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川又 正之 院長の独自取材記事

梅の木中医学クリニック

(今治市/今治駅)

最終更新日:2021/10/12

川又正之院長 梅の木中医学クリニック main

松山市と今治市の中間に位置する玉川町。農業・林業が盛んな自然豊かなエリアに「梅の木中医学クリニック」はある。クリニック内も広くゆったりとし、落ち着いた雰囲気だ。漢方内科・婦人科・麻酔科を標榜する同院では、院長の川又正之先生が中医学(中国伝統医学)に基づいて、煎じ薬の処方を主体とした治療を実施。カウンセラーのように話を聞き取る診察スタイルで、患者のさまざまな体の不調に向き合っている。そんな川又先生に、中医学と西洋医学との違いや、どんな症状に対応しているのか、そしてクリニックの展望についてたっぷりと話を聞いた。

(取材日2020年4月24日)

症状一つ一つを分析し、論理的に治療法を組み立てる

愛媛県立今治病院に10年勤務の後開院されましたが、その経緯を教えてください。

川又正之院長 梅の木中医学クリニック1

愛媛県立今治病院で医長を務めていましたが、義母が失明してしまい、転勤に対応しなくてはいけない勤務医を続けることが難しくなりました。1992年に産婦人科「梅の木クリニック」を開院しましたが、2007年に「梅の木中医学クリニック」と改名し、中医学に基づく診療に切り替えました。病院で検査をして異常がないと言われても、つらい症状で悩んでいらっしゃる方、また、病名がわかっていてもなかなか改善が見えてこないという患者さんに、中医学の知恵を活用して寄り添いたいと思うようになったからです。それで、呉澤森(ご・たくしん)先生に師事し、松山でのセミナーに毎週参加するようになりましたが、本格的に勉強するため上海中医薬大学附属日本校に入学して3年間学び、研鑽を積んでから当院の診療に加えました。中医学は奥が深く、今も仲間と勉強しつつ、年2回、中国にも赴き研鑽を重ねています。

一般的にはなじみの薄い「中医学」ですが、どのような医学でしょうか?

中医学は中国で2000年以上の昔に起こり、発展してきた中国伝統医学です。日本では、紀元前200年頃、中国の漢の時代に中医学が伝えられたことから漢方という名がつきました。漢方は症状を一つ一つ分析し、論理的な診療を行うのが特徴です。患者さんに「食欲がない、食べると眠くなる、朝起きると頭痛がするし足がむくみやすい」という症状があったとして、それは漢方的にいえばどのようなことが起こっているのか、どのような病態なのかを解釈していきます。例えば漢方における五臓の一つ「脾」は、食べ物を消化して、栄養分を体全体に分散させていく消化器系をつかさどりますが、その機能が弱ると下痢になったり、水はけが悪くなってむくむという症状が現れます。当院では症状を細かくヒアリングすることから始めますので、初診では1時間ほどかけてお話を伺います。完全予約制にして、患者さんにじっくり向き合うようにしています。

日本の漢方との違いはどこでしょうか?

川又正之院長 梅の木中医学クリニック2

日本漢方の場合は、例えば、体が軟弱で疲れやすく冷えがあるという症状には、一般的に「当帰芍薬散」を処方するのですが、冷えはあるけれど、疲れは感じていない場合はどうすればいいのかという問題が出てきます。大きな網の目だと患者さんの症状を細かくすくいきれず、ぴったりの処方を見つけるのが困難で、駄目ならほかの処方を試すという繰り返すことになります。一方、中国漢方は、患者さんごとに細かく違ってくる症状一つ一つを分析して、論理的に治療法を組み立てていき、その上で生薬をオリジナルで配合し、患者さんにはその薬を自宅で煎じて飲んでもらいます。患者さんの症状にぴったり合った処方ができた時は本当にやりがいを感じます。

診療域は、内科・外科・小児科・精神科など広範囲

どのような患者さんが来院されていますか? 最近の傾向はありますか?

