されたそうですが、いきさつを教えてください。

篠崎進一院長 しのざき整形外科3

開業までおよそ12年の間、国立・県立病院等地域の病院で働いてきました。その中で、どうしても治りきらない、何かしらの不調が残る患者さんにたびたび接する中で、東洋医学の考え方や治療法を取り入れることで、改善に向かえるケースがあるのではないかと気づいたんです。しかし、当時の大きな医療機関では、なかなか東洋医学は取り入れてもらえなかったんです。それで開業して、自分の診療所で積極的にやっていきたいと考えました。今では世の中の医師の8割くらいが漢方薬や東洋医学について肯定的に見てくれていますが、私が始めた頃は信用してもらえませんでしたね。この10年くらいは広く浸透してきた印象があります。西洋医学の薬と異なり、東洋医学の薬は心筋梗塞や脳梗塞など危機的な状況では使えません。一方で西洋医学の薬は冷え性や体質改善には向かないと言えるでしょう。いずれの方法でも改善しない場合は、他の病気を疑うことも大切です。

東洋医学は不定愁訴に役立つのですね。

手術をして治ったはずなのに、痛みや不快感が残る、つらくなるという訴えに接して、勤務医としてはできることが少なかったのです。総合病院や基幹病院は、こうした不定愁訴はほとんど扱いません。病院自体が混んでいますし、そもそもできる治療が限られているんですね。しかし、不快感が残っていると、患者さんは次の手術や処置を嫌がって、治療が進められなくなることがあります。医師と患者さんの信頼関係にも関わりますから、不定愁訴の改善は大切なんですよ。これ以外でも、例えば風邪などでは東洋医学をしばしば使います。東洋医学の考え方でまずは体を温めていくことから始めています。それでも状況が変わらない場合は西洋薬を使うという方針で診療を行っています。

医師の仕事を志したのはどんなきっかけからですか。

篠崎進一院長 しのざき整形外科4

志というほどのものはなかったですね。自然科学が好きで、もともとは理学部に進んで物理学をやりたいと思っていました。しかし、親から「理学部に行ってもおまえの性格では、就職してから苦労するぞ」と散々言われてしまいまして。それで、岡山大学に医学部があるからそこに行けと言われて、進学することになりました。親の指摘したとおり、確かに私は人間関係が得意なほうではないので、人を診る医学よりも、理学部のほうが向いているはずだと自分では思っていたのですが(笑)。整形外科を選んだのは、治療の経過や結果が見えやすいからということで、特別な思い入れやこだわりはありませんでした。

健康寿命を延ばす努力を医療で行っていく

医師の仕事に就いて良かったと感じるのは、どんなときでしょうか。

篠崎進一院長 しのざき整形外科5

この仕事を選ぶと、若い頃から患者さんの死に接する機会があります。人は死んだらどうなるか、死に臨んだ人はどうなるのか、そのことを知っておくのが大切と思います。私の個人的なイメージなのですが、人は分子や粒子から始まって命を得て、人の体になって生きて、死んだらまた粒子や分子になるという考え方もあると思うんです。こう考えると、医学は物理学とつながっているかもしれませんし、心はどこにいくのかと考えれば、精神医学にもつながっていくかもしれませんね。医師の仕事をしていて良かったと思うのは、こうして生の根源や根本を問う機会が数多くあることです。

休日の過ごし方を教えてください。

大学時代にオーケストラに参加し、バイオリンを習っています。普段の練習は仕事が終わってからですが、今は岡山のアマチュアオーケストラに参加しているので、機会があれば出向きます。年に1~2回は演奏会もありますし、これが元気の源になっているんですよ。バイオリンは指も頭も使うので、いい運動になるんです。生まれ育った鳥取は雨や雪が多い土地ですから、アウトドアで遊ぶことも少なかったですし、温暖で海のきれいな愛媛に来ても、スポーツや海水浴などはあまり機会がありませんね。

読者にメッセージをお願いします。

篠崎進一院長 しのざき整形外科6

今を元気に生きるために、医療があります。痛みを取り除いていくことによって、できなかったことができるようになったり、生活の質が向上したりするかもしれません。こうした健康寿命を延ばす手段の1つとして医学があり、目標はそこだということを間違えないようにしてほしいです。寿命というものは、人間に決定権はありません。われわれ医師にできることは健康寿命を延ばしていく努力だけです。ですから、患者さんご自身も、早食いや大食いにならないようよく噛んで食べる、車に頼りすぎず歩く、体を動かすようにするなど、昔ながらの生活習慣の良い点を取り入れて、毎日を元気に過ごしてもらいたいですね。

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