盛生 慶 院長の独自取材記事
もりお内科
(広島市中区/舟入幸町駅)
最終更新日:2025/10/21

舟入幸町駅から住宅街を5分ほど進むと、白いタイル張りの直線的な外観が目を引く「もりお内科」が見えてくる。同院は1955年の開業以来、祖父、父、そして現院長である盛生(もりお)慶先生と、3代にわたり地域の健康を見守ってきた。幼い頃から医院の2階で暮らし、医師として働く父の背中を見て育った盛生院長は、自然な流れで医師の道へ。広島大学病院などの基幹病院で肝臓内科・消化器内科の研鑽を積み、2025年に同院の院長に就任した。院内には先進の内視鏡設備や肝硬度測定装置を導入し、患者の負担を抑えた検査体制を整備。専門的な知識と技術をもとに「症状を軽く見ない」「患者さんの不安に寄り添う」姿勢を大切にしている。代々続く院長のバトンを受け継いだ盛生院長に、専門性を生かして地域医療を支えることへの思いを聞いた。
(取材日2025年9月1日)
「地域のかかりつけ医」と「専門性」の両立をめざす
医師になったきっかけは、家族の歴史が原点と伺いました。

当院は祖父の代から3代にわたり、この地域で診療を続けてきました。私は当院の2階で生まれ育ち、幼い頃から父の診療風景を身近に感じながら育ちました。将来のことを強く言われたことはありませんでしたが、自然と「自分もここで皆さんの健康を支えていくのだろうな」と思うようになり、高知大学医学部を卒業後、広島大学病院などで消化器内科・肝臓内科を専門とし、数々の症例に携わってきました。庄原赤十字病院の内科、広島大学病院と広島赤十字・原爆病院の消化器代謝内科、中国労災病院の消化器内科で勤務し、2025年6月に正式に当院の院長に就任しました。地域の方々とともに歩んできた家族の歴史を受け継ぎ、皆さんのお役に立てるよう診療を続けていきたいと考えています。
院長に就任をされてから、設備や環境などで変わったところはありますか?
祖父や父の代から通ってくださっている方も多くいらっしゃいます。祖父の代から通ってくださっている方などは、当院に関して私よりはるかに大先輩なので、改めて身の引き締まる思いがします。これまでの患者さんとの信頼関係を大切にしながら、設備や環境は現在の診察や治療に適した新しいものへ整えています。院長就任に合わせて内視鏡室をリニューアルし、先進の経鼻内視鏡やズーム機能を備えた大腸内視鏡を導入しました。また、待機室や更衣室も新しくし、少しでも安心して検査を受けていただけるよう配慮しています。落ち着いた雰囲気にリフォームし、リラックスしていただけるよう工夫しました。
診察時に心がけていらっしゃることを教えてください。

診療の際に心がけているのは、「専門にこだわりすぎない」ことです。私は消化器や肝臓が専門ですが、将来ここで開業をすることを考え、一つの分野にこだわらずに経験を積んできました。腹痛一つとっても原因は腸だけではなく、尿管結石など別の臓器が原因となっていることもあります。ですから、体全体を見渡して判断する姿勢を大切にしています。また、私自身が片頭痛や原因不明の腹痛を経験してきたこともあって、患者さんの「病気じゃないかもしれないけれど不安」という気持ちには強く共感できます。そのため、患者さんの症状の訴えを軽視せず尊重し、一つ一つ丁寧に向き合うようにしています。
消化器内科、肝臓内科のスペシャリストとして
盛生院長のご専門の消化器内科や肝臓内科について教えてください。

