串田 剛俊 院長の独自取材記事
串田整形外科・リウマチ科クリニック
(尼崎市/武庫之荘駅)
最終更新日:2022/08/04

阪急武庫之荘駅から歩くこと約15分。住宅街の一角に「串田整形外科・リウマチ科クリニック」がある。開業から約50年の歴史ある同院に、2020年9月、串田剛俊(くしだ・たけとし)院長が就任した。串田先生は長年、関西医科大学附属病院整形外科で先進の治療・研究に携わってきた、脊椎と関節のエキスパートだ。「患者さんの痛みと不安を取る治療」をモットーとしており、早くもクチコミで訪れる患者も多いという。多くの研究論文を発表してきた経歴のある先生だが、「大学病院では1~2時間待ちだけど、ここではすぐに診察することができるんです」と話す姿はとても気さくで親しみが湧く。そんな串田先生に、診療にかける想いについてたっぷりと話を聞いた。
(取材日2020年11月18日)
大学病院でのキャリアを経て地域医療の道へ
先生は長らく大学で研究職に携わっていたそうですね?

そうです。大学、大学院と関西医科大学に在籍し、ここに帰るまでは大学病院の整形外科准教授を務めていました。一時期はアメリカに留学し、ニューヨークで2001年11月のアメリカ同時多発テロ事件に遭遇したこともありましたね。大学病院時代には、リウマチ関節外科の治療を専門的に学んだ後、脊椎外科に転身し数多くの手術を執刀してきました。また、研究にも尽力していました。代表的なテーマとしては、骨髄内骨髄移植、つまり骨髄腔の中に骨髄細胞を入れてリウマチを治す方法の研究などがあります。論文は英語・日本語合わせて300本近く書きましたね。まさに研究と臨床に明け暮れた毎日でした。今も非常勤講師として月に1回、大学に出向いていて、今まで担当していた患者さんの経過を診たりもしています。
院長に就任された経緯を教えてください。
このクリニックでは、父が1972年から50年近くにわたって診療してきましたが、2020年に入り、88歳という高齢になり、診療を続けることが困難になったのです。私は大学で継続していた研究がありましたし、今後もずっと大学にいるものだと思っていましたから、いったんは閉めるしかないかと考えました。ですが、私自身も週に1回、ここで診療をしていたので、なじみの患者さんの顔がすーっと浮かんでくるわけです。ここがなくなってしまったら、患者さんはどうなるのかなと。思い悩んだ末に、父からも「よろしく頼んだ。」と言われ、意を決して引き継ぐことにしました。大学の教授からは幾度となく止められましたが(笑)、やるなら今しかないと考え、思い切って挑戦しました。
診療を始めてみていかがですか?

初心に帰ってゼロから始めるのもいいかという気持ちでしたが、環境がガラリと変わったので想像以上に大変でしたね。ですが診療を開始して数ヵ月がたって、ご高齢の患者さんだけでなく、40代から50代の比較的若い患者さんにも来ていただけるようになり、少しずつ手応えを感じ始めています。私は痛みを取るためのさまざまな神経ブロック注射を得意としていますが、これを行うと早期に症状の改善をめざせるので、働き盛りの世代の方には特にニーズが高いことを感じています。大学でなければできないこともありますが、地域医療でしか実現できない診療もたくさんあります。これから地域の方々や地元の医師会に貢献して、自分の新たな役割を見つけていきたいと考えています。
関節と脊椎の両面に高度な専門性を持つ
リウマチ・関節と脊椎の両方に詳しい医師は少ないと聞きます。

