中山 恵二 院長の独自取材記事
中山皮膚科クリニック
(新居浜市/新居浜駅)
最終更新日:2024/04/18
新居浜市に開院しおよそ30年、地域に根差し愛され続ける「中山皮膚科クリニック」。一人ひとりに真摯に向き合い、丁寧な説明と診療を行う院長の中山恵二先生は、日本皮膚科学会皮膚科専門医だ。アトピー性皮膚炎など皮膚科全般に関わる診療に加え、難治性の皮膚疾患にも対応。「患者さんにとって最善の医療を提供したい」という診療方針、明るく優しくが同院のモットーでもあるとおり、中山院長からもその人柄を感じられる。優しい語り口調の中に時にはユーモアを入れながら、日々の診療について、地域医療への想いなどたくさんの話を聞いた。
(取材日2020年10月31日/情報更新日2024年4月18日)
地域に根差し、支持され続けて30年
開院されて約30年ですが、これまでの歩みを教えてください。
先代の父が開業をしており、その後を継いだのが今から約30年前の41歳の時です。新居浜に戻ってくるまでは、東京の日本医科大学で皮膚科学専任講師を務めながら、診療をはじめ、研究や教育など数々の経験を積んでいました。父は泌尿器科を専門としていましたが、戦前の父の時代は、皮膚と泌尿器は同じ分野とされていて、どちらも大学で学んでいたんですね。そのため、当院は皮膚科と泌尿器科を標榜科目としています。私は皮膚科が専門ですので、父の後を継いだタイミングで現在の「中山皮膚科クリニック」に改称しました。患者さんも増えてきて、もう少し広さが必要になり、この場所に新築移転したのが2006年です。私も今年で74歳になりますが、クリニックも私も、地域の皆さんとともに歩んできました。
これまでで心に残るエピソードはありますか?
地域に根差して30年近く診療をしているので、小さな頃から診ている患者さんはたくさんいらっしゃいます。赤ちゃんだった子が小学生になり、高校生になり、そんな成長を見ることができるのは素晴らしいなと思っています。市外にお引っ越しをされても、皮膚科にかかる時は、わざわざ新居浜の当院まで足を運んでくれる患者さんもいらっしゃいます。東京から帰ってきたばかりの頃は患者さんも少なくて、時間が余ってしまうこともありました。だけど、自分が正しいと思うことを続けていると、クチコミなどで広まって、気がつけばたくさんの患者さんに来ていただいています。30年を振り返って、自分がやってきたことは間違っていなかったんだなと自負しています。
皮膚科の中でも特にご専門の分野はありますか?
大学では一般皮膚科と皮膚外科を担当していました。一般皮膚科はアトピー性皮膚炎、アレルギー、湿疹などで、年齢層はお子さんから高齢の方まで幅広く診察しています。皮膚外科は腫瘍除去や形成外科的な処置ですね。現在も当院で週3回ほど日帰り手術を行っています。光線治療室も設置し、飲み薬や塗り薬ではなかなか良くならない疾患には、ナローバンドUVB療法なども取り入れています。光線治療を施術できる医療機関は近隣エリアに少ないので、総合病院などからの逆紹介もありますよ。
新しい情報を仕入れ、正しいことを伝達する
診療方針について教えてください。
一番大切にしているのは、病気や治療の正しい情報を正確にきっちりとお伝えすることです。例えばですが、じんましんで受診された患者さんは皆さん、「原因は?」「食物アレルギーですか?」と、聞いてこられます。しかし、原因がわかるじんましんはそんなに多くないんですよ。さらにアレルギー性のじんましんの割合は、とても少ないのです。じんましんは寒さで出る寒冷じんましんや、圧迫性じんましんなどアレルギーとは関与しないものもあるんです。ただし、アレルギー性であっても非アレルギー性であっても治療は同じなんです。このように、病気についての情報を丁寧にお一人ずつお伝えした上で、治療や処方する薬について十分な説明をして、患者さんにも納得してもらっています。この一つ一つの詳細な説明は、皮膚科の専門医だからこそ可能なことではないかと思いますよ。
小児の患者さんへはどのように伝えられていますか?
