谷口 友基子 院長の独自取材記事
産科・婦人科 衣笠クリニック
(尼崎市/園田駅)
最終更新日:2025/09/08

園田駅東口から徒歩1分、20代から40代を中心に、下は3歳から最高年齢は100歳まで幅広い女性が通う「産科・婦人科 衣笠クリニック」。院内は患者が緊張しないようにとゆったりとした空間が確保され、笑顔で迎えてくれるスタッフからは優しい空気感が漂う。周産期医療を専門とする谷口友基子院長は、大学病院や基幹病院で積んだ数々の経験を生かし、父である衣笠隆之理事長とともに地域の女性たちの診療に努めている。妊婦の診療だけでなく、月経困難症や更年期障害、膣炎など婦人科疾患全般を幅広くカバー。谷口院長は「ライフステージによって悩みが変わる女性の、人生のパートナーになりたいですね」と、穏やかな笑顔で語る。インタビューでは、医院の歴史や日々の診療への思いを聞き、悩める女性に向けてメッセージも寄せてもらった。
(取材日2022年11月24日)
3歳から100歳まで。女性に関わる悩みに幅広く対応
まずは医院の歴史や診療内容などを、教えていただけますか?

当院は理事長が1981年に尼崎市若王寺に開院した産科・婦人科の医院で、2019年に現在の園田駅周辺に移転しました。産科では30年以上分娩も扱ってきたのですが、移転を機に診療内容を変更しました。現在は分娩は扱っていませんが、妊娠34週目までの妊婦健診を中心に産後の母乳や育児の相談などにも対応しています。婦人科では、月経の悩み、外陰部のトラブル、がん検診、不妊相談などを幅広く診療しているので、妊婦さん以外の患者さんもいらっしゃいますね。園田駅に移転したのは、若王寺の医院が駅から遠くアクセスに不便な場所にあったので、駅近くに移転して患者さんも通いやすくなれば、という思いがありました。園田駅は若王寺からも近くなじみがありますし、周辺には婦人科が少ないこともあって、今後も末永く地域の方のお役に立ちたいと考えた、というのも理由の一つです。
どのような患者さんが通われていますか?
私の専門が周産期なので妊婦さんが多く通われていますが、3歳から100歳まで幅広く診療しています。ライフステージごとに変わっていく女性の悩みに寄り添っていけたらうれしいですね。更年期障害、子宮脱や萎縮性腟炎なども診ますから、妊娠をきっかけに当院に通い始め、長くお付き合いが続く方も。また近年は、月経困難症で受診される若年層の患者さんも増えています。治療に使う低用量ピルが保険適用になり、診療範囲が広がったことが影響しているのでしょう。低用量ピルは月経をコントロールする目的で処方されるほか、以前は手術が必要だった子宮筋腫や子宮内膜症の治療にも用いられます。服薬で治療が見込めない場合は手術になりますが、回避が望める可能性が高まりました。月経のお悩みもしかり婦人科疾患は人それぞれで症状が違うことも多く、医師に適切な治療を見極めてもらうことも大切ですから、お一人で抱え込まずご相談いただければと思います。
日々の診療の中で心がけていらっしゃることはありますか?

患者さんにとってわかりやすい言葉で、丁寧な説明をすることです。また、できる限り患者さんをお待たせしないように心がけています。婦人科では少ないかもしれませんが、当院は予約制ではありません。病気になったり、症状が出たりするタイミングはご本人にもわからないものですから、「お医者さんを頼りたい」と思った時にすぐご来院いただけるようにと考えてのことです。待ち時間を減らすために、例えばお薬の処方だけの方は順番を繰り上げさせてもらったり、担当医師のご希望がない場合は理事長と私でその時に対応できるほうが診たりと、さまざまな工夫もしています。二診制は時間短縮につながるだけでなく、それぞれの専門分野を生かした診療ができるところもメリット。理事長はお産に立ち会った経験も豊富なベテラン医師で、私は周産期を専門とし、病院で腫瘍を診療したこともあります。2人で協力し合えば幅広いお悩みをカバーでき、気づきも多いんです。
これまでの経験を地域医療に生かしたい
周産期の患者さんの対応で大切にされていることはありますか?

