幾井 重行 院長の独自取材記事
いくい眼科
(西宮市/門戸厄神駅)
最終更新日:2026/03/09
門戸厄神駅から徒歩1分のビル2階にある「いくい眼科」。白と青を基調とした内装は、幾井(いくい)重行院長が母と訪れたギリシャの街並みをイメージしたものだ。エントランスから待合室は路地、検査室は民家の中庭と、異国情緒漂う空間が訪れる人を温かく出迎える。大阪医科薬科大学卒業後、複数の病院で研鑽を積んできた幾井院長は、45年前に父が皮膚科を開業したこの場所で2010年に眼科として開院。「患者さんに満足してもらうことが私の思う医療」と穏やかに語る。一人ひとりに寄り添った丁寧な説明を大切にする、気さくな人柄が印象的だ。何でも相談できるかかりつけ医として地域に愛される幾井院長に、診療への思いを聞いた。
(取材日2026年2月3日)
父が守り続けた場所で、母との思い出を形に
この場所は先生にとって思い入れの深い土地だとか。

ええ。ここは、45年前に父が皮膚科を開業した場所です。私は小学校までこの地で育ち、中高は愛媛の学校の寮に入り、大学時代に大阪に戻ってきました。開業を考えるようになったのは、母が亡くなり、その後、父も余命3年と告げられたことがきっかけです。兄は皮膚科医として別の場所で開業していましたし、妹も東京へ嫁いでいたので、父を一人にしておけないという思いから、自分がここに帰ろうと。父はその後15年以上生きてくれ、晩年を一緒に過ごせたことは私にとって大きな財産になりました。そして門戸厄神駅から徒歩1分の場所を受け継ぎ、2010年に眼科として開院した次第です。
眼科医を志されたきっかけや、これまでのご経験を教えてください。
祖父も父も医師という環境で育ちましたから、自然な流れで医師の道に進みました。眼科を専門にしたのは、私自身が不同視だったから。左右で近視の度合いが違うという経験があったので、同じ悩みを持つ患者さんの気持ちがよくわかりますし、自分で確かめつつ対応を探れるのは強みだと感じています。また、手が器用だったことも眼科を選んだ理由の一つです。卒業後は生駒総合病院、大阪暁明館病院、北大阪ほうせんか病院、北摂総合病院で研鑽を積み、白内障手術をはじめ、さまざまな疾患を経験してきました。40歳を人生の折り返し地点と考え、それまでは結果を顧みず努力すると決めていたんです。
白と青の爽やかな内装が印象的ですが、ギリシャがモチーフだそうですね。

母に病が見つかってから、一緒に旅行に行こうと決めました。沖縄、ラスベガス、そして最後に訪れたのがギリシャだったんです。サントリーニ島とミコノス島の景色が本当に素晴らしくて、白い壁に青い屋根の美しい街並み、細い路地、夕日に染まる海……母との大切な思い出の場所です。だからこの内装には、その景色を再現したいという思いがありました。エントランスから待合室にかけてはギリシャの街の路地をイメージし、待合室の奥の検査室は民家の中庭をイメージしています。受付の上には街角の屋台のようにの青いひさしをあしらい、ガーデンベルも飾り、天井は藤棚を思わせるデザインに。実は設計の打ち合わせで、ほぼすべて私の希望を反映していただきました。もともと医師になるか一級建築士になるか迷ったほど建物を見るのが好きで、中の構造や間取りにも興味があったので、細部までこだわり抜いた空間になっています。
患者満足度を最優先に、一人ひとりに寄り添う診療を
クリニックの特徴や、来院される患者さんについて教えてください。