お子さんの場合は保護者さんへの説明や指導、それに心理面でのケアも必要になってきますね。お子さんのこととなると過剰に神経質になってしまうお母さんも多いです。アトピー性皮膚炎の診断をお伝えすると、この世の終わりみたいに悲壮感が漂ってしまうお母さんもいらっしゃいます。そんな方には「そこまで心配しなくても大丈夫ですよ。塗り薬もあるし、スキンケアを丁寧にすれば、そんなにひどくなることはないですよ」といった情報を伝え、安心させてあげるようにしています。逆にあまり重大視していないお母さんには、自宅でのケアのやり方や、その大切さを指導しています。
ご苦労に思われることはありますか?
そうですね、患者さんの思い込みを正すことでしょうか。今はインターネットで患者さんがご自分でも調べられます。そのため、先入観や間違った情報を得て来院される方も多く、正しい情報をしっかりとお伝えすることは、より大切になりますね。また、逆に昔の古い情報のままの患者さんもいらっしゃいます。例えば、とびひにかかると、昔はお風呂に入らないよう言われていました。しかし現在では、とびひは清潔に洗うことで治っていくことがわかっています。しかし昔の情報のまま洗浄をしない方もいらっしゃって「それは今は違いますよ」とお伝えしているのですが、なかなかわかってもらえない時もありますね(笑)。
皮膚の専門家として、地域医療を支えたい
地域の皮膚科として大切にされていることはありますか?
しっかりと診断をつけて、患者さんにとって適切な医療を提供することですね。入院が必要なもの、高度な治療が必要なケースはしかるべき医療機関に紹介をし、外来で対応できる疾患はここで治療をします。この新居浜市で日本皮膚科学会認定の皮膚科専門医資格を持つ医師は、私を含め数が限られており、地域の皮膚疾患の多くは他科の先生が診て、そこで良くならなかった方が皮膚科に来られるといった現状のようです。しかし、皮膚疾患の中では皮膚がんなど、専門とする医師の気づきと見極めがとても重要な疾患もあります。地域における皮膚科医師の役割として、その守備範囲はしっかりと守らないといけないと気持ちを引き締めています。
皮膚がんの疑いで病院にかかるポイントはありますか?
皮膚がんの種類はたくさんありますが、一番怖いのはほくろのがん「メラノーマ」です。次に怖いのが「有棘(ゆうきょく)細胞がん」。どれも痛みなど自覚症状は初期はほとんどありません。ほくろが急に大きくなった、周りの辺縁が変形している、色が均一ではない、すぐに出血する、墨汁のような染み出しがある。この中で思い当たるようなことがあれば、なるべく早めに皮膚科で診てもらったほうがいいでしょうね。当院では、転移性の高いものは大病院へ紹介状を出し、日帰り手術で対応できるものはクリニックで対応しています。皮膚がんは、医師の良性・悪性の見極めと、早い気づきが大切になってきますね。
今後の展望を教えてください。
地域医療を守っていくために、若いドクターの支援にも力を注ぎたいと思っています。松山市以外の愛媛県は、皮膚科に限らず医師不足の状態が続いています。この新居浜市でも少子高齢化は進んでおり、医師も同じく高齢化しています。現在は80代の先生も頑張ってくださっていて何とか地域医療が成り立っていますが、10年後を考えるととても厳しい状況ではないでしょうか。限りある医療資源をどのようにして活用していくのか、医療の地域差をなくすためにできることは何なのか、後進の医師たちを増やすためには何をすればいいか、これらのことを考えながら地域医療に取り組んでいかなくてはなりません。日々の診療は、これからも今まで歩んできた方針どおり、自分ができることできないことを見極めつつ、正しい情報を伝えながら、患者さんに満足していただける“優しい診療”を続けてまいります。