長谷川 博司 副院長の独自取材記事
長谷川医院
(廿日市市/広電廿日市駅)
最終更新日:2025/04/03

廿日市駅から徒歩約8分の場所に位置する「長谷川医院」。今年で67年目を迎える歴史ある医院だ。今回話を聞いたのは院長の息子で副院長を務める長谷川博司先生。長谷川副院長は工業大学に進学して一度違う道を進んだが、医師になる夢を諦めきれず、医学部を受験。その分苦しかった経験もあったという。しかし「だからこそ、人の苦しみや弱さを理解できる。そんな自分にしかできない診療がある」と語る長谷川副院長にじっくりと話を聞いた。
(取材日2025年3月4日)
地域の医院だからこそできる密なコミュニケーション
とても歴史ある医院だと伺いました。

当院は1958年に祖父が開院し、今年で67年目を迎えます。祖父の時代の病院は、今のように専門が細かく分かれているわけではなく、「体のこと全般を診る場所」だったようです。祖父自身は内科医でしたが、地域の方々からさまざまな症状の相談を受けていたと聞いています。その後、父が院長として引き継ぎ、現在に至ります。そして、いずれは私がこの医院を継ぐ予定です。長い歴史を大切にしながらも、時代に合わせた医療を提供できるよう、より快適に通院してもらえる環境づくりにも力を入れています。例えば、カルテの電子化を導入する準備を進めたり、見えづらかった当院の看板をよりわかりやすい場所に設置したりと、少しずつ改善を重ねています。
副院長に就任して約1年ですね。現在の心境を教えてください。
副院長に就任したばかりの頃は、患者さんに「どなたですか?」と聞かれることもありました。でも、「院長の息子なんですよ」とお伝えすると、「あの小さかった息子さんが!」と驚かれつつも、皆さん温かく迎えてくださいました。子どもの頃から知っている患者さんにお会いすることもあり、地域に根づいた医院だからこそのつながりを感じる場面が多いですね。ただ、開業医ならではの難しさも実感しています。総合病院と比べると、できる検査や治療に限りがあるため、その中でいかに適切な診療を行うかという点は常に意識しています。一方で、当院のような地域に密着した医院だからこそ、患者さんと密にコミュニケーションが取れるという強みもあるんです。近所のスーパーに行った際に患者さんとばったり会って、そのまま立ち話をすることもよくあるんですよ。これからも、地域の皆さんの健康を支えられる医院として、温かい診療を続けていきたいと思っています。
院内でこだわっているところはありますか?

当院のこだわりの一つは、地域の病院ながらCTを導入していることです。一般的に、CT検査は大きな病院で受けることが多いですが、なるべく当院で診断を完結できるようにと導入しています。さらに詳しい検査が必要な場合や他院への紹介が必要になった際も、データをすぐに送れるので、患者さんの負担を減らしながらスムーズに対応できるのが強みです。また、院内処方を行っているのもこだわりの一つです。体調が悪いときに、診察を受けた後で処方箋を持って薬局に行くのは大きな負担になりますよね。当院では、診察からお薬の受け取りまでを一度の会計で済ませられるので、患者さんの負担をできるだけ軽減できるようにしています。
1番大切にしていることは、患者と信頼関係を築くこと
どのような症状の方が多く来院されていますか?

