河邉 憲太郎 院長の独自取材記事
石手ファミリークリニック
(松山市/道後公園駅)
最終更新日:2026/08/21
子どもの発達や学校生活における問題、心の不調など、子育て世代が抱える悩みは年々多様化している。そうした地域のニーズに応えるため、「石手ファミリークリニック」では、既設の内科・外科に加え、2026年5月より児童精神科、小児科を新設。子どもから高齢者まで幅広い世代を支える診療体制を整えている。本人だけでなく家族にも寄り添い、小さな悩みにも丁寧に向き合うことを大切にする同院。今回は、児童精神科の専門家として診療にあたる院長の河邉憲太郎先生に、クリニックの特徴や診療への思い、子どもたちと接する上で大切にしていること、そして地域医療への展望について話を聞いた。
(取材日2026年7月14日)
子どもの心に寄り添う、児童精神科クリニック
「ファミリークリニック」と名づけた背景をお聞かせください。

当院の母体は、父が創業した「医療法人石手内科」です。長年一般内科、外科を診療し、介護施設も併設するなど地域の患者さまのかかりつけとして歩んできました。一方、私は児童精神科を専門としており、前職では愛媛大学医学部附属病院の児童精神科で小児・思春期の患者さんを中心に診察していました。このたび新設した児童精神科は私が、小児科は妻が担当します。まさにお子さんから高齢者までトータルで地域の皆さまに寄り添っていくという思いで「ファミリークリニック」と名づけました。
先生のこれまでの歩みについてお聞かせください。
愛媛大学附属病院をはじめ、県内外の精神科医療機関で経験を積んできました。神奈川県では児童精神科の入院施設で勤務し、子どもの精神科入院治療についても経験しています。また、臨床と並行して研究活動も行い、学校でのアンケート調査などから子どもが抱えている課題にも目を向けてきました。その中で感じたのは、小・中学校に通うお子さんたちにも、深刻な心の悩みを抱える子が少なくないということ。生きづらさを感じていたり、眠れなかったり、インターネットやゲームへの依存が見られたりと、現代ならではの問題が浮かび上がってきたのです。もっと医療機関を受診するハードルを下げて、子どもたちが気軽に相談できる場所づくりが、今の社会には必要だと感じました。
どのような悩みを抱える患者さんが受診されていますか?

児童精神科を受診されるお子さんは、「学校に行くのがつらい」「お友達との関係に悩みを抱えている」といったストレスが多いように思います。また、集団行動が苦手だったり、じっとしていられなかったり、「人と少し違うのではないか」と悩んでいる子どもたちも多いですね。発達障害については、保護者の方が気づき、ご相談いただくケースも多いです。児童精神科は高校を卒業するまでのお子さんを対象としていますが、当院には小児科も併設しておりますので、幼児のお子さんも多いですね。小児科は小児科医である妻が担当しており、小児発達を中心に診ています。心の不調が体に現れることがありますし、もちろんその逆もありますから、児童精神科と小児科が院内でシームレスに連携できることは大きな強みであると考えています。特に小さいお子さんの場合は、自分で症状を言えない子も多いので、体と心の両面から総合的に診ることが重要です。
児童精神科と小児科が連携し、子どもの成長を見守る
親御さんからはどのようなご相談が多いですか?

