増岡 俊治 理事長の独自取材記事
沖野医院
(広島市安佐北区/河戸帆待川駅)
最終更新日:2026/05/19
広島市安佐北区・可部エリアの住宅街にある「沖野医院」。バス停から程近い場所に位置し、地域住民の身近なかかりつけ医として長年診療を続けてきた医院だ。院内は歴史を感じさせながらも丁寧に整えられ、落ち着いた空間が広がる。内科、循環器内科、小児科を掲げ、風邪や腹痛といった日常的な症状から生活習慣病、認知症まで幅広く対応する一方、循環器内科の専門性を生かした診療にも力を注ぐ。1995年から同院で診療にあたる増岡俊治理事長は、救急の現場で循環器医療に携わってきた経験を持ち、現在は医師会活動にも尽力する地域医療の担い手だ。「患者さんの話をしっかり聞くことが大事」と語る増岡理事長に、同院の診療や地域医療への思いについて話を聞いた。
(取材日2026年4月7日)
救急循環器医療から地域医療へ、30年の実直な歩み
まずは医師を志したきっかけと、循環器内科を専門にされた経緯を教えてください。

広島市南区の出身で、修道高等学校に通っていました。もともと理数系の勉強が好きで、自然と理系に進むだろうと思っていたんです。当時は、成績が良いと医学部を勧められるような空気もあり、久留米大学の医学部に進学しました。当時の学年は450人くらいいたんですが、そのうち80人くらいが医師になったのではないかと思います。卒業後は広島に戻って広島大学で内科領域の学びを深め、消化器や呼吸器、循環器などをローテーションで回る中で、だんだん循環器に興味が湧いてきました。上の先生に引っ張ってもらったこともあり、そのまま循環器の道に進むことになりました。
救急の現場で循環器診療に携わってこられた中で、沖野医院に来られた経緯を教えてください。
広島大学での研修後は循環器内科に進み、土谷総合病院や呉共済病院などで勤務していました。循環器疾患は、心筋梗塞のように夜中や明け方に発症することも多く、基本的に24時間体制での対応になります。緊急時にも駆けつけて、チームで一気に治療にあたるというような日々でした。そうした中で、沖野医院の院長を務めていた義理の父が、安佐医師会の会長に就任したことで診療との両立が難しくなり、1995年にこちらへ来ることになりました。ずっと救急医療をやり続けるというわけにもいかないですから、そのタイミングで地域の診療に関わることになりました。
30年近く地域で診療を続ける中で、今のご自身の役割をどう感じておられますか?

沖野医院に来てから、もう30年近くになります。当初は院長として診療の現場を担ってきましたが、2018年からは理事長という立場にもなりました。とはいえ、今も日々の診療が中心であることに変わりはありません。もともと循環器を専門にやってきましたが、こちらでは内科や小児科も含めて、地域のかかりつけ医として幅広く診ることになります。年齢的にこれから先どれだけできるか考えることもありますが、元気なうちは地域医療に貢献していきたいという思いがあります。長く通ってくださっている患者さんも多いですし、その方々をしっかり診ていくことが自分の役割かなと感じています。
幅広い診療と循環器の専門性を併せ持つ医院
どのような患者さんが多く、どんな診療に力を入れておられますか?

この辺りは広島市の中でも少子高齢化が進んでいる地域で、中山間地域に近いような土地柄でもありますので、やはりご高齢の患者さんが多いですね。高血圧症をはじめ、糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病の方が中心になります。内科として来られる方が多いので、風邪や腹痛といった一般的な症状の方もよく診ていますし、幅広く対応しています。小児科も掲げていますが、近隣に専門の先生がおられるので、そちらに行かれる方が多い印象です。その中で、認知症の方への対応も行っており、地域の医療機関や関係機関と連携しながら診療しています。昔から通ってくださっている患者さんも多く、父の代からの方や、子どもの頃に来ていた方が大人になってまた来られるというケースもあります。
循環器内科のご経験は、現在の診療にどのように生きていますか?
もともと循環器を専門にやってきましたので、今でもその部分が診療の軸になっています。心電図や24時間ホルター心電図、心エコー、頸動脈エコーなど、循環器の検査は一通り行えるようにしています。不整脈などは勤務医時代からずっと診てきましたので経験はありますし、実際不整脈で相談に来られる方もいらっしゃいます。ただ、特別なことをしているという感覚はあまりなく、循環器の診療に対応しているところであればどこでも行っていることをやっているという認識です。また、ご家族などに「行ってみたら」と勧められて来られるなど、そういう形で頼ってきていただけることが多いですね。期待があれば、それに応えられるように診ていきたいと思っています。
診療の際に最も大切にしていることは何でしょうか?

やはりまずは、患者さんの話をしっかり聞くということですね。たくさんお話ししてくださる方もいらっしゃいますし、逆にあまりご自身から話されない方もおられるので、そういう時は「咳は出ますか」「腰は痛くないですか」など、こちらから聞いていきます。問診で得られる情報はとても大事だと思っていて、血液データやエコー、エックス線、心電図といった検査の所見はあくまで一部に過ぎません。それだけを見ていると見落とすこともありますので、全体像を把握するためには丁寧な問診が欠かせないと考えています。また、ここでできることには限りがありますので、必要であれば専門の医療機関に紹介することもあります。患者さんにとって一番良い形になるように診療を進めていくことを大切にしています。
医師会と連携し、地域全体の医療を支える
禁煙の外来にも取り組まれているそうですね。

禁煙の外来は、保険診療として認められるようになった頃に始めました。やはり禁煙というのは生活習慣病にも深く関わりますので、大事なことだと思っています。こちらから積極的に勧めるというよりは、希望があれば対応するという形で行っています。新型コロナウイルス感染症が流行した時期は患者さん自体が減っていたこともあって、禁煙目的での受診もかなり減っていましたが、最近は少しずつ戻ってきている印象です。タバコの価格も上がっていますので、「この際やめようか」と考えて来られる方もいらっしゃいますね。なかなか簡単ではないですが、そういう方の後押しができればと思っています。
広島市立北部医療センター安佐市民病院の移転や安佐医師会病院の開設によって地域の医療は変わりましたか?
そうですね。安佐市民病院が移転したことで、旧病院の跡地に安佐医師会病院ができました。ここが後方支援病院として機能するようになったことで、地域の医療の流れが変わってきています。これまでは、安佐市民病院で診てもらった後、すぐに自宅に戻れない方は遠方のリハビリ病院へ転院することも多かったのですが、現在は医師会病院で慢性期を診て、その後自宅に戻るという流れができています。私たちのようなクリニックが紹介し、急性期を安佐市民病院が担い、その後を医師会病院が引き継ぐという形で、地域の中で医療が完結するようになってきました。患者さんにとっても、遠くまで行かなくてよくなったという点で負担は少なくなっていると思います。
医師会活動も含め、今後どのように地域医療に関わっていきたいとお考えですか?

現在、安佐北区医師会と広島県内科会の会長を務めていますが、やはり医師会の仕事というのは、行政と一緒に地域の医療や保険制度を整備していく大事な役割だと思っています。日々の診療が一番大事であることは変わりませんが、それに加えて地域全体の医療体制をどう整えていくかということにも関わっていく必要があり、そこにやりがいも感じています。医療も日々進歩していますので、自分の専門領域については勉強を続けていかないといけないと感じています。医師会活動も含めて、今後とも地域医療に貢献していきたいと思っています。