分娩施設のある病院と連携し、適切な時期につなぐことを大切にしています。大きい病院はどうしても待ち時間が長くなるので、連携のタイミングが早すぎると妊婦さんが体力的にも大変でしょうし、もちろん遅くなりすぎてもいけません。妊婦さんの血圧が上がってきたり、子宮の出口が短くなってきたりすると分娩する病院に移る頃合いなのですが、まだ入院の必要がない期間はもうしばらく当院で診させていただくなど、臨機応変に対応することも可能です。タイミングの見極めやその時々での対応については、周産期を専門とし、これまで多くの妊婦さんを診療してきた経験が生かされていると感じています。
大学病院や基幹病院でのご経験も豊富だと伺いました。
大阪医科大学(現・大阪医科薬科大学)を卒業後、大阪大学病院を経て、大阪府立成人病センターや関西労災病院に勤務しました。そこでは、がん診療を中心に研鑽させていただきました。その後、大学病院に戻り、腫瘍を専門に学びを深めようか検討していた時に、周産期医療に力を注ぐ先輩医師との出会いがあり、私も周産期医療を究めることになりました。兵庫県立西宮病院で産婦人科医長を務めていた頃は、本当にさまざまな症例や患者さんを診させていただきました。当院ではこれまでの集大成として、地域の患者さんに経験や技術を還元できればと考えながら、診療をしています。
院内の設備で、こだわったところはありますか?

超音波(エコー)検査機器は、画像が鮮明に見える先進のものを導入しています。画面上に3Dで映せるので、診察もしやすいですし、患者さんにご説明する際にも立体的に見ていただけて、わかりやすいんです。あとは、待合室が狭いと、患者さんが座れなかったり、居場所がないと感じてしまったりするかもしれませんから、空間を広く確保しました。診察室でもリラックスしてお話ししていただけるよう、ゆったりとくつろげる椅子を置いています。内装も優しい色使いを意識しました。
女性の人生のパートナーでありたい
一緒に働くスタッフさんについて教えてください。

スタッフは優しい人ばかりで、皆さん家庭と仕事を両立して働いてくれています。患者さんへの対応を近くで見ていて、私は同僚に恵まれていると感じていますね。それから助産師が3人も在籍しているのは、婦人科ではあまり見られない特徴ではないでしょうか。助産師は全員、大学、もしくは病院勤務時代に理事長や私と一緒に働いていた信頼できる人たちです。1人は理事長が基幹病院で部長だった頃の同僚で、キャリアの長いベテラン。妊婦指導の経験が豊富で、現在は母親学級を担当してもらっています。堺市の周産期母子医療センターに指定された病院で働いていた助産師もおり、産前産後ケアを一緒に取り組んでくれています。看護師も地域の医療機関で経験を積んできた人がそろっていて、地域活動も助産師・看護師が率先してくれるので本当に助かっています。当院では医師・スタッフが一丸となり、万全の体制で産前産後のケアにもしっかりと心を尽くしていきます。
今後の展望をお聞かせいただけますでしょうか。
地域に根差した医院として、女性の人生におけるパートナーでありたいと思っています。生まれた時から生涯を終える時まで力になっていけたら、これ以上うれしいことはありません。先ほどもお話ししたように、当院は妊娠期だけでなく、あらゆる婦人科疾患を診療しています。検診や予防接種にも力を入れているので、最近では子宮頸がんワクチンなどの接種相談で来られる方も増えていますね。年齢に応じた女性の悩みに寄り添い続ける医院であり続けたいです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

赤ちゃんを迎えたいと考え始めたら、まずは一度婦人科を受診することをお勧めします。体調に問題がなく、自然に妊娠するのは喜ばしいことですが、例えばがん検診や風疹の抗体検査、体重コントロールなど、妊娠前に準備しておきたいこともたくさんあるんです。妊婦さんの体重が少ないと早産のリスクもあるので、早めにご相談いただいて、母子の安全のために一緒に準備していけたら良いですね。まずは母体のコンディションを整えることから始めましょう。また、生理痛が重くてつらい思いをしている方には、今はずっと悩まされる必要はない時代だと伝えたいです。かかりつけ医として、医療面から「生理に振り回されず自分の人生を生きる」ためのお手伝いをしたいと思いますので、悩みがあれば頼ってください。