私は最初はリウマチ・関節外科だけが専門だったんですよ。ところが35歳頃、勤務先の当直中に、脊椎損傷の患者さんが運ばれてきたことがあったのです。自分で診るのが難しかったため、結局は他の病院に送るしかありませんでした。それが非常に悔しくて。やっぱり脊椎を専門的に学びたいと思い、37歳の時に脊椎外科の先生に弟子入りし研鑽を積みました。興味を持ったら、徹底的に研究しないと気が済まない性格なのです。要するに、欲張りなんですね(笑)。とはいえ自分で診ることができる範囲が広がると、その分、多く信頼してもらえます。どんな症状の患者さんが来ても自分で対応できるというのは、地域医療に携わる上でも大切なことだと考えています。今持っている先進の知識が古くならないように、多くの勉強会に積極的に参加して情報をアップデートしていきたいですね。
大学病院時代の経験は現在も生かされていますか?
もちろんです。今までは送られてきた患者さんを受け入れる側でしたから、どのタイミングでどんな治療が必要なのかを現場の経験から見極められるのが強みです。例えば、椎間板ヘルニアや、腰椎脊柱管狭窄症でも、痛みだけならブロック注射で対処することができますが、麻痺が出ている場合は、すぐに手術することが重要になります。時期を逸してしまえば治るものも治らなくなってしまいますから、「今だ」というタイミングで手術できる病院へ患者さんを送れるかどうかが肝心なのです。手術が終わったら治療内容を踏まえて、ここでリハビリテーションをしていただくことも可能です。当院には広いリハビリ室があり、運動器のリハビリに特化したスタッフも常駐していますから、安心して治療後の回復のために通っていただけると思いますよ。
診療の際に心がけていることは何ですか?

まずは、わかりやすく説明をすることです。自分の体のことが理解できなければ不安になるでしょう? 患者さんにわかってもらえなければ医師の自己満足で終わってしまいますし、説明する努力が足りないのだと思います。私自身が納得するまでとことん考えるタイプなので、自分の中でじっくりと咀嚼し、易しい言葉に変換してお話しするようにしています。またどれだけ忙しくても、患者さんやそのご家族が困っているときには、他のことを差し置いてでもしっかりと時間をかけて向き合うことを心がけています。そうでなければ、次に会う時までずっと悩み続けることになってしまいますからね。それともう一つ大切なのは、患者さんの様子をしっかりと見ることです。診療室に歩いて入ってくるところから見るのが私の仕事。この数メートルに患者さんの普段の姿が現れていますし、実際に歩く姿を見ればどこが悪いのかすぐに見当がつくものなんですよ。
患者からの言葉が一番のやりがいに
どんなときにやりがいを感じますか?

やはり患者さんから「痛みが取れました」という言葉を聞けたときはうれしいものですね。痛みのない生活がどんなに幸せか、その喜びを味わっていただけることが、整形外科の医師としての一番のやりがいにつながります。痛みのレベルが10から4にまで減らせれば何とか仕事や生活ができるでしょうし、さらにそれをゼロに持っていければ何よりだと考えています。私は数多くの手術をして神経の状態を目の当たりにしてきましたから、どこに注射をすれば良いのか熟知しています。痛みで動けない状態で来院した人を、歩いて帰すのが私の務め。この分野に関しては、自分より腕のある人はいないというくらい自信を持っています。
先生は健康のためにどのようなことをされていますか?
大学時代はラグビーやフルマラソンをしていたので、今も体を動かすのが好きです。休みの日は、ジョギングをしたり、ハイキングに出かけていて、それが体力維持や健康につながっているのではないでしょうか。しっかりと体を動かした後は、帰る前にスーパー銭湯に寄って汗を流すのが至福のひとときです。忙しい毎日ではありますが、不思議とつらいと思ったことは一度もないんですよ。早起きするのが日課で、朝は7時にはクリニックに入って早出のスタッフを迎えています。そのほうがスタッフもやる気が出ると思いますし、仕事も早く終わりますからね(笑)。
最後に、今後の展望をお願いします。

父は地域に根差して約50年。それに比べると私はまだまだ若輩なので、これから地域の健康を守るために精一杯働いて恩返ししていきたいです。医師会を通じて周りの先生方のお役に立ちたいとも願っています。当院は予約はいりません。1人でも多くの人の痛みと不安を取って、ぐっすり眠れるようにして差し上げたいと思っています。また患者さんのご家族の負担が重くならないように、ヘルパーさんの利用を勧めるなど生活面のアドバイスをして、地域全体で患者さんを支えていきたいです。ご家族が1人で抱え込まずに、「うちのお母さん、ちょっと診て」と気軽に相談していただけるとうれしいです。