川又正之院長 梅の木中医学クリニック3

「中医学」は幅広い診療が可能で、産婦人科・整形外科・内科・皮膚科・小児科・精神科と多岐にわたって診ています。患者さんは遠方から来られる方が3~4割いらっしゃいます。広島県、香川県、高知県、遠くは兵庫県からも来られています。最近は精神疾患、脊柱管狭窄症など整形外科疾患、アトピー性皮膚炎など皮膚科疾患の症例が多いですね。いろいろと病院を回ったけれど改善せず、ホームページや知人からの紹介などで当院にたどり着く患者さんも多く、初めて診る病気や難病も多いです。

印象に残っている患者さんはいらっしゃいますか?

勤務医時代、印象深い出産がありました。まだ超音波検査がなかった時代で、文献から先天性十二指腸閉鎖を強く疑った胎児を帝王切開で取り上げ、あらかじめ手術の手配をしていた大学病院へ運び、そちらで手術をしてもらったことがあります。その赤ちゃんが成人になってクリニックを訪ねて来られたときは、感激しましたね。

鍼灸師の資格もお持ちですね。

川又正之院長 梅の木中医学クリニック4

以前は漢方と併せて診療していたこともありますが、鍼灸は自費診療で患者さんの負担が大きく、現在は鍼灸は行っていません。しかし、どの経絡(けいらく)で問題が起こっているのかを把握していくために、鍼灸の知識はとても役に立っていますよ。もちろん、西洋医学からの診断も大事です。例えば「脊柱管狭窄症」は神経が通っている脊柱管が細くなることで神経が圧迫され、しびれたりする症状が出る疾患ですが、椎間板(軟骨)が変形し飛び出してしまうのは、骨自体が弱るのが原因で、骨が弱ってくるといろんな異物がたまるのです。こうした症状を漢方では「瘀血(おけつ)」といい、血の流れが滞っている状態だと捉えます。また、骨や腰痛は漢方における五臓の一つ「腎」に関連しているので、「脊柱管狭窄症」は漢方では「腎虚(じんきょ)」と「瘀血」による病気となり、それに合った生薬を煎じます。

希望を持って人生を歩んでもらうために

診療の傍ら、中医学の研究会で講師を務められているそうですね。

川又正之院長 梅の木中医学クリニック5

1994年から呉澤森老師の講義を受けたメンバーとともに、愛媛県で中医学を勉強する会で講師をしています。例会は2ヵ月に1回、基本講座は毎月行っています。例会では、中国の老中医の文献を検討して、彼らの考えの相違点、共通点を見つけ、新たな発見へと議論を深めています。まだ、不完全な中医学をさらに進展させることをめざして、仲間と切磋琢磨しているところです。メンバーは医師・薬剤師・鍼灸師・学生ですが、中医学に関心がある方ならどなたでも参加できます。

中医学を極めるには大変なご苦労があると思いますが、とてもやりがいのある医療分野ですね。

中学生の頃から、自分は性格的に会社員には向いていない、金儲けではなく人の役に立つ仕事に就きたいと思っていて、医療の道をめざしました。かねて関心のあった中医学の専門クリニックを開いて13年。なかなか治らない病に向き合って、処方をゼロから構築し、患者さんに希望を持って人生を歩んでもらえた時に、言葉に尽くせない喜びとやりがいを感じます。中医学に転向して良かったと思います。

クリニックの展望、そして読者へのメッセージをお願いします。

川又正之院長 梅の木中医学クリニック6

日本では中医学の認知度は低いですが、中国ではさまざまな疾患を対象にした医療分野として確立されています。漢方は体が悪い状態に陥っているのを修正する役割を担い、劇的に改善させるものではありません。当院を病気を治す塾と例えるなら、生徒である患者さんは宿題をこなさなければ成績が上がりません。宿題というのは生活習慣を見直し、苦い煎じ薬も処方どおりに飲むということです。遺伝的な疾患もありますが、現代人は生活習慣に由来する症状も多いのです。頑張って完治した方も多くいらっしゃいます。困った症状を抱えている方は、ぜひ相談に来ていただければと思います。

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