宮下 澄人 院長の独自取材記事
石井内科クリニック
(岡山市東区/西大寺駅)
最終更新日:2026/05/25
春には花見客でにぎわう神崎梅園や神崎緑地公園から徒歩圏内にある「石井内科クリニック」。住宅地の一角にて長きにわたり住民の健康を支え続け、現在は宮下澄人(みやした・すみと)先生が2代目院長として診療にあたっている。幅広い診療や迅速な病診連携を行う「何でも屋」に憧れていたという宮下院長。初代院長が築いてきた地域との絆を守りつつ、さらに揺るぎないものにするために、内科だけではなく外科や漢方を取り入れた治療など、患者の悩みに柔軟に対応している。「体調が悪くなくても来てもらえる場所にしていきたいですね」と、住民とのコミュニケーションを大切にしている宮下院長。継承や診療方針などを語る言葉の節々から、多くの先輩医師への強いリスペクトと患者への思いが伝わってきた。
(取材日2026年4月14日)
先代の思いを継ぎ、地域住民に寄り添う医療を提供
先生は2代目の院長にあたると伺いました。どのような経緯で継承されたのですか。

現在は名誉院長を務めておられる石井純一先生が当院を開業されたのですが、実はまったく面識がなかったんです。大学病院などに勤務した後に一度開業しましたが、新型コロナウイルス感染症の流行などの影響で閉院し、再度勤務医をしました。そんな中、石井先生が後継者を探しておられるというお話をいただき、当院で診療するようになったんです。2024年11月に僕が院長と法人の理事長に就任しましたが、石井先生は今も非常勤で外来の診察をされており、代診をお願いすることもあるなど、引き続き支えてくださっています。
クリニックの理念もそのまま受け継いでおられるのですね。
はい。「地域に根差した医療を続けてほしい」と、石井先生から当院を託されました。石井先生は患者さんからたいへん親しまれている方です。当院で診療し始めた頃、日々患者さんと和気あいあいとふれあう石井先生の姿にとても感銘を受けました。まさに地域医療を体現しておられる先生です。当法人はデイサービス施設と高齢者向け住宅、グループホームを運営しており、定期的に医師が訪問診療に出向いたり、体調を崩された利用者さんの往診をしたりしています。これからも施設の利用者さんや地域の皆さんに寄り添った医療を提供し、石井先生のように患者さんを大切にしていきたいですね。
昔から通院されている患者さんが多いのですか。

30年通ってくださっている方など、ずっと来られている患者さんはたくさんおられます。患者さんと一緒に年齢を重ねているという感覚ですね。昔からの患者さんのお子さんやお孫さんの3世代で通われているご家族も増えてきました。近隣にクリニックが少ないということもありますが、遠くの病院よりも相談しやすいのではないでしょうか。スタッフも先代の時代から頑張ってくださっている方が多く、最初は「僕も一緒に混ぜてもらおう」というスタンスで接していました。ですから、スムーズになじむことができましたし、皆と良好な関係を築くことができていると思います。
内科や外科疾患に加え、漢方も活用し幅広く診療
先生は最初から開業医をめざしておられたそうですね。

最初憧れていたのは、某医療漫画の主人公みたいな「何でも屋」。脳から呼吸器、消化器、さらには美容外科まで、あらゆる診療科の手術に携わる医師に憧れていました。父の親友で開業されていた先生の存在も大きかったですね。多くの患者さんから慕われていた非常に素晴らしい医師で、僕も学生の頃から時々食事に誘ってくださるなど、目をかけていただいていました。その先生の影響で「何でも屋」の中でも「町医者」になりたい気持ちが強くなったんです。開業医を志す場合は内科を専門とするケースが多い印象ですが、外傷の縫合にも対応したいと、外科の医局で経験を積みました。実際に開業した暁に、先ほどお話しした先生から「なかなか大変だけど頑張りなさい」と激励の言葉をいただき心強かったのを覚えています。
外科診療の豊富なご経験を、診療ではどのように生かしておられるのですか。
石井先生のご専門が呼吸器内科ということもあり、内科疾患の患者さんが多いですが、「何かの拍子にケガをした」といった外科的なお話をされる方もおられます。以前は他院を紹介していたケースの何割かはそのまま当院で処置できるので、患者さんも楽なのではないでしょうか。特定の診療科を専門とするクリニックがそれほど多いエリアではないので、院長就任以来、「症状に関わらず、とりあえず来てください」というスタンスでやってきました。内科と外科、両方の知見がある状態で、対応できる患者さんは診る、そうでない場合はすぐに病院や専門の医療機関と連携して対応する。そんな仕分け役というか、「ゲートキーパー的なホームドクター」でありたいですね。
こちらのクリニックは漢方も処方されているそうですね。

