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吉田 克己 所長の独自取材記事

泉川診療所

(新居浜市/新居浜駅)

最終更新日:2021/10/12

吉田克己所長 泉川診療所 main

JR新居浜駅から徒歩約5分。「愛媛医療生活協同組合泉川診療所」は、内科の外来のほか、在宅療養支援診療所として訪問診療や往診を積極的に行っている。「誰もが健康で居心地良く暮らせるまちづくりへの挑戦」をビジョンとし、併設する小規模デイサービスとともに、高齢化が進む地域のニーズに応えている。高血圧と心臓内科が専門の吉田克己所長は、2001年の所長就任以来、在宅での看取りや365日24時間の往診にも対応し、地域医療を支えてきた。地域に根差した患者のための医療を実践する吉田所長に、診療方針や医師としてのやりがいなどについて聞いた。

(取材日2020年10月12日)

「自分にできることは何でもする」をモットーに

診療所の特徴や患者層について教えてください。

吉田克己所長 泉川診療所1

当診療所は内科の外来とともに、在宅療養支援診療所として訪問診療にも力を入れており、登録された患者さんには365日24時間の往診対応を行っています。併設するデイサービスは小規模の良さを生かし、手作り感のあるデイサービスを心がけています。患者さんはやはり高齢の方が多いですね。

診療の中で大切にしていることは何ですか?

自分でできることは何でもする。それに尽きます。例えば、身体障害があるのに障害の認定を受けていない方がたくさんいらっしゃるんですね。支えなしで座れない高齢の患者さんがいましたが、支えなしで座れないというのは身体障害1級の基準に該当します。障害として認定された場合、愛媛県の場合は医療費が無料になります。その方は長くそのような状態だったと思われるのにもかかわらず、申請をしなかったがために医療費を自己負担していました。こういったことが本当に多いのです。その要因は、私は医師にあると思っています。身体障害者手帳の交付申請に必要な診断書を作成する身体障害者福祉法指定医になるには、県に申請しなければいけないのです。先日は、身体障害となるレベルの肝臓機能障害のある患者さんがいたので、指定医の申請をし、認められました。このようなことも、「自分にできることは何でもする」という一つの表れだと思います。

患者さんにとっては、とてもありがたいことですね。

吉田克己所長 泉川診療所2

愛媛県では身体障害2級で医療費が公費負担となります。また、例えば肢体不自由で4級、心臓機能障害で3級と重複して障害のある方の場合、2級になり、医療費が無料になります。脳梗塞で体に障害が残ることも多く、3級や4級の患者さんは実は割といらっしゃるんですよ。障害の申請のための診断書を書くには、該当する障害区分に関係のある診療科で5年以上の診療経験があることが必要です。私は「肝臓機能障害」以外に「心臓機能障害」「肢体不自由」の診断書作成も可能です。

在宅療養支援診療所として、どのような役割を担っていらっしゃるのでしょうか?

当診療所は、新居浜協立病院など5つの医療機関とともにグループをつくり、地域の在宅医療を支える「強化型在宅療養支援診療所」となっています。他の医療機関と連携を図りつつ、365日24時間いつでも往診や訪問看護に対応できる体制を整え、緊急往診や看取りも行っています。連携している医療機関とは月1回、カンファレンスを実施していますが、新型コロナウイルスの影響で9月からはオンラインで情報交換をしています。

最期まで患者や家族が納得できる医療をめざす

訪問診療において、特に大切にされていることは?

吉田克己所長 泉川診療所3

患者さんやご家族の納得でしょうね。訪問診療では、末期がんの患者さんを担当することもあります。末期がんの患者さんは、在宅医療を決断された時には、既にあまり時間が残っていないということがあります。やはり家で過ごすということは積極的な治療手段がもうないことを意味するわけですから、決断に時間がかかります。ですから、患者さんにとってもご家族にとっても残り少ない日々を納得して過ごしていただくために、何でも言えるような関係を築くように心がけています。納得されているようで、そうではないときもありますから、看護師さんなどとも連携しながら、感性を持って、最期まで納得を得られる医療を提供したいと思っています。

病院から家に戻られた患者さんとそのご家族にはどのような対応をされているのでしょうか?

