篠原 聖子 副院長の独自取材記事
星加小児科内科ファミリークリニック
(西条市/伊予西条駅)
最終更新日:2021/10/12
生まれ育った地元で祖父の代より続くクリニックである「星加小児科内科ファミリークリニック」で、小児科の診療にあたる篠原聖子副院長。開院から80年がたつクリニックは、これまでずっと地域に寄り添い、街の人たちのかかりつけ医であり続けてきた。院名の変更を経てきているが、地域のかかりつけ医という想いは、80年前の祖父の代から一貫して今も引き継がれているという。3人の母親でもある篠原副院長は、小児科の専門家であると同時に、母親たちの悩みや相談にも気さくにのる、頼れる子育ての先輩としての顔も持つ。そんな篠原副院長に診療への想いを聞いた。
(取材日2020年9月18日)
体のことだけではなく、心にも寄り添うことを大切に
まずはクリニックの歴史と特徴を教えてください。
1937年に祖父が内科として開業をしたのが始まりです。その後、1965年に父で前理事長の星加哲郎が星加小児科として開業。道路の拡張などの都合で今の場所に移転し、2004年からは星加小児科内科ファミリークリニックとして、義兄が内科、私が小児科と、2人の医師で診療を行っています。内科もあるということで、小児科にかかる年齢を過ぎたら今度は内科を受診したり、小児科に通ってくれていた子が大きくなって自分のお子さんを小児科に連れてきてくれたりと、長いお付き合いの患者さんも多いのが特徴です。小さな子どもから大人まで、患者さんも「家族」みんな診療できるのと、医師側も「家族」で経営しているという、2つの意味での「家族」であることが「ファミリークリニック」の由来です。家族みんなのかかりつけ医でありたいといつも思っています。
医療の道を志し、小児科を選んだきっかけを教えてください。
祖父も父も医師として働いていたので、子どもの頃から自然と自分も医療の道に進むのだと思っていました。小児科の医師になったのは、一番近くで背中を見ていた父が小児科医師だったことが一番のきっかけでしょうか。母親として子育てをしてみて、来院するお母さんたちの気持ちがよくわかるようになりました。教科書に書いていないことを教えてくれたのは、自分の子どもたちです。女性であり、母親であるという強みを生かすこともできるので、今、あらためて自分の専門に小児科を選んで良かったな、と思っています。子どもたちが大学生になり、自分の子育ては一段落したところなので、成長過程で生じる悩みなどにも、もっと寄り添っていけるような時間もとっていきたいですね。
クリニックの診療方針やモットー、診療内容を教えてください。
父がクリスチャンという影響もあって、やはり、愛と思いやりを持って患者さんお一人お一人の立場に立って診ることというのはいつも心がけています。診療は予防接種や、一般診療、皮膚疾患、アレルギー診療などを行っています。子どもの発育や成長に関する相談も最近は多く、身体的な症状に対する治療というよりも、不登校の相談や子育ての悩みなど、カウンセリングに近い内容での来院も増えているので、今後はそういった相談枠を予約制で増やしていきたいと思っています。
親の気持ちに寄り添う医療を
患者さんはお子さんが多いのですか?
予防接種や健診などは赤ちゃんや小さなお子さんが多いですね。以降は、小学校低学年ぐらいのお子さんが多いでしょうか。成長するにつれ、だんだん丈夫になっていくので、もう少し大きいお子さんは少なくなりますが、内科も併設しているので小児科を卒業してもそちらに来てくれるお子さんも多いです。小児科を卒業して内科に通院し、ご自身のお子さんを出産されたのち、そのお子さんを小児科に連れてきてくださる方も多く、何世代かで家族ぐるみのお付き合いという方も少なくありません。生涯を通して、地域の患者さんの疾患を幅広く、年齢や症状に問わずなんでも相談いただけます。隣の敷地で、夫が耳鼻咽喉科を開業しているので、必要に応じて、患者さんを紹介し合うこともあります。他にも専門的な検査や手術などが必要な場合には、専門の先生や地域の中核病院に紹介するなど、近隣医療機関と連携をしながら診療をしています。
患者さんや保護者との関わりで大切にしていることはありますか?