当院には風邪をはじめとする内科的な症状で来院される方が多いです。特にご高齢の方の受診が多く、中には100歳近くになっても通ってくださっている患者さんもいらっしゃいます。父の代からの長いお付き合いの方も多く、ずっと変わらず当院を頼ってくださっていて本当にうれしいです。最近では、地域の土地開発が進んだ影響で、若い世代の患者さんも増えてきました。小さなお子さんを連れたご家族や、働き盛りの世代の方も多く、地域の医療ニーズの変化を感じています。また、当院では発熱をしている患者さんの診療にも対応しています。感染症のリスクを考慮し、発熱症状がある方には別の入り口から入っていただくなど、他の患者さんとの接触を極力減らす工夫をしています。これからも、地域の皆さんが安心して通える医院であり続けられるよう、環境を整えていきたいと思っています。
診療時に心がけていることを教えてください。
患者さんとしっかり向き合い、信頼関係を築くことを大切にしています。診察の際は、カルテばかりを見るのではなく、患者さんの顔を見て話をすることを意識しています。ちょっとした表情の変化や仕草から、言葉にしきれない不調が伝わることもありますし、何より「話しやすい」と思ってもらえることが大切だと思っています。また、聴診や血圧測定などの基本的な診察も私自身で行うようにしています。当たり前のことのようですが、実際に自分の目で見て、手で触れて診察することが、患者さんの状態を正しく把握するために不可欠だと思うからです。医療機関に来るということは、多かれ少なかれ不安な気持ちがあると思うので、しっかり向き合い、安心してもらえるよう心がけています。
訪問診療にも対応しているそうですね。

そうなんです。「通院が難しくなったけれど、これからも診てほしい」と言ってくださる患者さんがいる限り、できる限りお伺いしたいと思っています。この方針は、開業当初からずっと変わりません。昔は車で40分ほどかかる場所へも訪問診療に行っていたそうです。今も可能な限りご自宅へ足を運び、患者さんが安心して過ごせるようにサポートしています。患者さんの人生に最後まで寄り添うことは私のポリシーの一つなんです。最期まで「この先生に診てもらえて良かった」と思ってもらえるように、訪問診療を通じて、これからも地域の皆さんの健康を支えていきたいですね。
地域住民の健康と幸せを支えるために
医師をめざしたきっかけは何でしたか?

祖父も父も医師だったので、小さい頃から「医師」という職業はとても身近な存在でした。ただ、だからといって自然とその道に進んだわけではなく、実は一度工業大学に進学し、まったく違う分野に進んだんです。卒業後はさまざまな仕事を経験しましたが、どこか違和感があったんですよね。本当は、子どもの頃から医師になりたかったんだと思います。でもその気持ちに気づかないふりをして、別の道を選んでいました。しかし、どうしても医師になる夢を諦めきれず、再度大学受験を決意したんです。その頃にはすでに私は30代後半で、遠回りしたからこそ、患者さんの気持ちに寄り添い、さまざまな視点で診療できるのが私の強みだと感じています。決して簡単な道のりではありませんでしたが、その分、医師としての人生をより大切に思えるようになりました。今はこの道を選んで本当に良かったと心からそう感じています。
休日はどのように過ごされていますか?
仕事がある日はどうしても忙しくなってしまうので、休日は家族との時間を大切にしています。子どもが3人いるので、にぎやかで大変なこともありますが、それ以上にやっぱりかわいいですね。一緒に過ごせる時間は限られているので、なるべく子どもたちとの思い出をたくさんつくりたいなと思っています。 特に私はキャンプが大好きなので、時間ができると家族を連れてよく出かけています。テントを張って、焚き火を囲みながらご飯を食べたり、自然の中でゆっくりしたりする時間がとても好きです。普段は慌ただしい日常を送っている分、こういう時間があるとリフレッシュできますし、何より家族で一緒に楽しめるところもいいですよね。 キャンプって、ただのアウトドア遊びではなく「不便を楽しむ」ことも魅力の一つだと感じています。準備も大変ですが、それも含めて楽しいんです。
最後に、今後の展望を教えてください。

ここは自分が生まれ育った街ですし、地域に根差した医療をこれからも続けていきたいです。病気やケガをしたときに気軽に相談できる存在として、地域の皆さんの健康を支えて幸せに過ごすお手伝いができたら、それが何よりの喜びですね。大きなことはできないかもしれませんが「この医院があるから安心」と思ってもらえる場所にしたいです。僕は廿日市が大好きなんですよ。生まれも育ちもこの街で、けん玉のイベントがあり、人も温かくて、街としても活気があるなと感じています。そんな街の一員として、これからも地域の皆さんが少しでも元気に、そして安心して暮らせるように、どんな些細なことでも気軽に相談してもらえるようなそんな医院をめざしていきたいです。