杉原 加寿子 院長、吉田 龍平 先生の独自取材記事
杉原小児科内科医院
(尼崎市/塚口駅)
最終更新日:2026/04/01
開業から34年、塚口で信頼を集める「杉原小児科内科医院」。杉原加寿子院長は2人の男児を育て上げた経験から、「子育て環境が大きく変化した今こそ、母親との関係づくりや共感に基づいた働きかけが大切」と、治療に加え子育て支援や母親たちのケアに注力。行政と連携し、支援が必要な人が世代の切れ目なくサポートを受けられる環境整備に努める。2026年4月には、志を同じくする吉田龍平先生が診療に加わる。包容力があり何でも相談したくなる杉原院長と、誰も取りこぼさない医療をめざす吉田先生に話を聞いた。
(取材日2026年1月9日)
子どもの力を信じ、関わり方に悩む親をサポート
塚口で小児科を開業された経緯を教えてください。

【杉原院長】もともと私の母が開業していた内科を引き継ぎ、小児科として開業しました。1992年12月のことです。地元での開業でしたし、長男が近くの幼稚園に通っていたこともあり、患者さんがご近所さんやママ友で。近所のお母さんたちと同じ目線で診療していましたね。小児科を選んだのは、心理や精神的な分野にも関心があり、幅広く診られると思ったから。兵庫医科大学に在籍中は、小児血液や小児がんなどの診療にも携わっていました。開業してからは、医師会活動をきっかけに障害福祉の分野に関心を持ち、近年は不登校や発達障害、母親のメンタルヘルスケアや子育て支援に力を入れてきました。私が話を聞くだけでなく、毎週月、水、土曜日には発達相談や心理相談の場を設けています。
母親へのサポートが大切だと考える背景は何でしょうか。
【杉原院長】人とのつながりが希薄になり、さまざまな情報があふれる現代の子育てはとても難しい。実際、発達支援や育児相談を求める人は増えていると感じます。何を信じればいいのかわからない状態の中で強い不安を抱えている親御さんに、「そのままでいいんだよ」と伝えたいんです。こういった活動は時間もかかり結果もすぐには出ませんが、母親と関係を築くことで子どもとも関わりやすくなると感じています。院内での親子の様子を見ていると、子どもとの距離感に課題を抱えている親御さんが多いんです。例えば、子どもを泣かせたくないと思うあまり、母親が子どもの先回りをしたり、子どもの言いなりになったり。でも、子どもが泣くのは悪いことではありません。むしろ泣くことで嫌な気持ちを抑えられたり、癒やされたりします。嫌なことも良いこともあるのが人生。嫌なことを知ってこそ、幸せを感じられるようになるのです。
発達相談や心理相談ではどのようなことをするのですか?

【杉原院長】子どもの心や発達に関するお悩みをカウンセリングします。必要に応じて、WISCなどの発達検査も受けられます。診察では、学校へのお子さんの状況の伝え方などをアドバイスしていますね。最近は児童デイサービスも増えているので、療育が必要な場合は居場所的なものが良いのか、トレーニング的なものが良いのかなど方向性もお伝えできればと思っています。人の発達には振り幅があるものです。壁にぶつかりながら、少しずつ軌道修正を繰り返して大人の階段を上がっていきます。子どもは育つ力を持っていますから、親がその力を信じ、焦らず待つことも大事だと思っています。
世代の切れ目なく医療支援を受けられる環境整備に尽力
2026年4月から吉田龍平先生が診療に加わるそうですね。

【杉原院長】今度、尼崎市に児童相談所ができるのですが、そこでの診療に興味を持ったことがきっかけで吉田先生と出会いました。児童相談所は、自分からクリニックに来られない子どもたちの命の窓口。そういった子どもたちを診療し、治療が必要であれば適切な医療機関を紹介するという仕事は、多機関・多職種連携による切れ目のない支援に医療面から貢献するということです。尼崎市の医師会長として、福祉分野の医療面でのサポートを小児にまで広げたいと思い続けてきましたから、この思いに賛同してくれる貴重な仲間に出会えてうれしく思っています。私が児童相談所に行っている日は吉田先生が当院で診療し、逆に吉田先生が児童相談所で診療している日は私がこちらで診療するという体制を取る予定です。
吉田先生のこれまでのご経歴を教えてください。

