永井 新二 理事長の独自取材記事
永井整形外科医院
(坂出市/坂出駅)
最終更新日:2024/09/12

医療・教育施設が充実し、高齢者向けの福祉サービス事業や地域コミュニティー活動も活発な坂出市川津町。「永井整形外科医院」は、この町で1982年に開業した整形外科診療所だ。外光をふんだんに採り入れた、松葉づえや車いすの利用者もゆったりと行き来できる院内設計には、穏やかな気持ちでストレスなく受診してほしいと願う、永井新二理事長の想いが込められている。周辺には広大な共有駐車場を囲むようにペインクリニックと循環器内科の診療所が並び建ち、互いに連携しながら診療を行っている点も大きな特徴と言える。やわらかな空気をまとって患者の訴えに応じる永井理事長は、医療の質を向上するためなら労を惜しまない、生粋の医療人。「地域医療を守り続けることが、私たちの使命」。そう告げる表情からは、熱く揺るぎない信念が見て取れた。
(取材日2024年7月10日)
隣接するペインクリニックや循環器内科と密に連携
クリニックの歴史をお聞かせください。

当院は1982年に、父が整形外科有床診療所として開業しました。現在は8法人で31事業所を有する大規模グループを母体としています。グループでは国際的な人材交流制度の活用を方針としており、当院でも国籍を問わず、皆仲良くスキルアップ・キャリアアップに励んでいます。私は幼稚園の頃から父の医学書を眺めるのが好きで、中学・高校時代は診療所の2階に住んでいたこともあり、父の仕事を間近で見るうちに、整形外科の医師を志すようになりました。継承は2006年。この場所に診療所を建て替えたのは、2014年のことです。今では2人の弟たちも、同じ敷地内でペインクリニックと循環器内科の診療所を開業し、お互いに密に連携して診療を行っています。
ペインクリニックと循環器内科とは、どうやって連携しているのですか?
痛みが強く、リハビリテーションができない方などにはペインクリニックをご紹介しますし、ペインクリニックからもリハビリテーションを依頼されるなど、毎日のように連携しています。隣接地で双方の治療を受けられれば、治療期間の短縮や治療効率の向上が期待できますから、患者さんにとってはメリットが大きいと思います。また当院には0歳から100歳まで幅広い年齢層の方々が来られますが、特にご高齢の方が多いので、内科疾患をお持ちの患者さんの治療やお薬のことなどは、循環器内科の弟に相談します。3つの診療所がそれぞれ機能的に連携できることは、安心感のある医療の提供にもつながるでしょう。
勤務医時代は、どのように研鑽を積まれましたか?

川崎医科大学を卒業した後は、岡山大学病院の麻酔科蘇生科に入局しました。入院病床のある診療所の継承を視野に入れ、集中治療室や手術室で、全身管理や救急医療の経験を積もうと考えたからです。その後は岡山赤十字病院の麻酔科にも勤務した上で、岡山大学病院の整形外科に移り、さらに岡山・高知・丸亀の総合病院でも数多くの症例を経験。外傷治療から人工関節置換術、脊椎外科、手外科、腫瘍、小児脳性まひまで、さまざまな分野の治療や手術に携わりました。あえて専門領域を設けなかったのは、町のかかりつけ医だった父の姿が自分の目標だったからです。広い視野を持ち、オールマイティーな知識や技術を身につけるため、形成外科でのやけどの植皮手術や、リハビリテーション科のカンファレンスにも参加していました。こうした経験は、現在の診療にも生かされていると思います。
約10年の間で、患者さんとの向き合い方も変わっていったそうですね。
患者さんにとっては、命を預ける主治医がすべて。周りにたくさんのドクターがいたとしても、主治医はたった一人しかいません。私はちょうど整形外科へ移ったばかりの頃に、先輩医師からそう教えられました。主治医としての責任感を持って、担当患者さんと向き合うこと。その心構えは、この30年来ずっと胸に刻み続けています。
患者の声に耳を傾け、保存療法を極める
先生の診療理念を教えてください。

