中西 徹 院長の独自取材記事
中西内科医院
(松山市/勝山町駅)
最終更新日:2024/04/03

松山市の新立エリア内、中ノ川通り沿いに位置する「中西内科医院」。開業から約60年という長い歴史を経て、2023年に3代目として中西徹院長が就任。一時期は先代である父の代での閉院も検討していたが、紆余曲折の後その歴史を継承する形に至ったという。医院では長年継続してきた地域のかかりつけ医としてはもちろん、代替わり以降は「加齢へのケア」という考え方の啓蒙にも力を入れる。「加齢に伴って起こり得る不調を早めにケアする」という価値観のもと、患者の考え方のアップデートを図り、生活のアドバイスからエイジングケアまで、患者の悩みやニーズに応える中西院長。インタビューでは、その人となりや医師として注力する分野など、幅広い話を聞いた。
(取材日2024年2月8日)
診断から治療まで、患者のトータルケアにやりがい
まずは医院の歴史について教えてください。

正確には把握していないのですが、祖父による開業がおそらく60年近く前でしょうか。当時は近くの新立商店街も盛り上がっており、大勢が暮らす地域を支えるべくこの場所での開業を選んだのかな、と。祖父の後は父が当院を継ぎましたが、昨年亡くなりました。実は父が闘病中の時に、ゆくゆくは閉院しようか、と相談していました。私が提供したい医療がまだ愛媛には受け入れられないのではないか、という思いがあったため、東京で開業する構想をしていたんです。しかし、父に代わって時々外来を行うにつれて、当院の歴史と大切さを患者さんを通して実感するようになったんです。また、高校を卒業してからずっと関東にいたため、少しでも父の側にいてあげたいという思いもありました。次第に「今継がないと後々きっと後悔する」と思うようになって、当初の方向性から一転、医院を継ぐことにしたんです。結果昨年から私が3代目の院長を務めることになりました。
医師をめざされたきっかけは何だったんでしょう。
人の役に立つ仕事をしたいという思いは昔からありましたが、初めから医師をめざしていたわけではありません。幼い頃から動物と触れ合う機会が多かった影響もあってか、初めに頭に浮かんだ職業は獣医師でした。ただ、父や祖父など医療に携わる人間が身近にいた影響もあり、次第に医師という職業を志すようになりました。医師になった後、研修医時代にさまざまな所で勉強させていただく中で、幅広い症状に対してマルチな対応が必要となる内科診療にやりがいを感じるようになりました。内科の中でも、診断から治療までを完結できる内視鏡治療に興味を持ち、消化器内科の道に進みました。
先生ご自身の経歴についてもお伺いできますか。

医学部受験の結果昭和大学へ進学し、以降は長年関東で生活をしていました。卒業後も同大学の関連病院で研修・勤務し、そこでは主に内視鏡での診療に携わりました。その中で患者一人ひとりに対し、よりトータルにケアやサポートをしたいと考えるようになった結果、当時徐々に認知が広がりつつあった在宅医療の分野に興味が向き始めたんです。そこで、2018年に大学病院を退職し、在宅医療を専門とする病院へ入職しました。そこでは約5年の勤務の間にたくさんの患者さんを診療し、その中で加齢のケアにも興味を持ち研鑽を積みました。その後、先述の経緯をきっかけに、関東から愛媛へと戻ってきて今に至るというわけですね。
世界的に広まりつつある「加齢へのケア」価値観
「加齢へのケア」に興味を持ったのはなぜですか?

