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江原 弘貴 院長の独自取材記事

えばらクリニック

(岡山市北区/吉備津駅)

最終更新日:2023/04/18

江原弘貴院長 えばらクリニック main

岡山市北区、国道180号線加茂交差点角で、1979年から診療を続けている「えばらクリニック」。2019年から院長を務めるのは、父でもある先代院長から同院を引き継いだ江原弘貴院長だ。診療は内科、消化器内科に加え漢方診療にも対応。胃・大腸内視鏡検査では高機能システムやカメラ専用の保管庫を導入。総合病院での経験を生かしながら患者にとって負担の少ない検査をめざしている。普段の診療では、検査などで異常がなくとも苦しんでいる患者の訴えを受け止め、漢方診療を試みるなど施せる医療について熱心に考える。誠実に患者と向き合う江原院長にクリニックの特徴や診療方針について話を聞いた。

(取材日2023年2月8日)

麻酔薬なしでの内視鏡検査を試してほしい理由とは

街の目印となるような大きな建物ですね。

江原弘貴院長 えばらクリニック1

はい。先代院長が40年ほど前に入院施設を併設して開業した建物を、2015年に改修し、現在は外来診療のみとしています。診察室や処置室はバリアフリー化し、クリニックのつくりを生かして発熱の外来の患者さんを隔離しながら診察することもできます。昔は院内に厨房もあったのですが、そこは内視鏡室に転用しました。内視鏡は使用前後に水を使いますが、厨房だった場所なので水回りが充実していて使いやすいんです。また大腸カメラでは事前に下剤を使うため、患者さんが気兼ねしないよう、専用トイレも用意しました。

診療科目や診療内容について教えてください。

当院では消化器内科と総合内科診療を中心に、漢方診療や生活習慣病の管理、内視鏡検査にも力を入れています。2019年に父でもある先代院長から当院を引き継ぎましたが、それ以前は当時勤務していた岡山大学病院の総合内科・総合診療科とかけもちでした。ある時、病院の職員さんとの雑談中、実家の話をしたところ「江原先生、絶対にクリニックが向いていますよ」と言われたんです。それで改めて家業を継ぐことを考えるようになりました。患者さんの入院期間は長い人生のほんの一部、大学病院のような大きな病院の勤務医が患者さんと向き合えるのも長くはありません。地域に戻られた患者さんを長く診ていきたいという気持ちが強くなったことも、当院に腰を据えるきっかけとなりました。

胃カメラでの内視鏡検査には、特に力を入れているそうですね。

江原弘貴院長 えばらクリニック2

消化器内科で働くようになってから、胃の内視鏡検査をスムーズに行うこと、内視鏡検査に対する患者さんの心理的なハードルを下げることを、ずっと考え続けてきました。当院では基本的に経口です。喉のほうがスペースに余裕があるので、患者さんの負担が少ないんです。患者さんに「あの時のあの検査、つらかったからもうやりたくない」と思われてしまったら、健康管理が滞ってしまい、手遅れになるまで気づかないことにもなりかねません。患者さんの心身の負担を軽くする責任は、医療側にもあると考えています。当院ではカメラ挿入の際に麻酔薬を使うこともできますが、できれば最初の1回は、麻酔なしでの検査を試していただきたいです。将来的に何かの事情で、内視鏡の際に麻酔を使うことができない状況を想定して、そのように提案しています。

厳しさを乗り越えたからこそ患者にこまやかに察する

漢方診療もされていると聞きました。

江原弘貴院長 えばらクリニック3

西洋医学では手立てが少ない症状でも、漢方なら薬が適応するケースもあります。消化器系の一例では、手術など腹腔内への侵襲が腸閉塞の原因になることを防げるための漢方があります。原因がわからない不調のご相談も、漢方診療では多いです。症状がある、でも検査では異常がないから手立てがないといわれたら、患者さんは行き場がなくなります。そこで医療を打ち切ってしまうと、サプリメントを利用するだけならまだしも、時には高いお金を払ってまで医療と呼べないものにすがってしまうかもしれません。苦痛の中で受診に踏みきった患者さんのお気持ちを大切に考えお話を伺い、漢方で適切なお薬があれば処方します。

