瀬戸 悠太郎 副院長の独自取材記事
瀬戸内科医院
(西宮市/西宮北口駅)
最終更新日:2025/12/03
西宮北口駅から歩いて10分。「瀬戸内科医院」は、1960年の開業以来60年以上にわたり地域住民の健康を支えてきた。副院長として就任した瀨戸悠太郎先生は、心臓血管外科の医師として緊急症例を多く診た経験から予防医療の重要性を痛感し、循環器内科へ転科。脂質異常症の専門家として生活習慣病の早期介入に注力。「毎日横にいて薬を飲んだか確認できないので、患者さん自身に理解し納得してもらうことが大切」と、対話を重視した診療を心がける瀨戸副院長に、予防医療への思いや在宅医療への取り組みなどについて話を聞いた。
(取材日2025年10月31日)
3代続く地域医療に新たな専門性を加えて
60年以上の歴史があるクリニックだと伺いました。

祖父が1960年に開業し、2025年で66年目になります。開業当初は自宅併設のクリニックでしたが、1995年の阪神大震災で被災し、区画整理を機に現在の場所へ移転しました。父が院長を継ぎ、私は2024年4月から副院長として診療に加わっています。長い歴史の中で地域の健康維持に貢献してきたという自負があり、その伝統を大切にしながら診療を続けています。祖父の代から当院に足を運んでくださっている患者さんもいらっしゃって「あなたのおじいちゃんの代からお世話になってるのよ」と言われることもあり、3世代にわたる信頼関係を感じますね。地域に根差したクリニックとして、これからも患者さんとの絆を大切にしていきたいと思っています。
心臓血管外科から循環器内科に転科されたきっかけを教えてください。
もともと手術で患者さんを救いたいという思いから心臓血管外科医になり、東京女子医科大学で研鑽を積みました。緊急症例を診る中で、心筋梗塞や大動脈解離の患者さんの多くが、高血圧症や脂質異常症、糖尿病を指摘されながらも放置していた方々だったのです。病気になってしまってから治療をする心臓血管外科での仕事も大切ですが、こうした現実に日々向き合う中で、やはり病気にならないようにするに越したことはなく、医師として予防の段階にアプローチしていきたいと思うようになったんです。そこで、予防医療をやろうと循環器内科へ転科しました。高槻病院で内科の研修を受け、神戸大学大学院では脂質異常症を専門に研究して学位も取得しました。今は健診で異常を指摘された患者さんなどの診療にあたり、将来の心血管疾患を防ぐことに力を注いでいます。
副院長就任後、どのような診療体制になったのでしょうか?

父の専門である消化器内科・胃腸内科に加えて、私の専門である循環器内科の診療が可能になりました。特に力を入れているのが生活習慣病の管理と睡眠時無呼吸症候群の診断・治療です。設備面では、AI解析機能付き心電図を導入しました。これは過去のビッグデータから心房細動の発症リスクを4段階で判定できる先進的な機器です。睡眠時無呼吸症候群については簡易検査キットを用意し、必要に応じて自宅での精密検査も可能な体制を整えています。また今年4月から在宅医療も本格的に開始し、日本循環器学会循環器専門医として心不全管理などの専門性を生かしながら、通院困難になった患者さんも継続して診られるようになりました。
健康寿命の延伸をめざす予防医療
専門の脂質異常症治療についてお聞かせください。

脂質異常症はLDLコレステロールが高い、HDLコレステロールが低いといった状態ですが、それ自体に症状はありません。ただ10年、20年放置すると動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが非常に高くなります。原因は食事や運動不足だけでなく、体質による部分もあるので、患者さんとよく話をして治療方針を決めています。私のポリシーは「できるだけ健康でいられる期間を長くすることで、病気でいる期間を短くする」「ただ寿命を延ばすのではなく、元気でいられる期間を延ばす」ということ。健診で異常を指摘された方には、まず3ヵ月食事や運動を頑張ってもらい、それでも改善しない場合は薬物治療を検討します。大切なのは患者さんが納得した上で治療を継続することですね。
睡眠時無呼吸症候群の診療にも力を入れているそうですね。
睡眠時無呼吸症候群は循環器疾患や心筋梗塞、脳梗塞のリスクを上げることが知られており、心房細動という不整脈の合併率も高いんです。当院では簡易検査キットで初期診断を行い、グレーゾーンの方には自宅での精密検査も提供しています。従来は入院が必要でしたが、業者から機器を直接送ってもらい、自宅で検査できる体制を整えました。症状としては、夜中に何回も目が覚める、日中の眠気、朝起きた時の頭痛などがあります。一人暮らしでいびきに気づかない方も多いですが、検査すると6~7割の方に何らかの異常が見つかります。CPAP療法により、夜中に目が覚める回数が減ったり、日中の調子が良くなったりすることが期待できます。
診療で大切にしていることは何ですか?

