谷口 紀子 院長の独自取材記事
谷口耳鼻咽喉科医院
(伊丹市/新伊丹駅)
最終更新日:2026/04/20
県道142号線の美鈴町交差点から北に進んだ静かな住宅街に「谷口耳鼻咽喉科医院」はある。1979年に先代が開業して以来、地域に根差したクリニックとして長く親しまれてきた同院を2020年に承継したのが、院長の谷口紀子先生だ。大阪府済生会吹田病院で約8年にわたり腫瘍性疾患を専門的に学んだ経験を持ち、承継後はエコーやCTを新たに導入。その知見を地域の診療に還元している。「どんなに忙しくても、患者さんの話を最後まできちんと聞くことを心がけています」と穏やかに語る谷口院長の物腰には、安心して何でも相談できそうな温かさがある。0歳の乳児から90代の高齢者まで幅広い世代が訪れる同院で、診療の特徴や新しい花粉症治療への取り組みについて聞いた。
(取材日2026年3月25日)
父の背中を追い、腫瘍の専門性とともに地域医療へ
まずはクリニックの特徴や、来院される患者さんについて教えていただけますか?

当院は1979年に父が開業したクリニックで、私は2020年に承継して院長に就任しました。静かな住宅街の中に位置しており、0歳の赤ちゃんから90代の方まで本当に幅広い年齢の患者さんが来てくださいます。お子さんは鼻水や咳といった風邪症状や中耳炎などが中心で、ご高齢の方はめまいや耳鳴り、聴力の低下などでお困りの方が多いですね。30〜40代の方はお子さんと一緒にアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法を始めたいと来院されるケースもあり、世代ごとにお悩みはさまざまです。全体を通して最も多いのは風邪やアレルギーの症状で、年齢を問わずいらっしゃいます。地域のかかりつけの耳鼻咽喉科として、どなたにも気軽に頼っていただける場でありたいと考えています。
先生が医師の道に進み、耳鼻咽喉科を選ばれた理由は何だったのでしょう?
親戚にも医師が多く、父も耳鼻咽喉科の医師という家庭で育ちました。物心ついた頃には父が開業しながら大学の講師も務めており、クリニックで白衣を着て診療する姿を何度も見ていたんです。自然と医師の道を志すようになり、それ以外の選択肢はあまり思い浮かびませんでした。耳鼻咽喉科を専門に選んだのも父の影響が大きく、同じ道を歩みたいという気持ちが芽生えていましたね。実際に学びを深めていくと、外科的な処置も内科的な対応もある幅広さに面白みを感じるようになりました。さらに味覚や嗅覚、聴覚といった、命には直結しなくとも人の暮らしに欠かせない感覚を扱えるのは、この科ならではの魅力だと感じています。
こちらのクリニックを承継されるまでの歩みをお聞かせください。

川崎医科大学を卒業した後、大阪医科大学附属病院で4〜5年ほど研鑽を積みました。その後は大阪府済生会吹田病院に移り、腫瘍を専門とする上司のもとで約8年間、耳鼻咽喉科の中でも腫瘍性疾患を中心に学んできました。もちろん耳や鼻の一般的な診療にも携わっていましたが、軸は腫瘍でしたね。本音を言えばもう少し勤務医を続けたかったのですが、父の体力面を考えるとそろそろ交代の時期だなと感じました。生まれ育った伊丹で地域の方々のお役に立ちたいという思いもあり、2020年にクリニックを引き継ぐ決断をしました。病院で培った腫瘍の専門的な知識や経験を、この地域の診療に還元していきたいと思っています。
花粉症の注射薬治療からめまいまで幅広く対応
検査機器などの設備面が充実している点も、特徴の一つですね。

