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福井 哲郎 院長の独自取材記事

福井クリニック

(松山市/松山市駅)

最終更新日:2021/10/12

福井哲郎院長 福井クリニック main

神経ブロック治療で知られる若杉文吉先生のもと関東逓信病院ペインクリニック科で修業を積み、広島大学麻酔科や中国労災病院麻酔科で臨床経験を重ねてきた福井哲郎先生。1991年には生まれ故郷の松山市柳井町に神経ブロック治療専門の「福井クリニック」を開業し、全身のさまざまな痛みに悩む患者に向き合ってきた。神経ブロック治療を追求し40年以上。日本ペインクリニック学会認定ペインクリニック専門医として、今もなお第一線で活躍する福井先生に、どんなときにペインクリニック科を受診すればいいか、また先生が力を入れている星状神経節ブロックとはどのような治療なのか、気になることについて聞いた。

(取材日2020年6月18日)

県内でも数少ない神経ブロック専門のクリニック

福井クリニックを開業されるまでの経緯を教えてください。

福井哲郎院長 福井クリニック1

私は広島大学医学部医学科を卒業後、広島大学医学部麻酔科助手、県立広島病院麻酔科を経て、関東逓信病院ペインクリニック科の若杉文吉先生のもとで本格的にペインクリニックについて学びました。その後、広島大学麻酔科に戻り責任者として神経ブロック治療の経験を重ね、さらに中国労災病院麻酔科での勤務を経て開業したのです。松山市柳井町は私の出身地であり、ここにはもともと父親が開業していた福井内科医院がありました。30年間内科診療を行っていた父から承継する形で、1991年に麻酔科・内科を標榜するクリニックとして開業しました。今でこそペインクリニック内科という分野は一般的に知られるようになりましたが、私が開業した30年前は厚生省の認める診療科名にペインクリニック内科は存在しなかったため、院名を「福井クリニック」としたのです。

こちらではどのような患者さんが訪れるのでしょうか。

私の師匠でもある若杉先生は、「ペインクリニックは疾患の宝庫」だとおっしゃっていましたが、頭の先から足の先まで、全身のありとあらゆる痛みを抱える患者さんが来られています。神経ブロック治療を専門としていることから、開業当初は三叉神経痛や顔面けいれんの患者さんが多かったのですが、現在は主として高齢の方の運動器疾患、いわゆる腰痛や膝痛、肩や首の痛みなどが圧倒的に多いですね。また帯状疱疹の後の神経痛を防ぐためにも神経ブロックは有用です。神経ブロックを専門とするクリニックが珍しい時代から開業しているので、九州や広島、東京からの患者さんもいらっしゃいましたし、もう20年以上愛南町から通ってくださっている方もいらっしゃいます。

神経ブロック治療を専門とされていますが、どのような治療なのでしょうか。

福井哲郎院長 福井クリニック2

神経ブロックは、痛みが起こっている部位を支配する末梢神経の根元に局所麻酔薬を作用させることで痛みの信号を遮断。血の巡りを助け、筋肉の緊張を和らげ、人間の自己治癒機能をサポートすることで痛みを取っていくという方法です。リハビリなどでは痛みの緩和までにある程度の期間を有しますが、神経ブロックはそれよりも早く緩和につながることが期待できる方法です。もちろん個人差がありますから、一度で治療が終わる方もいれば、何度か回数を重ねながら痛みを取っていく場合もあります。神経ブロックは50種類ぐらいありますが、開業医では病院に比べできる範囲が限られていますので、現在は首から上の痛みに対応する星状神経節ブロックや、腰や背中、胸、首などの痛みに対応する硬膜外ブロックを組み合わせた治療を行っています。

40年の経験を持つ院長による安全に配慮した治療

神経ブロック注射に不安を感じている人もいると思うのですが、安全面はいかがでしょうか?