在宅医療を専門にしていた頃、同じ80歳の患者さんでも、寝たきりの方もいれば足腰が立派でまだまだ活動的な方もいて、大きく分かれるもんだなあと思いまして。疑問に思って私生活を調査してみると、やはり元気な方は日頃から食事に気を使っていたり、若い頃に運動習慣があったり、そういった生活の蓄積があることに気づいたんです。病気と同じく加齢でも、身体が思うように動かなくなることに対して歯がゆさを感じる方はやはり多いです。加えてご家族にも、場合によっては介護の負担などが加わりますよね。人間年を取ることは避けられませんが、生活習慣病などと同じように、加齢もケアできるのではと考えます。身体機能の衰えの曲線下降をなるべくなだらかにしていくために、アドバイスができればと思っています。
老化に伴って起こり得る不調に、意識的に対策しようという試みですね。
そうですね。実はこの考え方はすでに世界的に広まりつつあり、医療の世界では加齢に対しての常識も少しずつ変化しています。「加齢性疾患」という名称で呼ばれ、がんや外傷、感染症などと同様に、病気の一種として扱われるようになってきました。特に日本は平均寿命も年々伸び、世界的に見ても今や立派な長寿大国です。65歳で定年退職を迎えても、定年後のいわゆるセカンドライフが15~20年以上あるのが当たり前になっていますよね。日々勤しんでいた仕事を離れた途端、やることがなくなり認知機能や身体機能が低下する、という話も珍しくありません。20年以上にもわたる長い余生を過ごすなら、やはり健康で元気な状態の方が快適ですし、結果として医療費の負担も軽くなります。そのためにはセカンドライフの時期に訪れる加齢へのケアを心がけ、身体機能の衰えをなるべく緩やかにすることが重要なのです。
加齢のケアを心がけるにはどうすれば良いのでしょうか?

さまざまな病気の予防にもいえることですが、一番は健康的な食事と適度な運動といった生活習慣を心がけることです。いわゆる生活習慣病などにつながる生活の乱れを正すことは、最も重要でかつ具体的な対策だと考えています。もちろん、そもそも病気にならないことも大切ですから、当院ではさまざまな検診も推奨し、体の異変を未病の状態で発見することにも注力しています。
健康増進のためのケアを。心身の土台作りをサポート
インターネットやSNSを活用しての情報発信にも力を入れているんですよね。

そうなんです。病気で不調になったならともかく、元気なのに受診しようとは思いませんよね。こちらがあれこれ言う前に、まず「加齢へのケア」を知ってもらい興味を持ってもらうことが重要かなと思っています。関東からの移住を経た体感として、やはり先述のような「加齢へのケア」という価値観や、健康としてのエイジングケアに対する知識はまだまだ愛媛では普及の余地があると感じています。美容としてのエイジングケアは、女性を中心に愛媛でもアンテナの高い方はいらっしゃいますが、それはエイジングケアの一部分でしかありません。美容はあくまで健康の一部であり、正しい健康状態が基盤にあってこその美容です。普段から美容や健康に対する意識の高い人だけではなく、今まで興味がなかった人にも、SNSを通じて知っていただきたい。その意識や行動が、生活習慣病の予防にもつながります。そういった目的で定期的に情報発信を行っています。
お休みの日は何をして過ごされていますか。
月1回程度は東京や大阪に旅行に行っています。そこで現地の友人知人に会って食事をしながら、最先端の情報をアップデートしています。あとはジム通いでしょうか。昔はテニスやサッカー、野球などの球技スポーツをいろいろしていたのですが、仕事をしながらだとなかなかできる機会も減ってしまって。その分ジムに行って体力・筋力を維持できるよう鍛えています。皆さんに加齢のケアを啓発している分、私もしっかり運動習慣は持っておきたいですからね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

長年祖父や父が守ってきた医院の歴史を紡いでいくと同時に、加齢や健康に対する新たな価値観を、医院を拠点として今後より広げていきたいとも考えています。従来のように地域のかかりつけ医として気軽に頼っていただきつつ、長く健康に過ごすことを望む方々へ届けていけるとよりうれしいですね。日頃の生活習慣の悩みやちょっとした体調不良やエイジングケアの相談など、何でも気兼ねなくご相談ください。当院では院内処方をしているので、患者さんの通院の時間・手間負担も少なく済むのではないでしょうか。さまざまな形で、地域の皆さんの暮らしと健康をサポートさせてください。