安陪 隆明 院長の独自取材記事
医療法人安陪内科医院
(鳥取市/鳥取駅)
最終更新日:2026/04/20
1978年開業の「安陪内科医院」。先代から引き継ぎ、院長を務めるのは穏やかな語り口が印象的な安陪隆明先生。安陪院長は、大学卒業後に大学院で研究を深め、その後も各地の病院での勤務や看護学校の校長を務めるなど、豊富な経験を積み重ねてきた。現在は、同院で消化器内科を中心に一般内科診療を行い、胃内視鏡検査や胃がん検診にも対応。また「タバコからの卒業」を後押しする禁煙治療にも注力。禁煙治療では「なぜやめられないのか」という患者の葛藤に丁寧に寄り添い、それぞれのペースに合わせた治療を大切にしているという。地域との信頼関係と専門的な知識を礎に、患者一人ひとりの心に向き合い続ける安陪院長。地域医療の窓口としての役割を担う同院の診療方針や、患者への向き合い方、そして治療への思いについて話を聞いた。
(取材日2026年3月25日)
父の後を継ぎ、内科と禁煙治療で支える地域医療
医師をめざしたきっかけと、医院を継承される前のご経緯を教えてください。

医師をめざしたきっかけは、正直に言うとあまり特別なものではないんです。1978年、私が中学3年のときに父がこの医院を開業し、それまで勤務医で家にいることが少なかった父と一緒に夕食を取るようになりました。父といろいろな話をして、そして新しく建てられた医院を見る中で、「こんな立派な医院を父の代で終わらせるのはもったいないな」と思ったんですね。そこから自然と医学部をめざすようになりました。卒業後は鳥取大学の医局に所属し、県内外の公立病院や赤十字病院などで勤務しながら、消化器内科を中心に経験を積んできました。その後、医院に戻り副院長として父と診療にあたる予定でしたが、戻って1年ほどで父が急逝し、思いがけず院長を引き継ぐことになりました。父の後を継ぐならと消化器内科を専門に経験を積んできましたが、精神科領域への関心もあり、それが現在行っている当院の禁煙支援の形につながっているように思いますね。
先生が診療をする上で心がけておられることを教えてください。
診療で大切にしているのは、まず患者さんの話をきちんと聞くことです。症状だけを診て判断するのではなく、その方がなぜ来院されたのか、来られた背景を理解することが重要だと考えています。一見、診療とは関係のない話と思えても、そうしたお話の中に不安や悩みが表れていることも多いものなんですね。話をすることで心や気持ちが楽になったり軽くなったりすることもありますので、できる限り受けとめるようにしています。また、薬については必要以上に頼らないことも意識しています。精神作用の恐れのある薬剤は紹介がない限り出さないことにしております。処方薬依存の問題もありますので、薬剤については慎重に判断し、患者さんのお話を伺いながら対応することを大切にしています。お一人お一人の心に寄り添える医療を心がけています。
どのような症状の患者さんが多く来院されますか?

地域の内科ということもあり、高齢の方が中心になります。先代の頃から長く通ってくださっている方も多く、日常の体調管理を任せていただいているような関係が続いています。症状としては、一般的な内科に加えて、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病で来院されている方も多いです。また、胃の不調や検診、胃カメラを希望されて来られる方もいらっしゃいます。一方で、禁煙の相談をきっかけに来院される方も増えており、幅広い年代の方に通っていただいています。
「やめたい、やめられない」患者の葛藤に寄り添う支援
禁煙治療に力を入れられたのは、なぜですか?