入院されていた病院には、退院前に私が出席するカンファレンスをしていただくようにお願いしています。カンファレンスができて、退院されたら、できるだけ早くお宅に行って、いろんなことをきちんと聞きます。退院した当日に会いに行くこともあります。今は家で看取りをする文化が一般的とはいえませんから、患者さんはもちろん、ご家族の不安も大きいと思います。まずは在宅医療について説明したパンフレットをお渡しして、一緒に考えていくようにしています。

医師としてやりがいを感じるのは、どのような時ですか?

吉田克己所長 泉川診療所4

患者さんやご家族のご意向にかなった看取りができた時です。ご家族から「ありがとうございました」と言っていただき、私自身も十分な対応をして差し上げられたと思えるときは、やりがいを感じますね。

印象に残っているエピソードを教えていただけますか?

多発性硬化症という病気で寝たきりの生活になっていた20代の女性を月2回往診していました。その方から「父ががんで亡くなりそうだが、会いに行けない。何とか父を家に連れて帰れないか」と相談されました。お父さんは、がん性疼痛がひどく、硬膜外ブロックとモルヒネの持続静注をしても痛みが抑えられないほどで、食事もまったくできない状態でした。それでも何とか親子の時間をつくってあげたいと、在宅医療に踏み切りました。家に帰って1週間で亡くなりましたが、最期は「つらいところはない」とおっしゃり、娘さんと夜中にたくさん話せたそうです。「すごく大切な時間になりました」と娘さんが話してくれました。

健康寿命を延ばすため、まず血圧のコントロールを

先生はそもそも、なぜ医師をめざされたのでしょうか?

吉田克己所長 泉川診療所5

父が検査技師、母が看護師でした。父が結核になった時に療養所で母と出会ったそうです。時代が時代だったのでかなわなかったものの、父は医師になりたかったようで、私が小さい頃から大阪大学の細菌学の教授に会いに行くのが年末の恒例行事になっていました。私を医師にふれさせたかったのでしょう。そんな両親の期待もあり、私自身人に関わる仕事をしたかったこともあって医学部に進みました。愛媛大学を選んだのは、当時父が観音寺に単身赴任していたからです。一人っ子なので大学進学と同時に家族で大阪から四国に移り住みました。卒業後は愛媛医療生協の新居浜協立病院に就職し、以来愛媛医療生協にずっといます。

夜間や休日に診療に行かれることも多いと思いますが、先生のリフレッシュ法は?

映画鑑賞です。休日は松山や今治まで映画を見に行きます。

大きな影響を受けた本があるそうですね。

吉田克己所長 泉川診療所6

エンジニアに向けたリーダーシップに関する本です。この本を読んで患者さんやスタッフとの関わり方が変わりました。相手に心を開いてもらうためには、まず自分が悩みや弱みをさらけ出すこと。変なプライドはいらない。相手が心を開いてくれたら、10%しか伝わらなかった話が30%伝わるようになるんです。最初に読んだのは35歳くらいですが、読み返す度に発見があります。以前は意味がわからなかった文章も、人生経験の中でわかるようになってくるのです。

最後に地域の方にメッセージをお願いします。

健康寿命を延ばすためには、血圧のコントロールが大切です。私の感覚では、年齢より老けて見える人の多くは血圧が高い。高血圧を10年くらい放置していると明らかに老けてしまうように感じます。逆にしっかり治療している人は、あまり老けずに健康的に過ごされているように思います。そういった点から、血圧を定期的に測るためにも、健康診断をきちんと受けてほしいですね。診療所で血圧を測ると高いけれども家で測ると低いという人もたまにいます。「白衣高血圧」というのですが、そういう人は実は本当の高血圧になりやすいのです。当診療所では血圧計の貸し出しを行い、自宅でも測ってもらっています。診療所でも家でも血圧が高ければ通院を勧め、家で低ければ「白衣高血圧」のリスクを伝えます。そういうお話をすることも含めての健診ですから、年1回はぜひ受けましょう。

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