承継にあたって、エコーとCTを新たに導入しました。先ほどお話ししたとおり、勤務医時代に腫瘍性疾患を長く学んできたので、その経験をクリニックの診療にも生かしたいという思いがあったからです。首のしこりや甲状腺の疾患など、気になる症状のある患者さんにはエコーや喉のカメラを使って丁寧に検査を行います。悪性の可能性が低いと判断した場合は、細胞を採取する検査まで当院で対応しますし、明らかに悪性が疑われるときは速やかに大きな病院へご紹介するようにしています。大切なのは「見逃さない」ことです。また、ファイバースコープの映像をモニターに映し出して、耳や喉の状態を患者さんご自身に見ていただきながら説明するようにしています。自分では見えない部分だからこそ、一緒に確認することが安心につながると考えています。
花粉症に対する新しい治療を取り入れていると伺いました。
重症のスギ花粉症に対する注射薬を用いた治療を、約3年前から行っています。この治療を実施しているクリニックは近隣にまだ少ないようで、伊丹市内だけでなく尼崎や大阪、豊中など周辺地域から来院される方もいらっしゃいます。花粉シーズンの前に注射を打つことで、症状の軽減や、人によっては内服薬なしでも快適に過ごせるようになることが期待できます。翌年以降も継続して受けていただくことが可能です。投与には12歳以上であること、採血検査でスギ花粉の抗体が規定の数値であること、従来の内服薬や点鼻薬で十分な効果が見込めなかったことなどの条件がありますので、まずはご相談いただければと思います。また、舌下免疫療法にも対応しています。
めまいの症状がある患者さんも来院されるそうですね。

はい、めまいのご相談にも対応しています。めまいについても研鑽を積んできたのですが、めまいに長く悩まれている方の中には、複数の病院を受診しても原因がはっきりせず苦しんでいる方が少なくありません。そうした方が当院に相談に来てくださることもあります。命に関わる脳や心臓の疾患を除くと、めまいの多くは実は耳鼻咽喉科の領域に原因があります。急に起こるめまいでは耳石が関わる良性発作性頭位めまい症が代表的で、季節によってはメニエール病の方も増えてきます。すべてではありませんが、耳鼻咽喉科を受診していただくことで比較的早く診断につながるケースが多いので、めまいでお困りの際はまず耳鼻咽喉科にご相談いただくのも良いかと思います。
話を最後まで聞く、誰もが頼れるかかりつけ医に
日々の診療で心がけていることを教えてください。

一番大切にしているのは、患者さんの話を最後まで聞くことです。忙しい時間帯であっても、決して話を遮ることなく丁寧に聞くことを常に心がけています。特にめまいの患者さんは訴えが多岐にわたることがありますが、じっくり耳を傾けていると「実はこんなこともあったんです」と、これまで知らなかった情報が出てくることがあるんですね。それが思いがけず診断の手がかりになることもありますし、丁寧に聞くことでコミュニケーション自体が円滑になります。問診では「はい・いいえ」で答えられる質問ではなく、なるべく広く問いかけるようにしています。自由に話していただくと、患者さん自身も気づいていなかった情報を自然と伝えてくださることが多いので、結果としてより適切な診断につながっていると感じています。
スタッフの皆さんの様子や、今後めざすクリニック像をお聞かせください。
スタッフは6人体制で、受付や看護師を含めみんなとても頼りになる存在です。父の代から長く勤めてくれている方もいれば、私が承継してから新たに加わってくれた方もいます。経験豊富な古参のスタッフが新しいメンバーに自然と仕事を伝えてくれていて、とても助かっていますね。今後めざしたいのは、年齢や症状を問わず誰でも入りやすく、何でも話せるクリニックであり続けることです。お子さんを連れた親御さんからのご相談はもちろんですが、ご高齢の方も含め、どんな方でも「ここに来れば相談できる」と思っていただける場でありたいと思っています。
最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

お子さんの体調が気になったとき、耳鼻咽喉科と小児科のどちらを受診すべきか迷う方も多いかと思います。一つの目安として、鼻や耳の症状であれば耳鼻咽喉科へ、おなかの不調や激しい咳・喘息のような症状があれば小児科へ、と考えていただくと良いかもしれません。普段の風邪であれば耳鼻咽喉科でも十分に対応できますので、迷ったときは気軽にご相談ください。私自身も1歳の子どもがおりまして、休日は一緒に図書館へ出かけたり散歩をしたりして過ごしています。子育て中の方の不安やお気持ちはわかるつもりです。当院は、気軽に何でもお話しいただける場所でありたいと思っていますので、ちょっとしたことでも遠慮なくご相談いただけるとうれしいです。