正直に言うと、自分が子どもを産み育てるまで親御さんの気持ちや状況を理解していなかったところがありました。でも、自分が親になってみて、親御さんの状況や気持ちがよくわかるようになったように思います。どんなことを不安に思っているのか、具合が悪くて子どもの機嫌が悪いときの対応の大変さとか。そういうことがよくわかるようになったので、とにかくまず話を丁寧に聞くということを心がけています。あとは、今の状況で特に気にかけているのは感染症対策です。生まれたばかりの赤ちゃんを抱えて来院されるお母さんは不安が大きいと思いますので、通常の診療とワクチン接種の部屋や時間帯を分けたり、診療時間内にいらっしゃる場合も、ネット予約であまりお待たせせずに対応したりしています。秋から冬にかけては、季節性の感染症も流行してくるので、より徹底して保護者の方が不安にならないよう配慮していきたいです。
どのような時に医師としてのやりがいを感じますか?
ここで開院してもう長いので、当初に小児科に通ってきていたお子さんたちが、大きくなってご自分のお子さんを連れて来院された時などは、やはりとてもうれしいですね。お子さんが来院されたことをきっかけにご家族の方やお友達も来院されるようになったり、関係性が広がったり続いていくことも喜びの一つです。あとは、大きな病気をされて地域の中核病院などに紹介した患者さんが元気になって戻ってきてくれたり。医師として医療面で支えになるのはもちろんですが、心の交流というか、病気のことだけではなくて、子育てのことや、ちょっとした悩みとか、そういうことも相談してもえらえるような関係性が築けた時にとてもやりがいを感じます。
かかりつけ医として、地域の、家族の心のよりどころに
今までで印象に残っているエピソードはありますか?
研修医だった当時に担当した2歳の女の子が大きくなり、結婚して出産して、生まれた子どもを見に行ったこともあります。もちろんその女の子は私のことをまったく覚えていなかったのですが、そのお母さんとずっと交流が続いてたんです。久しぶりに患者さんにお会いできて、しかも赤ちゃんも生まれて……。あの小さかった女の子が母親になって、また会うことができたのが、とてもうれしかったですね。診療中だけに限らず、気持ちのやりとりが続いている方がいらっしゃると、やはり印象にも残るしうれしいですよね。
これから先の展望をお聞かせください。
新型コロナウイルス感染症流行による自粛期間などの影響もあるのか、不登校の相談なども増えています。診療中は、次の患者さんのことなどもあり、なかなかじっくり相談に乗ることができないこともあるので、今後はそういう相談枠も予約制で増やしていきたいと思っています。この辺りはカウンセリングを行う施設などが少なく、紹介してもそこまで行くのが難しかったり、慣れない場所に行くことが難しいお子さんもいらっしゃったりするので、通い慣れているクリニックでフォローを続けるというのも大切な役割だと思うのです。「気になることはありますか?」ということは診療の際に必ず聞くようにしているのですが、親御さんの不安な気持ちを置き去りにしないよう、心に寄り添い安心して相談してもらえるように、これまで以上にメンタル的な面でのケアを充実させていきたいです。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
初対面であっても目の前に座った子どもが笑顔になってくれる、そんな小児科医師でありたいですね。困ったときに気軽に相談できる場所として、ご利用いただけたらうれしいです。小さなことでも、不安なことやわからないことがあったら、遠慮せずにどんどん相談してください。小児科の医師としてはもちろん、私が3人の子育てを経てわかったことや気づいたことなども含めて育児相談、食事など栄養面のアドバイスなども行っています。特に小さなお子さんにとっては、お母さんが元気で健康であることも大切だと思いますので、お母さんも元気に日々を過ごせるように、精神面のフォローや美容、教育の悩み相談もお受けしています。皆さんの心のよりどころになれたら、と思っているので、周りに頼る方がいない場合も、不安な思いを一人で抱え込まずにいつでも扉をたたいてください。