平田 真奈 院長の独自取材記事
豊田内科胃腸科
(呉市/呉駅)
最終更新日:2023/02/10

JR呉線呉駅から長野木循環線に乗り、伏原東バス停下車、徒歩1分。青蓮寺北交差点にある「豊田内科胃腸科」は1979年の開業だ。道路を挟んだ向かい側には同院が管轄する通所リハビリテーションとグループホームもあり、近隣住民の健康を支えるかかりつけ医として頼られる存在である。インタビューに応じた平田真奈先生は、2022年6月に院長に就任した。父である豊田秀三理事長の意思を継ぎ、外来での診療・在宅医療に奔走する日々を送っている。こちらの質問に対し、医療の道を選んだ経緯から地域の総合的な診療を行う医師の役割まで、はきはきと笑顔で答えてくれた平田院長。明るく朗らかな印象だが、患者とのエピソードを語りながら目に涙を浮かべる場面も。医療や患者への熱い想いが伝わってくる平田先生にじっくりと話を聞いた。
(取材日2022年12月14日)
内科以外のお悩みにも医師として初期対応
どのような患者さんが多く来院しますか?

年齢を問わず患者さんを受けつけていますが、ご高齢の方が多いです。「とげが刺さった」「けがをした」「湿疹ができた」など、内科以外にも、さまざまなお悩みの患者さんが来ます。どこの診療科を受診していいかわからないとか、とりあえずかかりつけだから受診するという感じですね。その場合、「専門外です」とは言わずに、まずは診察し、例えば外傷も麻酔や縫合が不要なら処置は可能ですし、他の診療科や専門的な医療機関を受診する必要があればそちらに送るというように、最初の判断をするのは地域の総合的な診療を行う医師として果たすべき役割だと思っています。
医師をめざしたのは、後継者になることを求められたからですか?
父の姿を見て医療に興味を持ち、医師が主人公の有名な漫画も大好きだったので、医師になりたいと自然に思うようになったんですが、最初は父に反対されました。父の時代は、今よりも女性の医師は少なく、家庭との両立が難しかったので、苦労させたくないという親心でした。でも、私の決意が固いとわかり、許してくれましたね。川崎医科大学に進み、もともと興味があった外科ではなく内科を選んだのは、大学5年次の実習で内科に魅力を感じたことが大きいです。ただやはり、当時は外科の医師を続けながら出産や育児をするのは厳しいといわれていたことも大きかったです。今の研修医制度なら、そんなことはないと思いますけどね。ただ、研修先の呉共済病院が研修医を育てることに力を入れていて、プログラムも充実していました。救急医療の現場なども経験でき、とても恵まれていたと思います。
クリニックを継承されるまでの医師としての歩みを教えてください。

呉共済病院では、ご指導くださる医師のもと、積極的に治療に関わることができ、同期の仲間と切磋琢磨しつつ、多くのことを学びました。いつ、どのような患者さんが救急搬送されてくるかわからないので、なるべく病院に詰めるようにして、さまざまな症例を経験し、先輩から吸収しようと必死でしたね。普通はなかなか触らせてもらえない内視鏡も、実際に経験しながら技術を習得することができました。その後、夫の仕事の都合で東京にて10年間ほど過ごすことになり、ちょうど子育ての時期だったので、非常勤の内視鏡の医師として亀田総合病院附属幕張クリニックや聖路加国際病院に勤務し、内視鏡のスキルアップに励みました。
在宅医療も内視鏡検査の負担軽減も、すべて患者のため
内視鏡検査の苦痛を軽減するための工夫をされているそうですね。

