緑内障診断と進歩する治療
「低侵襲緑内障手術(MIGS)」
岡本眼科クリニック
(松山市/大手町駅)
最終更新日:2024/10/09
- 保険診療
水晶体が濁ることで見えにくくなる白内障と、視野が狭くなったり、視力が低下したりする緑内障。いずれも自然に治ることはないため、治療が必要だ。白内障は手術による治療で視力の回復が図れる。緑内障は、元の状態に戻すことはできないが、治療によって進行の抑制が期待できる。最近では、白内障の手術と同時に行えるようになった「低侵襲緑内障手術(MIGS)」も選択肢に加わったという。先進の医療技術を駆使し、心身に負担が少なく精度の高い眼科治療の提供をめざす「岡本眼科クリニック」でも、この同時手術を実施している。同院で行っている緑内障の診断から手術までの流れを、岡本茂樹院長に聞いた。
(取材日2023年12月27日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q緑内障とはどのような病気ですか?
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A
緑内障は、網膜の神経細胞が進行性に消失していくことにより視野欠損が起こる病気です。視野欠損とは視野の一部が欠け、見えなくなる状態なのですが、自分で気づいたときには進行していることが多く、サイレントキラーと呼ばれています。原因はさまざまで、生まれつきの要因により眼圧が上昇する先天緑内障や、外傷や薬剤の影響で眼圧が上昇する続発緑内障、原因がはっきりしない緑内障があります。40歳以上の日本人の5%に緑内障があるとされています。人間ドックでの眼底写真や眼圧検査で発見されることがほとんどです。
- Q基本的な治療法を教えてください。
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A
緑内障によって損なわれた神経細胞や視野を治療で元の状態に戻すことはできませんが、進行の抑制を図ることはできます。第一選択は、薬剤を点眼して眼圧の下降をめざす治療方法で、無点眼時に測定した眼圧より20~30%下げることを目安に薬剤を選びます。この治療は一生続ける必要があります。薬剤によって眼圧が下降しない場合は、外科的手術による治療が行われます。また、病型によってはレーザー治療や水晶体摘出なども治療の選択肢に挙がります。
- Q白内障手術と同時に行える緑内障手術もあるそうですね。
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A
はい。緑内障手術では、これまで主に眼内の水を結膜下に逃す手術が行われてきましたが、最近は白内障の手術も同時に行うことができる低侵襲緑内障手術(MIGS)の「水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術」が注目されています。この手術は、白内障手術でできる傷から1mm程度の小さなチタン製の筒を眼内に挿入し、水を排出して眼圧を下げることをめざすというもので、出血が少なく、体への負担が少ないのも特徴です。この低侵襲緑内障手術は、白内障手術と同時に受けることで保険診療が認められています。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 11年に1度の眼科検診
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緑内障は症状が進行する前に発見し、早期に治療を始めることが大事。症状を自覚したときにはすでに進行していることが多いため、40歳を過ぎたら1年に1回は定期的に検診を受け、緑内障の有無をチェックする。
- 2精密検査と治療についての説明
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眼科検診の結果、緑内障が疑われたら精密検査を行う。眼圧の測定だけでは緑内障かどうかを診断することはできないため、眼底検査による視神経や網膜の観察、視野の測定、OCT検査などを受ける。検査の結果、緑内障と診断されたら、医師から進行度合いやどのような治療を行っていくかの方針が説明される。
- 3点眼治療
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緑内障は眼圧の低下をめざすことで進行の抑制を図っていくが、まずは点眼薬による治療を受ける。治療前の眼圧を何度か測定し、眼圧のベースラインとなる値を決めていく。このベース眼圧を20~30%程度下げることをめざし、毎日点眼を続ける。その間、眼圧や進行度合いなどをチェックするため、定期的に受診する。
- 4低侵襲緑内障手術の実施
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点眼による治療を受けても、効果を示さない場合は手術治療を検討する。白内障の症状がある場合は、同時に行うことで保険診療となる低侵襲緑内障手術の一つである「水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術」を選択。日帰り手術で、手術時間は20分程度。術後1ヵ月程度は抗生剤を点眼する。治療後は眼圧を下げるための点眼薬の減薬が見込めるという。定期的な検査で、眼圧や病状の進行の有無などをチェックする。
- 5その他の緑内障手術
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「水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術」が適応しない場合、それ以外の低侵襲緑内障手術として、線維柱帯切開術、線維柱帯切除術、緑内障インプラント手術などがある。これらの選択肢の中から自分の症状に応じた適切な治療法を選択する。いずれの手術も水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術と同様、術後は眼圧や進行を調べるため定期的な検査を受ける必要がある。