禁煙治療に力を入れるようになったのは、これまで医師として患者さんと向き合ってきた中で感じたことが大きいですね。やはりタバコを吸っている方はさまざまな病気を惹き起こしやすく、影響の大きさを実感してきました。ただ、「やめましょう」とお伝えしても、なかなかやめられない方がほとんど。そこから、喫煙は単なる習慣ではなく、ニコチン依存症という病気なんだと考えるようになりました。そこで精神疾患や依存症について自分なりに学び、禁煙治療に取り組むようになりました。鳥取市立病院の禁煙の外来の立ち上げにも携わらせていただきました。医師になりたての頃に「病気を治すこと以上に、予防することが大切だ」と教わったことも、今の考え方の根底にあります。禁煙はまさに予防につながる大切な医療の一つだと考えています。
禁煙の相談で来られた方には、どのような診療を行っていますか?
禁煙相談の窓口は予約制で、最初は30分ほどかけて、なぜタバコをやめられないのかという仕組みや、ニコチン依存症について丁寧にご説明します。タバコはコンビニで買える脳に直接働きかける精神安定剤のようなものなんですね。1日に20本タバコを吸う人が、それを20年間続けたとするとその本数は約14万本にもなります。つまり14万回にわたって「吸うとホッとする」という感覚を繰り返してきたことになるのです。これほど積み重なった習慣を、すぐに消し去ることはできません。だからこそ禁煙は、単に意志の問題ではなく、長い時間をかけて身についた感覚や行動と丁寧に向き合っていくことが大切です。その上で、呼気中の一酸化炭素の測定などを行い、ご本人の状態を確認しながら治療を進めていきます。治療としては、ニコチンがじわっと体に入ってくるニコチンパッチや内服薬などを用いて、禁断症状を和らげるよう図りながら禁煙をめざしていきます。
禁煙治療で心がけておられることを教えてください。

禁煙治療において薬はあくまで補助であり、最も大切なのは考え方や習慣の見直しです。「やめられない自分」を責める必要はありません。そのことをまずしっかりお伝えするようにしています。その上で、どんな場面で吸ってしまうのかを一緒に振り返りながら、その方に合った方法を考えていきます。また、途中で再び吸ってしまうことも決して珍しいことではありません。ある漫画で「諦めたらそこで試合終了」という言葉がありますが、再喫煙は失敗ではなくて、諦めた時が本当の失敗です。だからその際も責めるのではなく、「うまくいかなくてもまた来てください。絶対怒りませんから」とお声がけしながら、何度でも挑戦できるよう支えていくことを大切にしています。
うまくいかなくても大丈夫、何度でも通える気軽さを
院内設備や検査についてのこだわりを教えてください。

医院としては、もともと父の代から続く建物を大切にしながら、できる範囲で少しずつ整えてきました。大きく新しくしたというよりは、使いやすさや安心感を大事にしながら手を加えてきました。診察室も時代に合わせて少しずつ変えています。また、経鼻による上部消化管内視鏡検査、上腹部超音波検査、胸部単純エックス線写真検査、睡眠時無呼吸症候群の簡易検査、心電図検査など、日常的に必要とされる検査は院内で行えるように整えています。お薬についても、昔ながらの形ではありますが、できる範囲で院内処方を行っています。特に高齢の方にとっては移動の負担が少なく、安心して通っていただけるのではないかと思っています。派手さはありませんが、通いやすい場所でありたいと考えています。
鳥取市の地域医療について、先生のお考えをお聞かせください。
鳥取市の地域医療については、やはり「顔が見える関係」というのが大きな特徴ではないかと感じています。規模が大きくない分、医師同士がお互いに面識があり、「この症例ならこの先生」といった形で紹介や連携がしやすい環境があります。地方だからこそ、それぞれの役割を理解しながら協力していくという雰囲気があるように思います。そのため、患者さんにとっても適切な医療につながりやすいというメリットがあるのではないでしょうか。
最後に読者の方へメッセージをお願いします。

まずは、あまり難しく考えずに、体のことで気になることがあれば気軽に相談していただけたらと思います。ちょっとした不調でも、早めに気づいて対処することが大切ですし、結果的に大きな病気の予防にもつながります。また、禁煙についても「やめたいけれどやめられない」と悩んでおられる方は多いと思いますが、無理に我慢するのではなく、一緒に少しずつ取り組んでいければと思っています。うまくいかないことがあっても大丈夫ですので、何度でも気軽に相談に来ていただけたらうれしいですね。

