伊達 宏和 院長の独自取材記事
だて整形外科クリニック
(松江市/松江しんじ湖温泉駅)
最終更新日:2024/12/02
松江城から程近い、松江市黒田町に立つ「だて整形外科クリニック」。敷地内に日本庭園もある、緑の多いクリニックだ。長年地域に根差して診療を続ける同院には、子どもから高齢者まで幅広い年齢層の患者が来院しているという。現院長を務める伊達宏和先生は、2024年4月に父親である伊達和友先生の後を継いで院長に就任。勤務医時代の豊富な臨床経験を生かし、整形外科疾患全般に幅広く対応する。中でもスポーツ障害の診療に力を入れており、「皆さまが安心してスポーツを続けられるようお支えしたいと思っています」と優しく語る伊達院長。院長就任と同時に、新たにスポーツの分野で経験を積んだ理学療法士を採用したそうだ。穏やかな雰囲気の伊達院長に、これまでの経歴や診療時の心がけ、注力する治療法などさまざまな話を聞いた。
(取材日2024年9月27日)
理学療法士と連携し、回復まで一貫してサポート
まずは医師をめざしたきっかけや先生のご経歴をお聞かせください。
父も整形外科の医師ですので、その影響は大きいですね。父の姿を見て、「医師というのは人の役に立つ仕事なんだな」と感じ、自然と医師をめざすようになりました。岡山大学医学部に入学後は、勉強はもちろん、空手部の活動にも打ち込んでいて、西日本の医学生の大会で優勝した経験もあるんです。卒業後は大学の関連病院で臨床の経験を積み、岡山大学大学院に進んでからはスポーツ関節外科の研究や臨床に携わりました。恩師とともに国内外の研究会に参加したり手術を行ったりして、充実した4年間でしたね。当時の経験が私の診療のベースとなっています。それから山陽エリアの複数の病院で、外傷などの手術も含めたくさんの臨床経験を積んだ後、島根に戻り、雲南市立病院に勤務。その傍ら、週1回ほど当院の診療も手伝っていました。
2024年4月に院長に就任し、新たに理学療法士を採用されたそうですね。
はい。院長就任時に2人の理学療法士を採用しました。勤務医時代の経験を通じて、手術後などにリハビリテーションを行うことは欠かせないと感じていたからです。手術をしたり薬を処方したりするだけでなく、リハビリテーションを行うことは大切。とはいえ、医師だけでたくさんの患者さんをサポートすることには限界があります。一方、理学療法士がいれば、時間をかけてしっかりとリハビリテーションを行うことができます。勤務医時代から、リハビリテーションスタッフとの関係は大切にしていました。しかし島根に戻って当院の診療を手伝うようになった頃は、まだ理学療法士がいなかったため、患者さんを回復までサポートして差し上げるのが難しいことも。それで、「院長になったら理学療法士を採用したい」と考えていたんです。
先生が院長になられて、患者層に変化はありましたか?
院長に就任して半年ほどが経過し、学生さんなど若い世代の患者さんが増えてきたように感じています。勤務医時代から懇意にしている理学療法士の方の紹介で来られる患者さんも多いんです。実は今いる2人の理学療法士も、その方に紹介してもらいました。その方は、とても活動的で顔が広く、スポーツ障害に関する知識が豊富で、高校の部活動チームなどもサポートしています。私を信頼してくださり、部活動をしている学生さんたちを紹介してくれるんです。それで今は、午前中や午後の早い時間帯はご高齢の患者さんが多く、夕方になると年齢層が下がり、学生さんたちが増えてくるような感じですね。
新しい治療法も取り入れ、ベストな医療の提供をめざす
診療の際にはどんなことを心がけていますか?