【吉田先生】兵庫県立尼崎総合医療センターで小児科についての研鑽を積み、小児一般診療、救急、新生児医療、アレルギー診療に携わってきました。特に、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎の管理に加え、専門病院での食物負荷試験の経験など、アレルギー診療については重点的に学んできましたね。 小児科について学んだ後は、関西医科大学およびその関連病院などで発達や心身症をサブスペシャリティーとして学び、現在も日々研鑽を重ねています。子育ての悩みをはじめ、発達の問題、不登校、起立性調節障害、摂食障害、その他の心理社会的問題について、患者さんやご家族とともに取り組んできました。もともと地域の子どもたちやそのご家族に身近に関われる医療を行いたいと考えていたところに、今回杉原院長からお声がけをいただき、ともに働く機会を得た次第です。
児童相談所での診療以外にも、地域の福祉分野での医療貢献に意欲的だと聞きました。
【杉原院長】福祉の分野は高齢者のイメージが強い一方、虐待を受けている子など、若い世代にも支援が必要な人が多いんです。そういった人たちに対しても、医療が関われないかと考えてきました。例えば、医療介護だけでなく福祉も連携して支援する活動について、「対象を高齢者だけでなく小児にまで広げたい」と行政とかけ合ったところ、世代を超えて対応できるよう尼崎市が認めてくれました。また、障害は大人になっても続きます。尼崎市では18歳までの子どもの発達に関し家庭虐待も含めた支援を行っていますが、1人で生活できない知的障害の子が大人になった後のことを考えると、時間的な流れと多機関・多職種との連携をつないだ切れ目のない支援が必須です。さまざまな医療機関が情報共有しながら、地域全体で「どこでも皆が見ててあげるよ」という環境を整える。それが私が実現したい社会です。
誰も取りこぼさない医療をめざし、思いに耳を傾ける
小児科の医師として大切にしていることは何ですか?

【杉原院長】女性の小児科医として、私に求められているのは共感だと思っています。専門的な知識や適切な治療ももちろん必要ですが、病気への不安や戸惑い、子育ての悩みや心細さなどに対して共感することを大切にしていますね。医療者はついつい指導したくなるのですが、支援するためにはその人の状況を知らなければなりません。ですから、まずは話を聞くことを大切にしています。聞くと言っても、人はそう簡単に自分のことを話さないもの。取りつく島もない子もいますが、否定しないことを意識して、「また来てもいいかな」と思えるような声かけを心がけています。また、デジタル社会だからこそ、体温を感じるような接触を大事にしたいと考えています。子どもはマスク越しの表情を読み取ることが難しいため、診療中もマスクは着用せず、リアルなコンタクトを意識していますね。
吉田先生はいかがですか?
【吉田先生】どの診察においても、まずは患者さんやご家族の思いを丁寧に伺うことを大切にしています。基本的にはガイドラインに沿った診療を行いますが、ご家庭の状況に応じて、検査や診察内容はできる限り柔軟に対応するよう心がけていますね。また、必要なお薬については理由をしっかりと説明し、服用の必要がないと判断した薬は無理に処方しないようにしています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

【吉田先生】この地域は阪神間でも利便性が高く活気があり、今後ますます発展していくと感じています。その中で取り残される子どもたちやご家族が出ないよう、地域に密着した医療に取り組んでいきたいですね。小児科の一般的な病気はもちろん、ちょっとした子育ての悩みから、発達や不登校に関することまで、どんなことでもお気軽にご相談ください。
【杉原院長】子育ての期間は、長いようで短いです。今、お母さんたちは体もつらいでしょうし、怒ってしまう時もあるかもしれません。でも怒ってもいいんです。感情が起伏するのは、健康な証拠。ため込んでばかりいては不健康になってしまいますから、子どもも大人もしっかり泣いて怒って、笑って楽しんでください。地域のお子さんが健やかに育ってくれればと思っています。悩んでいることがあれば、いつでも気軽に相談に来てくださいね。

