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小坂 文昭 院長の独自取材記事

こさか家庭医療クリニック

(神戸市北区/北鈴蘭台駅)

最終更新日:2021/12/28

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住宅街に溶け込むようにたたずむ「こさか家庭医療クリニック」は、神戸電鉄有馬線北鈴蘭台駅から徒歩3分の所にある。院長の小坂文昭先生は家庭医療が専門。その範囲は幅広い診療科に及び、プライマリケアの大切な役割の一つとして、疾患の重篤化防止に取り組んでいるのだそう。特徴は患者の継続的な健康増進に努め、患者やその家族を取り巻く環境からコミュニティ全体の健康意識に関わっていくことにある。さまざまな場面で「家庭医療」の浸透に努めてきた小坂院長。プライベートではトライアスロンの大会に毎年出場するなどバイタリティあふれる人物だ。かつて「医師が疲労困憊しては良質な医療を提供できない」と悟るに至った体験から、今後の医療における展望まで、小坂院長の抱く想いを語ってもらった。

(取材日2019年4月9日)

包括的な医療の提供で不要な受診の減少に貢献

なぜ医師をめざされたのですか?

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父が内科の医師で開業していましたので、母からずっと医師になってほしいと言われながら育ち、長兄は歯科医師、次兄が内科医師と医療の道に進んだことで他に選択肢が思い浮かびませんでした。兵庫医科大学を卒業後、研修先に希望したのは沖縄の南部徳洲会病院です。救急の患者さんをすべて受け入れる病院で、ハードに仕事をしてみたかったことと、離島での経験を積めることが選択理由だったのですが、単に、沖縄に行ってみたい気持ちもありました。ですがリゾート気分を味わうことは夢のまた夢です。1日中、救急車の音を聞いて朝から晩まで診療にあたり、深夜の呼び出しにも対応する日々でしたから、サイレンの幻聴まで聞こえるようになったほどです。

そうした中で、転機となるきっかけがあったのでしょうか?

過酷とも言える現場で疲弊しきっていたときに聴きに行った講演で「家庭医療」という分野があることを知ったのです。救急医療に携わり自分が感じるようになっていった問題点の「町の診療所の段階で、患者さん自身に体への認識を深めてもらうことはできないか」、その答えを家庭医療に見出だせると思ったのです。そしてもう1年間京都で救急に従事した後、千葉県にある亀田ファミリークリニック館山へ家庭医療の知識・技術を学びに行きました。病気にならないためのアプローチ、ご家族みんなを診療する家族単位でのサポートから地域に広げていき、地域社会全体での予防に取り組むという家庭医療の包括的な医療形態は、まさに自分が望んでいたものだと確信できました。3年間のトレーニング終了後、そこで定期的に診てきた喘息の子どもさんからお礼のお手紙をいただいたことは、ご褒美のようでうれしかったですね。

新たなスタートには、離島を選ばれたとか。

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研修医の頃、実際に離島へ赴き患者さんの現状や訴えを聞きながら、体全部を診れる医師が必要だと痛感していましたので、総合医療の基本領域を全般に診ていく家庭医療は、離島でお役に立てると思いました。西表島を選んだのは沖縄への恩返しの気持ちからです。島の人口は2000人ほどで、診療所は東と西に1つずつ、医師住宅はすぐ隣にあり、急性疾患の場合は夜も休日も診療にかかることになります。島民の皆さんはとても気さくで、私も地区の行事に参加するなど普段から溶け込み、家庭医療の医師として貴重な3年間を送らせていただきました。今度は青い海も少し堪能できましたしね(笑)。

心情をくみ取り、気持ちに添う診療を提供

診療方針について聞かせてください。

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まずは主訴をじっくり伺います。例えば、喉が痛いという来院に際して「咽頭炎なので薬出しときますね、お大事に」ではなくて、なぜ受診されたのか、その理由を引き出して対応を決めていくのが当院の診療スタイルです。飲み込むのがつらいとか、怖い病気かもと不安だったとか、また、家族がそうした重篤な病気を抱えていたから気になったなど、受診動機によって説明の仕方も対応も変わってきます。丁寧に問診を行うことは、その方にとって必要な診療であるために不可欠ですが、不要なことはしないという診療にもつながります。薬や検査に頼りすぎない最適な診療を提供するには、生活習慣や背景・環境・コミュニティも含めて、その患者さんを総体的に診ていくというスタンスが大切です。家庭医療は特に、ご家族・一世帯を診ていくことが多いですから、そのためのコミュニケーションスキルも欠かせません。

どう違ってくるのでしょう?