患者さんご本人に治療の意義をきちんと理解していただき、納得してもらった上で進めることです。医師が毎日横にいて、薬を飲んだかどうかをチェックするわけにいかないですよね。だからこそ、ご本人が主体的に取り組めるかどうかがとても大切なんです。そのため初回の薬を出す際は、薬を飲んだ場合と飲まない場合でどんな結果が見込めるのかをしっかり説明します。また、こちらから説明するだけでなく「気になることはありますか?」と聞くように努めています。「はい」「いいえ」で答えられるようなクローズド・クエスチョンではなく、患者さんが話しやすいような質問の仕方をするようにしていますね。患者さんの中には、できれば薬を飲みたくないとおっしゃる方も多いです。そのお気持ちは私もわかるので、無理強いはせず、一緒に最善の方法を考えるようにしています。話のできる医者として、患者さんとの対話を大切にした診療を心がけています。
予防医療から在宅医療まで、徹底的に患者に伴走する
在宅医療を始めた理由をお聞かせください。

一つは、当院に通っていた患者さんが高齢になり、ADL(日常生活動作)が低下して外来に来られない方が出てきたからです。これまでは在宅医療を行っている医師に引き継いでいたのですが、10年、20年以上も当院で診させてもらってきた患者さんを、人にお任せるしかないというのは、寂しいなという思いがずっとあったんです。当院で在宅医療に対応することで、最後まで診させてもらうほうがいいのではないか、と。もう一つは、循環器を専門とし、高齢者の心不全をきちんと診られる医師が在宅医療をしているケースがまだ少ないという現状があったからです。現在、当院では約20人の患者さんを月2回訪問し、24時間365日対応できる体制を整えています。地域柄、家族がしっかりサポートされているケースが多く、訪問看護とも連携しながら診療にあたっています。長年診ている患者さんを責任を持って診させていただくのが私たちの使命だと考えています。
今後の展望について教えてください。
60年以上地域の健康維持に貢献してきたクリニックとしての自負があるので、この伝統を守りながら、より専門性を生かした診療を提供していきたいです。特に、高血圧症、脂質異常症を含めて、患者さんに納得してもらった上で治療を継続してもらえるようなクリニックにしていくことが目標です。動脈硬化が悪化するとどうなるのかを数多く見てきた立場から、予防医療の重要性を伝え、患者さんが自分のこととして治療の必要性を理解できるよう努めます。また、私自身が「話のできる医者」となり、皆さんの健康寿命の延伸に貢献できるようなクリニックをめざしていきます。これからも、地域の幅広い世代の健康を支えていきたいですね。
読者へのメッセージをお願いします。

もし健康診断で引っかかったら、「まあいいや」とほったらかしにせず、一度話を聞きに来ていただければと思います。高血圧症や脂質異常症は症状がないので放置されがちですが、心筋梗塞や脳梗塞になってからでは遅いんです。検査も治療も、患者さんにしっかりご説明をした上で、納得していただけてから進めますので、まずは気軽にご来院ください。また、動悸や息切れ、むくみ、日中の眠気、朝の頭痛などの症状がある方は、循環器疾患や睡眠時無呼吸症候群の可能性もあるので早めの受診をお勧めします。薬を飲むことに抵抗がある気持ちも理解していますので、まず3ヵ月間の生活習慣の改善から始めるなど、一人ひとりに合った治療法を一緒に考えていきます。健康寿命を延ばすために、今できることから始めていきましょう。