患者さんの声、訴えに対して真摯であることです。まずは問診によって患者さんのおっしゃることを傾聴し、誤解のないよう正しく理解することに努め、必ず患部の視診と触診を行った上で、必要と思われる検査を実施します。昔も今も、医療の現場では五感のすべてを使って診察を進めることが何より大切だと思っています。さらにもう一つ理念に掲げているのが、保存療法を極めるということです。軽度の骨折手術などには対応しますが、できるだけ手術をせずに、注射やリハビリテーションといった侵襲の少ない治療を行うというコンセプトを、スタッフとも共有しています。そして、そのために先進の検査機器を備えて、迅速かつ精密な診断と、安全性に配慮した治療につなげることを心がけています。
具体的には、どのような検査機器を導入していますか?
エックス線やCT、MRIなどに加えて、十数年前から超音波診断装置を導入しています。近年は整形外科分野でも有用とされているものですが、十数年前の当時はまだ活用が進んでおらず、教育体制も整っていなかったため、人を頼りながらその技術を学んでいきました。現在はほぼすべての症例において、日常的に超音波診断装置を活躍させています。薬剤や麻酔薬を注射する際にも、リアルタイムで針の先の患部を観察することで、より処置の精度や安全性に配慮できていると感じます。院内ではその他にも、骨の状態や骨粗しょう症の治療効果などを評価する骨密度測定装置や、神経に電流を流し、手足のしびれなどの原因を特定する神経伝導検査装置をそろえました。
注射には種類があるのでしょうか?

痛みの原因となる神経が突き止められた場合に、その興奮状態を落ち着かせる目的で、神経の表面付近を狙って薬剤を注入する神経ブロック注射。筋肉を包んでいる筋膜と筋膜の隙間に薬剤を注入することで、痛みの改善につながると考えられているハイドロリリース。さらに、腱付着部の炎症や変性を改善するための注射、関節内への注射など、病態に合わせてさまざまな種類の注射を使い分けています。いずれの治療においても超音波診断装置を併用することで、治療精度や安全性の向上をめざしています。
ピラティスを取り入れたリハビリテーションを実践
リハビリテーションにも力を入れていますね。

注射などで痛みの緩和が図れた後は、リハビリテーションを通じて、根本的な原因の解決にあたることが必要です。難治性の痛みを抱える患者さんに対しては、ペインクリニックの治療と同時進行でリハビリテーションを進めながら、相乗効果を狙います。リハビリテーションの結果を数値化して、患者さんのモチベーションにつなげることもありますね。リハビリスタッフには、患者さんの動きをよく観察して、機能不全に陥っている部位を早期に発見するよう伝えています。肩の機能不全が原因で腰に負担がかかり、腰痛が生まれている患者さんであれば、肩にも腰にもアプローチしなければなりませんから。さらに当院では痛みの再発防止のため、リハビリテーションにピラティスを取り入れています。体幹を意識するピラティスは、正しい体の動かし方や、体づくりの指導に役立っています。
休日はどのようにお過ごしですか?
以前はトライアスロンの大会に出場していましたが、新型コロナウイルス感染症の流行以降は、診療所の周辺でランニングをしています。入院患者さんがいらっしゃるので、何かあった時のために、あまり遠出はしません。あとは自分自身でもピラティスを続けていますし、3歳から続けているピアノを奏でたり、読書をしたりして気分転換することもありますよ。
最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

当院は、グループ診療所との緊密な連携によって、質の高い保存療法の提供をめざしています。難治性の痛みでお困りの方や、内科的な持病によって慎重に治療を進める必要がある方は、当院へご相談ください。近年、高齢者の間で増加傾向にある背骨の圧迫骨折などは速やかにMRIやCTで診断し、手術を要する場合は、高度医療機関へ搬送。当院で対応が可能な場合は、入院初日からリハビリテーションを開始します。私たちの使命は、医療と介護の2軸で、川津町地域を守り続けることです。その使命さえ見失わなければ、めまぐるしく変化する社会情勢にも、柔軟に対応できると信じています。これからも自分たちの信念を貫きながら、地域のため努力を続けていきますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。