福井哲郎院長 福井クリニック3

神経ブロック治療は、本を読んだだけではできません。先ほどもお話ししたように50種類ほどありますから、それらを適切に使い分ける知識と技術を要します。何より経験がものを言う分野ですから、しっかりトレーニングを受けた医師が行うことが重要です。当院では患者さんの負担を少しでも減らすため、できるだけ細い針を使い、最短時間で処置が終わるよう努めています。そして神経ブロックの後は患者さんを観察し、些細な変化にも迅速に対応するため処置室をワンフロアとしていますが、これもペインクリニック科の基本です。治療に要する時間はその後の観察も含めて1時間ほどが目安ですが、基本的には局所麻酔薬の効果が落ち着くまでお休みいただきます。

先生が注力されている星状神経節ブロックは、ほかのブロック注射とどのような違いがあるのですか?

星状神経節ブロックは、非常に守備範囲が広いのが特徴です。血の巡りが悪いところに痛みは起こりますから、血行を改善することはとても大切なこと。また、星状神経節ブロックにより自律神経の中枢である視床下部の血行の改善を図ることができ、体が本来持っている自己治癒力を助けることもできると考えられます。若くて働き盛りなのに意欲が減退する男性や、更年期障害を抱える女性など自律神経系の異常を訴える方も最近増えていますが、そのようなときにも星状神経節ブロックが適する場合があります。

診療において大切にしていることを教えてください。

福井哲郎院長 福井クリニック4

まずは患者さんの話をしっかりと聞くことですね。それは若杉先生のもとで修業をしていた頃に叩き込まれました。いくつも病院を回ったが痛みの原因がわからず、悩みに悩んで最後の砦のような心情で来られる患者さんも多いので、初診では抱え込んでいることを全部お話しいただく時間を取ります。そしてそれをしっかり受け止めることが大切。カルテに記録することで患者さんの安心にもつながると思いますからね。患者さんのお話の内容と、最初の印象でどこにアプローチをすればいいか探っていきます。

痛みに悩む人々の、最後の砦として

患者さんとの印象的なエピソードを教えてください。

福井哲郎院長 福井クリニック5

病院の麻酔科に勤務している頃、胃の手術を受けたご高齢の患者さんが、術後にしゃっくりが止まらなくなってしまったことがありました。それが1ヵ月近く続いて、ご飯も満足に食べられず、寝ている間も出続けるので消耗が激しくて。なんとかできないかと担当の外科医師から相談を受けたのです。しゃっくりを引き起こす横隔膜の神経ブロックなどいろいろと試み、最終的に持続硬膜外ブロックという方法が適していたようで、患者さんはもちろん主治医の外科医師にも相当喜ばれましたね。やはり喜んでいただける瞬間、感謝のお言葉をいただくというのは医師冥利に尽きます。

お忙しい毎日だと思いますが、休日はどのように過ごされているのですか。

これを話すと皆さんに驚かれるのですが、70歳になってバイクの免許を取得したので、仕事が落ち着いた休日、天気の良い日はもっぱらツーリングです。バイクに乗ることは若い頃からの念願だったのですが、危ないからと反対されてずっと諦めていたのです。それが70歳で高齢者講習を受けるため、およそ半世紀ぶりに自動車教習所へ行ったとき、「これを逃したらもうチャンスはない!」と一大決心。すぐに申し込みしました(笑)。時間もお金もかかりましたが、無事に小型二輪の免許を取得することができ、今は石鎚山スカイラインや佐田岬などいろんな場所へツーリングしています。景色の良いところを走るのは本当に気持ちが良いですよ。

最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

福井哲郎院長 福井クリニック6

70代に突入し、今の形でクリニックを続けられるのはあと数年だろうなと思い、そろそろ次のビジョンを考えているところですが、できれば規模を小さくした形で細々と、痛みに悩む患者さんをじっくりと診ていきたいと考えています。ペインクリニック科というところは、最後の砦みたいな存在じゃないかなと思うのです。痛みは慢性化するほど治すのが難しく、治療は早いほど望ましいので、病院をいろいろ回ってみたけれども一向に痛みが治まらないという方、痛みに関することでどうしようもなく困ったときにはぜひ一度ご来院いただけたら。もしかしたら力になれることがあるかもしれません。痛みを感じて、受診してみようという一つに、当院を選んでくださったらうれしいです。

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