僕が医師として初めて書いた処方箋が、お出しすることの多い血圧降下剤や胃薬ではなく、「大建中湯」という漢方薬だったんです。このことがきっかけで漢方に興味を持つようになり、漢方専門の外来の先生などのご指導を受けるようになりました。その後、徳島県の病院に漢方治療にたいへんご尽力されている先生に弟子入りして本格的に学び、日本東洋医学会漢方専門医を取得したんです。漢方は診療科にとらわれない、いわば「総合診療科」。感染症の治療が原点であり、漢方薬は免疫力を高めるよう図って治癒力をサポートするというスタンスのお薬なので、当院では風邪やインフルエンザなどの諸症状の治療においてお勧めしています。西洋医学を補完する意味合いで使えるのが漢方のメリットです。漢方に通じていることは医師として強力なツールになると考えるので、今も勉強を続けています。
地域住民が世代を超えて足を運ぶクリニックが目標
診療で心がけていることを教えてください。

僕は割と歯に衣着せぬタイプで、診療でも自分からどんどん話すほうなんです。ただ、当院は高齢の患者さんが多いので、まずはしっかりとお話を聞くことを大切にしています。当院での最初の1週間、引き継ぎを兼ねて石井先生と患者さんの接し方を見学させてもらいました。石井先生は穏やかな方で、やんわりとした語り口で話されるんです。高齢の患者さんとのやり取りを見ていて、「こういう接し方であれば、もっと心を開いてもらえるのではないか」と気づきました。石井先生は僕と年齢が一回り違う大先輩。その背中から多くのことを学ばせてもらい、今では僕の財産になっています。先ほどお話しした父の親友の先生や学生時代の恩師など、素晴らしい出会いに恵まれてここまで来ました。ベテランと言われる年齢になっても尊敬できる方と仕事ができて、しかもクリニックを引き継がせてもらえたのは、本当に光栄でありがたいです。
身が引き締まる思いで継承されたのですね。2代目として、クリニックをどのように育てていきたいですか。
「何となく具合が悪いので話を聞いてほしい」という方、さらには特に体の不調を感じていない方にも、ふらっと立ち寄ってもらえる場所にしていきたいですね。最初に開業したクリニックでは、待合室にいろりを掘って小上がりを作り「お茶を飲みに来てください」という雰囲気にしていましたから(笑)。当院でも、地元の皆さんが気軽に寄ってくれて、「最近この健康法が気になるんだけど」みたいな話をわいわい語り合ってくれたらうれしいです。「おじいちゃんが通っているから」と働き世代のお子さんが健診結果の相談に来る、さらに、帰省しているお孫さんが体調が優れないと言って足を運ぶ、そんなクリニックをめざしています。外科での経験も積んでいるのでやけどや切り傷の処置、術後のケアも可能ですし、病院に紹介する際にもどんな手術が行われるのかなど詳細に説明できます。内科の領域に限らずなんでも気軽に聞いていただきたいです。
最後になりましたが、読者へのメッセージをお願いします。

患者さんが遠くの病院まで通わずに済むように、当院で治療が完結できる疾患については、質の高い医療を提供していきたいと思っています。特に漢方薬については、知識や経験があってこそ症状に合致する処方ができるというのが僕の考えです。当院であれば、例えばアトピー性皮膚炎で定期的に皮膚科に通っておられる方であれば、後方支援的な漢方治療を提案することもできます。どの診療科に行けば良いいかわからない症状でも、遠慮なく話しに来てくださいね。