私は消化器内科と肝臓内科を専門にしています。特に肝がんに対するラジオ波焼灼療法は数多く手がけ、広島の中でもかなり多い症例数を扱ったと思います。最近では、アルコールを飲まない人でも肥満や糖尿病などが原因で脂肪肝が進行してしまうことも多く、放置すると肝硬変や肝がんにつながります。そのため早期発見と定期的な検査がとても重要だと考えています。当院では、超音波による肝硬度測定ができる装置を導入しています。これは肝臓の硬さを測定するもので、病気がどの程度進行しているかを見るのにとても重要な機械です。従来は組織を取って調べる必要がありましたが、この機械を使えば体への負担を抑えて病気の進行度を把握することが可能です。クリニックでこの装置を置いているところはまだ少ないと思います。身近な地域のクリニックで専門的な検査が受けられるのは当院の強みだと思っています。
かかりつけ医としての親しみやすさと専門性の両立が強みですね。
はい。かかりつけ医として幅広く対応できる一方で、肝臓や消化器の専門性も発揮できるところが当院の強みです。風邪や生活習慣病といった身近な診療から、肝炎や脂肪肝のフォローアップまで行っています。導入した肝硬度測定装置によって負担の少ない検査で肝臓の状態を把握できるのは、患者さんにとって大きな安心材料となるのではないでしょうか。内視鏡検査も先進の機器に入れ替えた他、地域の高齢の方々だけでなく、お仕事をされている方や、健診で異常を指摘された若い世代の方も検査が受けやすいよう、土曜日の午前中も対応可能ですし、診療時間内なら午後でも検査可能です。検査機器の充実や診療時間の工夫によって、安心して来ていただけるようなクリニックをめざしています。
刷新された内視鏡について教えてください。

もともと内視鏡はあったのですが、古かったため内視鏡室を一新し、安心して検査を受けていただけるよう環境を整えました。先進の設備に入れ替え、苦痛の少ない細い経鼻内視鏡を採用しています。従来の口から入れる検査に比べて吐き気を感じにくく、喉の違和感も少ないため、多くの方にとって負担の軽減が見込めます。大腸内視鏡では送気に二酸化炭素を用いることでおなかの張りを和らげたり、鎮痛剤・鎮静剤を使用することで苦痛の軽減に努めております。またズーム機能を用いることでより詳細な内視鏡診断を行い、治療の要否をその場で判断できるようにしております。ポリープが見つかった場合は、その場で切除できることも多く、日帰りでの対応が可能です。室内は木目調にリニューアルし、待機室や更衣室も新設しました。患者さんが少しでもリラックスできる空間で、安心して検査を受けていただけるよう配慮しています。
早期発見が重要。悩みや不安は気軽に相談を
どのような患者さんが多いですか?

今は、父の代から通ってくださる患者さんがほとんどです。70歳以上の高齢者が多く、高血圧症をはじめ主訴はさまざまです。大きな病院にいた頃は夜に呼び出されることもしばしばで、連日夜中に対応することもありました。やりがいを感じる反面、やはり大変な毎日だったように思います。現在はお一人お一人の症状に寄り添いながら親身に治療ができ、とても充実していると感じています。内科で来院される方が多いですが、これまで培ってきた肝臓内科、消化器内科の経験を少しずつ生かしていきたいと思っています。
今後の展望を教えてください。
今後は、専門である肝臓内科と消化器内科の領域を伸ばしていこうと考えています。今、肝疾患で通院している人はそれほど多くないのですが、肝臓を専門としている医師が少ないため、大きな病院から肝疾患の患者さんを紹介していただくこともあります。大きな病院は非常に混雑しますし、待ち時間も長く患者さんの負担が大きいのが課題です。その点、CTやMRIまでは無理でも、半年ごとのエコーや血液検査は当院で手軽に受けていただけます。「地域のかかりつけ医」としての身近さと専門性を両立させていきたいと思います。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

肝臓や消化器の病気は、症状が出にくい分、早期発見が何より大切です。特に肝臓に関しては専門の医師としてこれまで多くの症例を経験してきましたので、少しでも不安があれば遠方からでも相談に来ていただければと思います。同時に、風邪や発熱などの身近な不調でも気軽に受診していただきたいです。専門性を持った医師であると同時に、「地域のかかりつけ医」でありたいと考えています。3代にわたってこの場所で診療を続けてきたのは、祖父も父も、もちろん私も地域の皆さんのお役に立ちたいという思いがあったから。「こんなことを相談してもいいのかな」と迷うことでも、ぜひ気軽に声をかけていただきたいですね。これからも専門性と地域医療の両立を大切にして、皆さんの健康を支えていきたいと思っています。