患者さんお一人お一人にとって、ベストな医療を提供することをめざしています。それで、当院で診るのが適切と思えたら、当院で最善を尽くして治療にあたります。一方、手術が必要など当院での対応が難しい場合には、躊躇することなく提携している病院などに紹介させていただきます。紹介して手術を受けた後、リハビリテーションを受けに戻ってきていただくこともできますし、提携医療機関で手術を受けた患者さんの術後のリハビリテーションを依頼されることもあります。当院がリハビリテーション体制を整えていることは、提携している基幹病院にとっても、地域の患者さんにとってもメリットがあるのではないでしょうか。
新しい治療法も積極的に取り入れられているようですね。
ハイドロリリースやサイレントマニピュレーションといった治療法にも対応しています。当院では、エコー下で薬剤を患部に注入することで関節や筋肉の痛みやしびれの軽減をめざす治療法を「ハイドロリリース」として提供しています。例えば、肉離れの後などに筋肉が硬くなると、神経を圧迫し、痛みやしびれを引き起こします。そこで超音波画像を使って筋肉や周辺組織の状態を確認しながら、薬剤を注入し、症状の改善を図るのです。当院に勤める理学療法士の一人がこの治療の後に行うリハビリテーションに通じていますので、連携して行っています。こうした治療に対応している医療機関は、島根県内でもまだ少ないのではないでしょうか。
サイレントマニピュレーションについても教えていただけますか?
サイレントマニピュレーションは、四十肩や五十肩などに対して行います。四十肩や五十肩が進行すると、痛みのある炎症期の後、「腕が上がらない、回せない」など、肩の動きが制限される拘縮期へと移行するケースがあります。そうなってしまうとリハビリテーションを行ってもなかなか症状が改善しません。サイレントマニピュレーションは、神経ブロック注射で麻酔をかけた上で肩の拘縮を取り除いていくことを図る治療法です。拘縮が和らげば、その後のリハビリテーションも進めやすくなります。肩の症状がなかなか改善せずにお悩みの方はぜひご相談ください。当院ではまずリハビリテーションを行い、それでも改善しない場合にサイレントマニピュレーションをご提案しています。
子どもから大人まで、スポーツ障害の診療に力を入れる
診療時に先進機器も活用されているようですね。
昨年10月に骨密度測定装置を新しいものに入れ替えました。大規模病院でも導入実績が多い装置を導入したんです。また衝撃波を照射する、拡散型圧力波治療器も最近導入しました。機器の中でも特に使用頻度が高いのは、超音波診断装置。肉離れや靱帯損傷、肩腱板断裂、軟部腫瘍などの診断に用いることはもちろん、神経ブロック注射などをする際も、超音波診断装置を活用することでより安全に配慮して行うことができます。さらに当院では、理学療法士がリハビリテーションを行う際にも、超音波診断装置を補助的に用いています。
診療でお忙しい中、休日はどのようにお過ごしですか?
趣味は、マラソンやロードバイクです。平日の夜に宍道湖の辺りを10キロほど走ったり、休みの日に同業の先生や医療関係の人たちとチームを組んでロードバイクのイベントに参加したりしています。今はもっぱらマラソンやロードバイクを楽しんでいて、空手はしていませんね。スポーツでケガをしたり痛みが出たりすると、患者さんのつらさに共感できるようになります。例えば、マラソンをしていて、ランナーズニーと呼ばれる腸脛靱帯炎を発症した際には、「こういう痛さなんだな」と実感。それが頭に残っているので、患者さんが同じような症状を訴えていらした際に共感できるんです。スポーツでケガをした経験などが、診療の際に役に立っていると感じています。
最後に、読者に向けたメッセージをお願いします。
幅広く診療する中でも、特にスポーツ障害の治療に力を入れていきたいと考えています。今いる理学療法士たちもスポーツの分野で経験を積んでいますし、近々トレーナーとして活動している理学療法士をもう1人増員する予定です。スポーツによるケガを治療し、皆さまが安心してスポーツを続けられるようお支えしたいですね。とりわけ、お子さん特有のスポーツ障害を早期に発見し、将来的に障害が残らないようにサポートしたいとも思っています。小学校高学年くらいから発症しやすいため、その時期に適切に対処することが大切。痛みがあるのに無理をすると深刻な状態になる恐れもあります。当院は、「何かあったらあそこに行けば大丈夫」と思ってもらえるような、皆さまに頼られるクリニックをめざしています。痛みなどあれば、どうぞお早めにご相談ください。