もともと私はどちらかというとオブラートに包まずにストレートに申し上げるタイプだったんです。ある特定の検査を望まれて来院された場合で言いますと、診療して不要とわかればすぐに「検査は必要ないですね」とキッパリ。だけど家庭医療を経験する中で、事実をそのまま伝えるだけでは患者さんの不安は解消されないと気づきました。今は、なぜこの検査をしてほしいと思われたのか、その会話の中で患者さんのことをできるだけ多く聞き取っていきます。そして、何を満たしたくて希望されたのかを理解した上で「実はその検査は必要ないんですが、他にこんな方法がありますよ」という伝え方や提案をすることができるようになりました。患者さんの気持ちに添う診療の積み重ねがあって、打ち解けて相談してくださるようになるのだと感じています。

訪問診療のニーズも高いようですね。

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寝たきりの方への診療がほとんどになりますので、ご家族の看病疲れへのフォローも重要です。いつでも呼んでくださいとお伝えするだけで安心されますし、ねぎらいの言葉をかけたり、定期的に伺ったりすることで気持ちがほぐれてこられます。それでも疲労がピークに達している場合にはショートステイやレスパイト入院を利用できるようコーディネートし、ケアマネジャーと相談するなど各関係機関との連携も密にしています。また、ご家庭内の人間関係や背景について知ることになるのですが、私からも知ろうとします。病気の具合や体調に限らず、ご家族皆さんのことを知ろうと耳を傾けていくうちに信頼関係が築かれ、共有すればするほど絆が生まれていく。医師と患者ご家族という関係性だけではない、人と人としてのつながりもまた大事なのです。

より良い医療形態へ、その一翼を担う

家庭医療の特徴の一つは予防ですね。

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当院でも重点を置いていますが、特に多い中高年が抱える慢性疾患一つとっても、適した食生活や運動療法は一人ひとり段階に応じて違ってきます。生活習慣の見直しには改善への意思が肝心ですので、まずは現状と懸念されるリスクを認識していただき、次に、放置したら心筋梗塞になる可能性が1.5倍近く上がってしまうなどの因果関係をご説明します。理想的な食生活や運動習慣が必要とわかっていてもできないという方には「小さなステップから始めましょう」「何からならできそうですか」と一緒に考えていきます。二人三脚で取り組むことで「野菜を食べてみます」とか「散歩します」と一歩踏み出してくださり、また、その成果を一緒に喜んでくれる存在と感じていただけると、モチベーションの維持にもつながります。

スタッフ間の連携もいいですね。

やっぱりスタッフみんなが生き生き仕事をしてくれるのはうれしいですし、ちゃんと言いたいことを言える職場であることが大事だと思います。朝礼では、1分ずつ好きなことを話してもらって、日頃からなんでも話せる環境づくりを心がけています。最近では携帯のSNS機能でクリニックの情報にアクセスし、みんなで情報をシェアできるシステムも取り入れました。幅広い患者層へ向けてスムーズに対応するためには情報共有が必須になると思いましたので。

今後の展望を聞かせてください。

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全国展開を考えています。というのも離島や過疎地で1人で頑張っているドクターの代診や休日の対応を担える診療所をつくっていきたいからです。1人で背負い込まなくても一緒に取り組める機関があれば、肉体的にも精神的にも限界を迎えることはないはずです。かつての研修医時代、同期のうち2人は緊張みなぎる現場で蓄積する疲労も重なり、うつ病を発症して病院を去りました。その影響で担当患者さんが増える中、無理を通していたら、突然ガクンと手足に力が入らなくなり、ギラン・バレー症候群と診断され1週間の入院を余儀なくされた経験が私にもあります。過酷な現場を知るからこそドクターの心身の健康を守りたいという気持ちが強いのです。そして、それは地域の患者さんの健康を支えることにつながると思いますので、同じ医師として助け合える環境を築いていきたい。それが日本の医療現場における環境改善の一助となれれば幸いです。

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