医師の仕事を選んだ理由を教えてください。

家業が診療所ですから医師の仕事は身近でしたし、私は3人兄弟の長男でもありますので、周囲からの期待を感じながら育ちました。他の仕事を考えたこともありますが、高校時代に読んでいた医療マンガに影響されたこともあり、医学部に進みました。私は旧研修医制度の最後の学年でしたが、岡山大学は早くから新制度に取り組んでいて、義務化の直前でしたから逆にかなり自由でしたね。私は生まれも育ちも大学も岡山で、このままだと岡山しか知らない人生になりそうなので、研修先に神戸を選び、感染症、循環器内科、呼吸器内科、救急科などを回った後に、消化器内科と総合診療科を専門に決めました。

これまで働いてきて、心に残っているご経験があれば教えてください。

江原弘貴院長 えばらクリニック4

最初の研修先の病院で、救急科の当直を担当していた時のことです。腹痛を訴えて来院された患者さんがいたのですが、診察して何ごともなさそうに思えたので、翌日の受診をお勧めしないで帰してしまったんです。何日かたって、麻酔科の部長から電話がありました。救急部長を兼ねていた方で、今すぐオペ室に来なさいというんです。そして、「これを見なさい」と差し出されたのが、先の患者さんの緊急手術で摘出された小腸の一部でした。さらに「江原先生は、診察の結果をどう考えたのか」と問われました。当時の自分としては、できることはやったつもりでしたが、まさかそんなことになるとは考えていませんでした。厳しい先生でしたが、事実を教えられずにいたら自分はどうなっていたかと思うと、背筋が凍る思いです。

具体的な動機や目標が適切な治療につながる

研修医1年目のうちに、厳しいご経験をされたんですね。

江原弘貴院長 えばらクリニック5

厳しく指導された経験があったからこそ、その後はどんな場面でも逃げずに来られたと、今では誇りに思います。指導をしてくださった先生方には、感謝してもしきれません。医師になって20年になりますが、研修医時代の経験の数々は今でも心に残っていますし、患者さんと向き合う時にも思い出します。目の前の症状は後に現れるもの、元をきちっとたどることが大切で、わかってみるとしっかり治療できることもある一方、とりあえずの処置で症状を抑えるだけでは、また違うかたちで出てくることもあります。考え得る原因について、患者さんにも「こういうことはありませんでしたか?」などと伺いながら診察を進めます。会話の中で、患者さんの方も「こういう症状が現れている時の自分は、こうなっているんだ」と、ご自身の体調を客観的に観られるようになる利点もあると思っています。

診察の際にはどんなことを心がけていますか。

受診のために今日この時にいらっしゃったのは、何か理由があるかもしれないと考えることです。そして、治療が終わったら何をしたいか、どんなことをしたいかをお尋ねします。例えば禁煙のご相談だと、結婚や出産、やりたいことのためにという方はやはり治療を完遂される印象がありますね。そういった想いを知ることができていれば、もし患者さんが壁にぶつかっても「以前にいつか外国に行って山に登りたいとのことでした。気持ちよく登るためにも、この機会に禁煙を達成しませんか?」と声を掛けられます。お話からご本人の背景や希望を共有し、医療を携えて治療の道を並んで歩いていく、というようなお付き合いができればいいですね。

今後の展望をお聞かせください。

江原弘貴院長 えばらクリニック6

大きい話をすると、患者さんの人生をどうにかして良くしたいのです。体の調子が悪く人生を諦めているというのはつらい話ですし、もったいないですよね。より良き人生の障壁に病気があるのなら、医療の場面で一緒におしゃべりをすることで、次に進めるようにしたいです。それでも、患者さんがやりたいことの全部を手伝うのは無理な話で、私たちにできるのは医療だけ。患者さんの問題がちょっとでも軽くなって、いろいろあったけど行って良かったなと、そう思ってもらえる病院でありたいと願っています。そしていつか私の知らないところで、ご家族やご友人とのおしゃべりの中で「昔、変な医者がいてね。そのときはこの野郎と思ったけど、あとで考えてみたら良かったわ」と言われるような医師でありたいですね。

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