この辺りは子育て世帯が多い地域なので、お子さんの患者さんが多くいらっしゃいます。視力の悩みや結膜炎、麦粒腫といった症状での来院が中心ですね。一方で高齢の方も多く、特に緑内障の患者さんが目立ちます。緑内障は自覚症状が出にくい病気ですから、早期発見のための視野検査機器を備えて、しっかりと診断できる体制を整えています。働き盛りの世代は職場近くで受診される方が多いようですが、当院は19時まで診療していますので、仕事帰りに立ち寄っていただくことも可能です。かかりつけ医として、子どもから高齢者まで幅広い世代の目の健康を見守っていきたいと考えています。地域に根差して16年目になりますが、昔から通ってくださっている患者さんも多く、長くお付き合いできることをありがたく思っています。
患者さんと接する際に、大切にされていることはありますか。
私が最優先しているのは、患者さんに満足してもらうことなんです。そのために大切にしているのは、十分に説明して納得していただいた上で、最終的には患者さんの意思を尊重すること。例えば、お薬を処方する際も、1日4回のものと1日2回のものがあれば、それぞれの特徴や費用の違いまでお伝えして、どちらがいいですかとお聞きしています。点眼薬の場合、実は先発品とジェネリックで大きな差はないことが多いのですが、そうした情報も正直にお話しして選んでいただきます。また、医療にはサービスの面と福祉の面、この2つがあると思っていて、そのバランスを取ることを大切にしています。頻繁に診てほしい方もいれば、間隔を空けたい方もいらっしゃるでしょう。一人ひとりの背景やニーズは異なりますから、それぞれに合わせた対応を心がけています。
特に読者の皆さんに知ってほしい診療について教えてください。

網膜裂孔に対するレーザー治療に対応しています。網膜に穴が開いていても、まだ剥離に進行していない段階であれば、穴の周りをレーザーで焼きつけて固めることで、剥離が広がるのを防ぐことが期待できます。手術に比べて患者さんの負担が少なく済むのがメリットですね。また私自身が不同視なので、同じ悩みを持つ方へのコンタクトレンズの調整には自信があります。例えば不同視で老眼になった場合、片方を近く、もう片方を遠くにピントを合わせる「モノビジョン」という方法で調整すると、見やすくなることが望めます。他に、病診連携も大切にしていて、会合には積極的に顔を出すようにしています。患者さんの状態に応じて、大学病院がいいのか、地域の病院で対応できるのか、適切な紹介先を判断できる引き出しを持っておくことが、かかりつけ医としての役割だと考えています。
相談しやすい目のかかりつけ医として愛する地元に貢献
先生が医療人として大切にされている信念についてお聞かせください。

患者さんに対して100%善人でありたい、というのが私の信念です。実は父からは「そんなことで生きていけるのか」と心配されていました。でも私は、医師という職業だからこそ、損得勘定抜きで患者さんと向き合えると思っているんです。中学高校の頃から、命について、理想的な医療や医師像について考えてきました。だからこそ診療では、病気のことだけでなく、その方の年齢や仕事の忙しさ、家族の状況まで含めて総合的に考え、考え得る中でのベストな選択肢を提案するようにしているのです。それを自分で決めるのではなく、わかりやすく説明して患者さんに選んでもらう。専門外の病気について相談されることも多いですし、ご家族の健康についての相談を受けることもあります。時間があればいくらでもお話を聞きますから、遠慮なく何でも相談していただきたいですね。
今後の展望についてお聞かせください。
地域のかかりつけ医として、これからも何でも相談していただける存在でありたいと思っています。専門に関係なく、ご家族のことでも遠慮なくお話しください。眼科の診察を受けに来て、他の病気のことを聞いていかれる方も多いんですよ。私自身、患者さんと話すことが好きなので、できる限り時間を取って相談にお答えしたいと考えています。今後もこの場所で患者さんの目の健康を守り続けていきたいですね。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

私のモットーは「来る者は拒まず、去る者は追わず」。どんな悩みでも受け止めますし、執着しすぎないことで、かえって患者さんとの良い関係が築けると思っています。この街は私が生まれ育った場所で、たくさんの思い出があります。年を取ると、余計に愛着が湧いてくるものですね。父は45年前にこの場所で開業し、地域の方々に支えられてきました。その歴史を受け継ぎながら、愛する地元に貢献していきたいという思いで日々診療にあたっています。お子さんの視力が気になる、高齢のご家族の目の様子が心配、自分自身の見え方に不安がある……どんなことでも構いません。この門戸厄神の地で、皆さんの目の健康を守るお手伝いができれば幸いです。