苦痛軽減のために鎮静剤を注射すると、頭がぼんやりしたり車の運転ができなくなったりするので、なるべくこれまで培った技術で楽に検査できるようにしています。胃カメラを挿入するときに緊張した状態だと挿入しづらく苦しいけれど、「鼻で吸って、口で吐いて」と声かけして呼吸をサポートし、内視鏡が入るタイミングで、ごくんと飲み込んでいただくと、すっと入りやすいんですよ。大腸検査の場合は、大腸はおなかの中で浮遊している部分とくっついている部分があるので、看護師さんに手伝ってもらって体位変換しながら、なるべく痛く感じないように挿入します。患者さんが痛みを感じた状態で押し込むと苦痛が増すため、患者さんが「つらい」と言ったら、いったん少し戻し、改めて角度を変えて挿入します。また、空気の代わりに大腸内に吸収されやすい二酸化炭素を充填して検査するため、検査後のおなかの張りの軽減もめざせます。
在宅医療では24時間・365日対応できる体制を整えているんですね。
在宅医療は、「通院できなくなった患者さんが住み慣れている家で医療を受けられるように」と、父が始めたもの。私も患者さんやご家族の想いをくみ取るのが地域医療だと思っているので、大切に継承していきたいと考えています。午前中の外来診療を終えたら、午後はご自宅や入居されている介護施設へ訪問します。曜日によっては夕方からの外来診療も担当して1日フル稼働になりますが、苦ではありません。もちろん、決まった訪問日以外も、緊急の呼び出しがあれば、夜中でも対応します。まずは電話で状態を聞いて、実際に診察に行くか、手持ちのお薬で対応するか、すぐに救急車を呼ぶかの判断をします。だから、常に携帯電話がつながるようにしていて、マナーモードにするのは診察中だけなので、夜中のチャットツールの通知音にも反応して飛び起きちゃうんです。
患者さんとの忘れられないエピソードはありますか。

父から「医師は患者さんの家族ではないから感情移入しすぎてはいけない。一番つらいのは家族さんだよ」と、ずっと言われてきました。でも、研修医時代、同年代の女性患者さんに、感情移入しないように、友達みたいに接しないようにと思いつつ、亡くなったとき、こらえきれずに泣いてしまいました。家族さんには「こんなに思ってくれる先生に出会えて良かった」と言われましたが、やはり、患者さんに寄り添いながらも一線を引くことが大切だと肝に銘じて診療に臨んでいます。
受診のハードルを下げ、どんな相談も真摯に耳を傾ける
お忙しい毎日ですが、オフタイムは何をしていますか。

料理が好きで、通勤中は運転しながら、「何を作ろうかな」と考えているくらいなので、お休みの日は、よくお菓子作りをしています。以前は旅行が好きでしたが、新型コロナウイルス感染症の流行ですっかりインドア派になり、お花を生けたり、棚を作るなどDIYを楽しんだり、家で過ごすことが多いですね。仕事がある日は、夜に自分の時間が取れると、ドラマや映画を観て気分転換しています。
診察の際に心がけていることはありますか。
患者さんのお話をよく聞くことです。症状の説明が要領を得ない方もいらっしゃいますが、耳を傾け、意図をくみ取るように努めます。以前、「これまでに経験したことない頭痛があった」と、受診した患者さんが、そのときは症状もなかったけれど、お話の途中で倒れ、くも膜下出血だった、ということがありました。ご本人がおかしいと感じて受診したからには、たとえ症状をうまく説明できなくても、診察時には症状が治まっていても、何らかの異変が起きているわけです。その原因を突き止め、適切な治療を行うのが私たち医師の務め。じっくりお話を伺って検査を行い、原因を探っていきます。もしも、結果的に一時的な問題で異常がなかったとしても、そのことがわかって安心していただけたら言うことないですよね。私たちは毎日、多くの患者さんを診ているけれど、患者さんからしたら頼れる一人の医師なのだということを忘れずに、真摯に向き合いたいです。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

地域の総合的な診療を行う医師として地域の皆さんに頼られる存在でありたいと考えています。「内科だから外科や皮膚科のこと聞いたらいけないんじゃないか」「これくらいのことで受診しないでくれと言われるんじゃないか」などと気にせず、健康のお悩みをなんでも気軽に相談できるクリニックでありたいですね。当院で検査や治療が可能なケースなら対応し、他の診療科や、より専門的な医療機関への受診が必要なケースは連携する病院などにご紹介する。そういった振り分けをするのが地域の総合的な診療を行う医師の役目なんです。例えば、「高血圧で通院しているけど呼吸器のことを聞いてみたいな」とか、なんでも相談していただきたいです。医療機関に行くハードルを下げて、少しでも患者さんのお役に立ちたいですね。相談できる場所があるというだけで、安心につながるのではないでしょうか。
自由診療費用の目安
自由診療とはED診療/1650円~、AGA診療/275円~