発達についての相談や、落ち着きがない、不安そう、すぐに泣いてしまう、睡眠リズムが整わないといった心配事やお悩みが多いです。こうしたお悩みにしっかりと向き合い、一つ一つにお応えしていくというスタンスを取っています。お子さんの症状に対する治療はもちろんですが、親御さんの思いを尊重し、どう見守っていけばいいのかを考えていくのも医師の務めです。子どもにどのような声かけをしたらいいのか、親としてどう対応すべきかについて悩んでいらっしゃる方も多いので、寄り添いながら具体的なご提案ができるように心がけ、お子さんのことで悩んだり迷ったりしたときに、頼りになるクリニックをめざしています。
お子さんと接する際に心がけていることはありますか?
医療機関は子どもたちの日常生活の外にある特別な場所ですよね。怒られるのではないか、注意されるのではないかという不安を抱いて来る子も多いので、まずは「よく来たね」という声かけをするようにしています。そして症状や悩みの話だけでなく、その子の好きなことや得意なこと、「今日は何があった?」など、他愛のない話でリラックスしてもらうことを心がけています。また、来やすいような空間づくりも大切です。待合室には本を多めに準備し、リラックスできる音楽を流すなど、デジタル機器から少し離れて過ごせる環境を意識しています。ゲームやインターネットに依存気味のお子さんもいるため、テレビなどは置かないようにしています。また、一人掛けの椅子ではなくソファーにして、親子が横並びで座れるようにしているんですよ。思春期はどうしても親を遠ざけたくなる時期ですが、物理的に距離が近づく環境にできたらいいなと考えています。
患者さんと接していて印象的なことは何ですか?

例えば、最初は、お母さんがそばにいないと不安そうにしていても、やがて親と離れて一人で相談することを希望するようになることがあります。長くお子さんを診ていると、そういった成長を感じる場面に立ち会えることがあり、本当にうれしく思います。児童精神科は、高校卒業や就職、大学進学といった節目が一つの卒業のタイミングです。だんだんと自分の言葉で話せるようになり、最後は自立して社会に出ていくことをめざし、その成長と旅立ちをお手伝いできることに、大きなやりがいを感じています。いつか巣立っていくそのときには、「よく頑張ったね」と、言える存在でありたいという思いがあります。子どもたちの人生の多感な時期をともに歩むことができるという経験は、医師として本当に貴重なものだと感じています。
「未来ある子どもたちを元気にしたい」が原点
先生が児童精神科を専門にされた理由を教えてください。

医師を志した頃から、小児医療に携わりたいと考えていました。ただ関心があるというだけではなく、今のこの世の中で一番元気でいてほしい存在だと思っているからです。子どもたちを元気にすることで、社会全体が元気につながっていく。そんな思いが、私の医療人としての原点です。ただ、初めから児童精神科と決めていたわけではないんです。父が内科医でしたから、自分も父の背中を追って内科に進むのだろうと考えていました。ですが研修医時代に、心のつらさを抱える子どもたちが多い現実を目の当たりにし、そのその思いに寄り添う医師になりたい、それが自分の使命だと思いました。
「子どもを元気にすることで社会を元気に」は、とてもすてきなお考えですね。
ありがとうございます。子どもの心に寄り添っていく中で、社会全体が抱える課題も見えてくることを実感しています。何より私自身が、子どもたちに救われ、元気をもらっている部分も大きいんです。そうした診療の中で感じたことや、児童精神科の役割、心の問題を抱える子どもたちの現状をより多くの方に知っていただき、もっと広く、多くの患者さんを救いたいという思いから、研究や執筆、講演活動にも取り組んでいます。私が目の前で直接治療できる患者さんの数には限りがありますから、こうした活動を通じて、社会全体に少しでも良い影響をもたらすことができればと思っています。
最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。

児童精神科の需要は、新型コロナウイルスの流行以降さらに高まっていると感じます。児童精神科のクリニックは県内でも少ないと思いますから、まずは困っている子どもをしっかり受け入れていくことが最優先。小さな心配事でも、気軽に受診していただきたいですね。小児科もありますから、成長・発達に関すること、予防接種についてのご相談など、子育てに関する幅広いお悩みにもそれぞれの観点からお応えできるのが、一般的な児童精神科との大きな違いです。発達障害のあるお子さんの中には、慣れない場所や診察に不安を感じることがあり、小児科の受診や予防接種にハードルを感じている親御さんもいらっしゃいます。そうしたお悩みのあるご家族にも受診していただきやすいよう、当院は児童精神科と小児科が連携して対応し、ご心配なく受診していただけます。お子さんはもちろん親御さんにとっても、頼りになるパートナーでありたいと考えています。

